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ちょっと知的な雑学&トリビア

同調する

2002年4月11日 【コラム
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 胎児の超音波画像は、成長していると実感できて、親にとってありがたいものだ。ところがこれが胎児にとって大騒音だと、米メイヨー・クリニックの研究者が指摘している。人間の耳には聞こえないけれど、羊水を通じて胎児の耳を震わせる。100デシベルという地下鉄並みの騒音に匹敵するのだとか。もっとも、伝わる範囲はごく狭いから、ちょっと身をよじれば逃れられる。画像を見ているとき胎児が動くのは、案外「うるさいなあ」って逃げているのかもしれない。
 胎児と音といえば、母親のおなかに口を寄せ話しかけることもよくした。胎児がけり返してくる、聞こえているかどうか、偶然かもしれないけれど、その反応が嬉しくて、胎児と通じあった気持ちになる。そんなとき、人のコミュニケーションは言葉だけじゃない、さまざまな手段で情報を交換するのだと実感する。
 大人同士でも、言葉だけを交わすより、うなづいたり、身振りで反応したりした方が、会話がスムーズに流れる。「リズム同調」と呼ばれる現象だ。会話だけでなく、気の合う仲間と歩いていると歩調が自然に揃うように、リズム同調が見られる場面は多い。うなづいたりの反応を返す癒しロボットや、歩行音を利用した高齢者の歩行介助など応用も進んでいる。
 この春から子どもが保育園に通うことになった。送り迎えの道は、つくしをとったり、花を摘んだり、歩調は自然とゆっくりに。朝送るときにつぼみだった道端のたんぽぽが、帰るときには咲いていて、それが翌朝はまた小さくなっている。開いたり閉じたりを繰り返し、そうしてある朝、白い綿毛が黄色い花びらを押し上げようとし始めていることにふと気づく。
 たんぽぽがそんなふうに日々を送っているなんて、恥ずかしながらこの年になるまで知らなかった。きっとこれまで、大地や草花とは違うリズムで生きてしまっていたんだろう。地球にとってはさぞ騒音だったろうな。そんなことを思って、大切なことを教えてくれた小さな手を、ぎゅっと握り返す。今朝の、できごと。

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3 comments to...
“同調する”
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小橋昭彦

リズム同調については、「心が通う身体的コミュニケーションシステム E-COSMIC」「渡辺研究室」をご参照ください。また、「InterRobot」もどうぞ。超音波の胎児への影響を調べたのは、米メイヨークリニックの「Mostafa Fatemi」博士です。


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小橋昭彦

今日の没ネタ。ろうの女優「誰もいないときの『シーン』に音が無いと知ったときはびっくり(朝日2月10日)。カメレオンの故郷はマダガスカル島(朝日2月14日)? 室町時代以来500年の歴史のある「知らなんだ」の表現、発祥の関西でも死語(朝日2月5日)。103世紀に中国の後漢からもたらされたとみられる最古の重り発見(朝日1月23日)。


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安西洋之

胎児が100デシベルの騒音の中にさらされるとは知りませんでした。幼児は胎内にいた頃をよく懐かしく思うから、似た環境におくと落ち着くといいます。そこで子供に、この100デシベルという騒音を再現してみたいとも思うのですが、さてさて、超音波を胎児はどう騒音と感じるのだろう・・・?骨髄に反応させることができるのか?ちょっと調べてみる気になりました。

ところで、このアメリカの先生、経歴をみると面白いことやっていますね。




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 この世には動物と植物がいる。そう信じられていたのは、もう昔の話。ダーウィンの進化論を受けて生物の系統樹を構想したドイツの動物学者ヘッケルが先鞭をつけたのが植物・動物の二界説だけど、この二つの王国は1969年に崩壊する。 その年、生物を動物界、植物界、菌界、原生生物界、モネラ界の五つに分けたのがホイタッカー。以後、広く受け入れられるようになった。この五界説を補強したのがマーガリスで、『五つの王国』という書籍にまとめている。 マーガリスが提唱する共生説は、真核生物の起源が共生だったとする、素人が聞くとSFのような話なんだけど、有力な説なのだとか。つまり、モネラ界に属する、はっきりした核をもたない原核生物がまず地球に生まれ、これらが共生することで真核生物が誕生し原生生物界を形作る。原生生物界が多様化することで、菌界、植物界、動物界が生まれる。こうして現在の五つの王国が生まれたと説明する。 地球上にはさまざまな生命がいる。ひと昔前までは生物なんていないとされていた地下にも、生物がいることがいまでは常識。太陽光も酸素も無い、だからこれらの生物は硝酸や硫酸などを酸化に利用してエネルギーを得る。いわば硝酸呼吸や硫酸呼吸をしているわけ。地下数百メートルから見つかった細菌が、採取されたあと、2億5000万年の眠りから覚めたなんて報告もある。ほんの少し前までは誰も信じていなかった、マントル生物圏の可能性さえ、指摘され始めている。生物圏はいったいどこまで広がるのか。 マーガリスは、最近では古細菌を分離し、六つめの王国としている。またウィルスは、生物としての分類におさまらない、しかし生物的な存在として五界とは別に位置づけている。広大ないのちの王国のなかでは、ヒトなんて動物界脊索動物門、哺乳綱獣亜綱、さらには霊長目ヒト科云々に属する小さな存在だ。知識を求め、人を愛し、自らの存在意義を問う、小さな奇跡ではあるにしても。

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 誕生時3070グラムだった子どもが、生後3週間あまりではや4100グラムになっている。日々数百CCのミルクを飲んで、計算するとその1割くらいが体重としてついていることになる。 それで思い出したのが、英国にある動物学研究所のクリス・カルボーン博士らの研究だった。90キログラムの肉食哺乳類が生きていくためには、1万キログラムの獲物が生息していなくてはならないというのだ。体重140グラムのイタチの一種から310キロのホッキョクグマまで、どんな種でもおおむねこの法則があてはまるのだという。 10年ほど前にベストセラーになった東京工業大学の本川達雄教授の『ゾウの時間 ネズミの時間』にも、同種の問題が取り上げられていた。一匹の捕食動物につき約一〇〇匹の獲物が生息していなくてはならないとあり、捕食動物は自分の10分の1のサイズの獲物を狙うとあった。とすると、肉食獣1キロにつき獲物1000キロ。今回の結果とは1桁違うが、10年のあいだに研究が積み重ねられているということだろう。 実際、生物の大きさと生物学上の法則については、さまざまな研究が進められている。カルボーン博士の研究をとりあげたネイチャー誌のコラムでは、米アリゾナ大学のブライアン・アンキスト教授による植物の研究も紹介されている。米サイエンス誌でその論文を参照すると、被子植物かどうかを問わず、さまざまな植物で、葉や茎、根などの重量比が一定であるという。地上に見える組織の重量が増えれば、地下にある組織の重量も比例して増える。 自分はどれほどの人々に支えられているのか。どれほどの根をはっているのか。そんな問いかけをする。本川教授の著書には、どんな哺乳類も一生にうつ心拍は20億回、体重1キロあたりの消費エネルギーは15億ジュール、あるいは車輪のある動物がいない理由などユニークな話題が多い。数の神秘主義にくみするつもりはないけど、自然への入口として、数は楽しい。そう、こんど四葉のクローバー探しを子どもとしよう。

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