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耳かき文化

2002年3月03日 【コラム
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 海外旅行の必携品と言われながら意外と忘れがちなのが、耳かき。海外では見つけるのが大変だそうで、どうやら耳あかの違いが背景にあるらしい。つまり、日本人の耳あかは乾燥したタイプが多いけれど、欧米では湿ったタイプの人がほとんど。だから耳掃除は綿棒でやるのが普通で、耳かきを使うことがないのだと。
 さて、日本人はいつ頃から耳かきを利用していたのか。平凡社の大百科事典をひも解くと、古墳時代の装身具に耳かきの形をしたかんざしのようなものが見つかっているが、それが耳かきかどうかは定かでないとある。直接のルーツは、かんざしの先に耳かきをつけて特色を出したのがはじまりで、17世紀後半に高橋宗恒という人が発案したという。
 東京・巣鴨のとげぬき地蔵境内で手製の耳かきを販売している馬木健一さんによると、耳のかき方にもフォームがあるそうで、たいていの人はなっていない。中指で耳かきの背を押さえ、親指と人差し指をあわせた3本の指で構える。かき出すときは、薬指をそっとほほにあてて。これが正統派。
 ふと、チンパンジーの背中かきも文化的行動なのだという研究を思い出す。京大の西田利貞教授らが観察してわかったもので、チンパンジーには手で仲間の背中をかく「ソーシャル・スクラッチ」と呼ばれる行動があるのだけれど、これが地域によってかき方が違うのだ。ウガンダ・ゴゴでは指をそろえてつつくように動かす。タンザニア・マハレでは手の指を曲げて相手の背中を大きくかく。
 観光地に行けば、ボンテンの代わりにその土地なりの飾りをつけた耳かきが土産物屋の店先に並んでいるのを目にすることができる。わずか1グラムそこそこの棒にほどこされた工夫。幼い日、祖母のひざで甘えた記憶とともに、それぞれの地域の、小さな文化のことを思う。

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10 comments to...
“耳かき文化”
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小橋昭彦

なさそうで案外多い耳かきファンでした。「日本『耳かき』紀行」「土産物みみかき展示会」「耳かきじゃけん」「かーちゃんの耳かき」「みみかきがいっぱい」「耳かきコレクション」「耳かきマップ」などに、耳かきコレクターの成果が。「耳掻き博物館」の情報が充実。


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ぽち

耳かきするにも正統的なフォームがあるなんて!?
読みながら、愛用の耳かきを手に試してみました…
でも、「なっちゃいません」でした(^_^;?
むつかしいもんですね、耳かき一つを使いこなすのも♪


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nakano

いつも楽しく読ませていただいてます。
誕生日のメールも思いがけずに届くとうれしいもので
すね。
 あまり、コメントをつけることはないのですが、耳
あかは、遺伝です。日本人に多いかさかさタイプは、
劣性遺伝です(血液型のOと同じです)。これからも、
楽しい雑学お願いします。


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shimizu

耳垢、と聞いてはじめて書き込みさせていただきま
す。
欧米では、粘着質の耳垢が多いとは初めて知りまし
た!私はいわゆるあめ耳で、子ども2人にしっかり遺伝
しております。夫の家族はかさかさ耳垢なので、これ
が不思議なようです。
あめ耳は耳の中に虫が入らなくてよいと言う話も、あ
るそうですね。


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小橋昭彦

nakanoさん、ありがとうございます。そうですね、湿型が優性遺伝だそうですね。そんなわけで、shimizuさんのようなケースでは子どもは湿型になると。

平凡社の大百科では、湿型とわきがの出現頻度が並行しているともありました。そういえば欧米人は体臭が強い気がします。日本人と違って、体臭も魅力のひとつと考える文化ではあるので、それはむしろプラス要因ではあるのでしょうけれども。


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とぅる

耳かきにもフォームがあるんですか・・
僕は結構耳垢がたまるほうなんですが、とすると正しいフォームで耳かきをすると、さらにっ(^^;
恐ろしや恐ろしや・・・


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松本秀人

いわゆる“さじ型”ではなくて、先端がスプリング風にらせん状になっている耳かきってご存じですか。
耳に入れて、棒をくるくる回したりするとらせん部分に耳あかがついてくるものです。


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谷本真由美

耳書きネタということで始めて書き込みさせていただきます。

アメリカに住んでいる時に、彼氏(達)の耳かきをする機会が何度かありました。確かに、地域によって耳垢の違いがありました。

ロシア・西ヨーロッパ・南米には「耳掻きをしてもらう」習慣がないらしく、耳掻きしてあげようとしたら大変怖がられました。ロシア人からは”You are mad!”といわれてしまった・・・。


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yuki

こんにちは。私は温型なのですが、耳掻きが大好きです。だんなはかさかさタイプで、両方のタイプを楽しんでいます。
その昔『耳かきの好きな王様』という絵本がありました。
国民の耳かきもやり尽くし、自分の耳もやりすぎて耳に穴があいてしまって、国中大変なことになり、最後は反省して優しい王様になる、という物語でした。
我々も、やりすぎはやはり良くないようで、耳の中が乾燥してかゆくなったり、炎症を起こしたりするそうです。私はその一歩手前まで行きました。今は、週に2,3回程度で留めています。(^^)


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みき

友人が耳かきで鼓膜をやぶってから、恐くなって、綿
棒を使ってます。アメリカ人のだんなは、粘着質で赤
に近いオレンジ色。恐ろしくて、耳の中を覗けませ
ん。




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Your Comment:

 そう、チンパンジーはヒトの隣人である。共通祖先からゴリラが、チンパンジーが、そしてボノボが分岐していったのは、およそ1000万年前から500万年前にかけてのこと。チンパンジーとヒトの遺伝的相違が小さいことは知られていたが、ヒトとチンパンジーの比較ゲノム地図を作成した理化学研究所・ゲノム科学総合研究センターの榊佳之ディレクターらによれば、その差は約1.23%と、予想よりさらに小さい見込みという。 チンパンジーより、少し多く道具が使えて、たくさんの言葉を知っているぼくたち。でも、言語中枢ですら、ずっと古くから進化の歴史を歩んできた。エモリー大学の研究者らが発表したところによると、言語能力にとって重要な役割を持つブロードマンの脳地図でいう44野の非対称性が、ヒトでも、チンパンジーでも、ボノボでもゴリラでもあるという。右より左の半球の44野の方が大きいのだ。チンパンジーらは結果として言葉こそしゃべれないものの、ぼくたちと同じ可能性を秘めていたということか。 同じ狭鼻猿類とはいえ、ニホンザルは、ヒトやチンパンジーらが含まれるヒト上科と違うオナガザル上科に属している。ヒトから少し遠い彼らでさえ、知的作業をするときは、ヒトと同じような脳の部位が活性化しているともいう。サルとヒトの、類似を知ることの楽しさ。 田舎に移り住んで、夜はよく空を見上げる。冬は一等星が多く、澄んだ空があざやか。天頂から少し西に傾いてふたご座、月明かりに淡くなった天頂のかに座に、東からしし座が追う。子どもの頃、星座線をたどりつつ、知的生命はいるかと空想したものだった。人類は宇宙でひとりぼっちなのかと。 今なら、あの日の自分に教えることができる。この地上に、ぼくたちにとても近い隣人がいることを。

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 世間。もともと仏教用語で、命あるものが生きている世界を指すという。うつり変わりゆくことを意味する「世」と、空間を意味する「間」。万葉の時代からある言葉で、客観的な対象を示すというより、自らと世の中の関係性を含んだ言葉だ。 政治家が辞職するときの理由はたいてい「世間にご迷惑」をかけたからだし、親が子をしかるときには「世間体が悪い」からということが多い。もっとも、近年では世間の役割が薄れてきて、変わって強調されるようになったのが「個人」の責任と「社会」的な判断基準だ。 世間についての研究を進めている共立女子大学の阿部謹也大学長によると、個人という言葉が日本で生まれたのは1884(明治17)年のことだという。それ以前に個人はなく、人は世間の中で生きる存在ととらえられ、独立した個としては意識されていなかった。米国に比べて日本で個人による訴訟が少ないのは、紛争解決の手段として、社会的な判断基準より、世間が機能してきたことと無関係ではないだろう。 出世という言葉も、もとは「出世間」の略。俗世間の煩悩を解脱し、悟りをひらくことだ。現代の経済的社会においては、人は出世すると責任が重くなり、それにつぶされたり、ときに権威をふりかざし煩悩の権化と化すこともある。本来の出世のココロを忘れないでいられればいいのだけれど。 田舎に暮らすようになって思うのは、ここでは今も世間が機能しているということ。自分たちの集落は自分たちで守るという意識も色濃い。いや、意識というより伝統といったほうがいいか、ときにわずらわしいこともあるにせよ、世間に身を任せられる安心感は格別。子どもだって世間に守られて育つ。個人とその自由に立脚する社会もいいけれど、合理性を理由に薄れつつある世間を惜しみもしている。

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