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ニワトリはなんと鳴く

2002年2月25日 【コラム

 神田雑学大学の得猪外明(とくいそとあき)理事が、各国でニワトリの鳴き声をどう表現するか調べた結果を新聞に紹介している。コケコッコーと思っていた鶏の鳴き声が英語ではcock a doodle dooと教えられて驚いた経験は多くの人が持っているのではないか。
 ニュージーランドのマオリ族ではkokekkoと日本語に近い。フランス語はcoquericoで、ドイツ語はkikeriki。韓国ではkockyo kuukuu kookooだそうだが、タイではake-e-ake-ake。アルメニア語はtsoogh ruooghooとなって、アフリカのハウザ族はzakara yai kuuka。
 擬声語や擬態語をどう表現するかはまさに文化の違い。ウシのような鳴き声なら、英語でmoo、中国語でもmu muと比較的近く聞こえるようだが、ニワトリは極端だ。ロバとイヌとネコ、ニワトリからなるグリム童話の「ブレーメンの音楽隊」も、国によって違う音楽を奏でているだろうと考えるのは楽しい。
 鳴き声の表現は言語だけじゃなく時代によっても違う。ホトトギスの名は、もともとその鳴き声をもとにつけられたものだけれど、江戸時代ごろから、「本尊かけたか」などと聞かれるようになり、後期には「天辺かけたか」と表現されるようになる。最近では「特許許可局」なんて表現も知られている。
 野鳥を観察するときには「聞きなし」ということも行われていて、ウグイスの「法、法華経」は有名。ほかにもホオジロの「一筆啓上仕り候」、フクロウの「五郎助奉公、ボロ着て奉公」、メジロの「長兵衛、忠兵衛、長忠兵衛」なども知られている。センダイムシクイの「焼酎一杯グイー」、ツバメの「土食って虫食ってしぶーい」なんて愛嬌がある。動物たちと会話しようとした先人の知恵といえようか。
 そういえば長男が3歳になった頃、朝の寝床でニワトリの声を聞いて、「どうして、りょったろークンって呼んでるの」と言った。耳を澄ますと、コッケコーコゥのリズムは、確かに彼の名を呼んでいるように聞こえるのだった。あれから1年。彼は今でも鳥と会話できるだろうか。


6 comments to...
“ニワトリはなんと鳴く”
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小橋昭彦

得猪外明さんの調査については、「コケコッ考」でご参照ください。鳴き声をもとに国際理解を広げるといった試みも行われているようで、「小学校における国際理解教育プロジェクト」に実践例が紹介されています。聞きなしについては、「音と文化」「さえずりと聞きなし」などをご参照ください。


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小橋昭彦

朝鮮半島の新羅の名を冠した神社、日本に多数(日経12月18日)。アルツハイマー病に、話かけながらの音楽療法効果(朝日1月17日)。年越しのお札69兆円、積み上げると1214キロメートル(朝日12月29日)。サッカー選手には深視力も重要(朝日1月28日)。電気を使わない放射冷却冷蔵庫(朝日1月7日)。


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光橋

たまたま2日前に私の2才の娘がカラスの鳴き声を聞いて「あーあー」とマネをしていました。ニワトリほど複雑ではないですが、世界のカラスの鳴き声も興味があります。
あまり日本と変らないのでしょうか?
ちなみに私自身小学生の時にカラスに向かって「カーカー」と話しかけたら、向こうも「カーカカー」と返事してくれ、2・3回会話のようなやり取りができて嬉しかった記憶が有ります。


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ky

その民族の言葉:発音に「よるのでは?


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kayoko

職場の近くで飼われているにわとり(だと思う)は、「おかーさーん」って鳴いていた。

最初は、びっくりしてどうして子供が呼んでいるのに相手してあげないんだろうって思っていましたが。
正体がわかって安心しました。


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Hana

Re:世界のカラスの鳴き声も興味があります。
あまり日本と変らないのでしょうか?

この前(2003.11月)来ていたスイス人の知人による
と、スイス(ローザンヌ、フランス語圏)と東京
(代々木公園)のカラスでは全然違うそうです。どう
違うのかは残念ながらマネが難しかったらしく不明。
同じカラスなのになぜこんなに鳴き声が違うんだと驚
いていましたので、興味を持って検索していたところ
です。




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 沖縄の古酒(クース)は、いくら飲んでも減らない魔法の甕(かめ)に入っている。魔法の名を、仕次(しつぎ)という。もっとも古い親酒から始まって、年代が少しずつ古い甕を順番に準備。親酒を汲み出したら、二番手に古い甕から酒を補う。二番手には三番手から、と順に注いでいく。これによって、何年たっても蒸発することなく、たとえば数百年という古酒ができる。 このところ沖縄が脚光をあびていることもあり、泡盛が人気を集めている。米こうじを発酵させた蒸留酒だが、白こうじ菌を利用する焼酎と違って、黒こうじ菌を利用する。1671年に琉球から将軍家への献上品目録にはじめて「泡盛」の名が登場する。名前の由来は、かつて粟でもつくられていたからとする説、ひしゃくから容器に入れるときの泡立ち具合で度数を知る「アームイ(泡盛る)」が転じたとする説などあって、定かでない。 まちおこしを共にする友人宅で、夜半まで仲間たちと飲みながら語り合った。友人のおくさんが沖縄出身で、地元からという泡盛をロックで傾ける。沖縄では食事を済ませてから飲む。食べながら飲むこちらの風習と違っていて驚いた、なんて話。 泡盛は、琉球が南方と盛んに交易していた14世紀の半ば頃、シャム(現在のタイ国)のラオロンという酒に習って造られはじめたという。蒸留酒のルーツという意味では、紀元前300年ごろ古代ギリシアで作られた蒸留機アランビックにさかのぼることができる。これが蒸留技術とともに東西に広まる。東で泡盛、西ではウィスキー。ウィスキーが飲まれ始めたのは16世紀のことだから、泡盛は蒸留酒では大先輩だ。 洋の東西、過去から現在まで、人は蒸留酒を手にどんなことを語り合ってきたのだろう。自分たちがいま語り合っていることは、どんな未来につながっていくだろう。そんなことを思いつつ、杯を重ねた夜だった。

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 そう、チンパンジーはヒトの隣人である。共通祖先からゴリラが、チンパンジーが、そしてボノボが分岐していったのは、およそ1000万年前から500万年前にかけてのこと。チンパンジーとヒトの遺伝的相違が小さいことは知られていたが、ヒトとチンパンジーの比較ゲノム地図を作成した理化学研究所・ゲノム科学総合研究センターの榊佳之ディレクターらによれば、その差は約1.23%と、予想よりさらに小さい見込みという。 チンパンジーより、少し多く道具が使えて、たくさんの言葉を知っているぼくたち。でも、言語中枢ですら、ずっと古くから進化の歴史を歩んできた。エモリー大学の研究者らが発表したところによると、言語能力にとって重要な役割を持つブロードマンの脳地図でいう44野の非対称性が、ヒトでも、チンパンジーでも、ボノボでもゴリラでもあるという。右より左の半球の44野の方が大きいのだ。チンパンジーらは結果として言葉こそしゃべれないものの、ぼくたちと同じ可能性を秘めていたということか。 同じ狭鼻猿類とはいえ、ニホンザルは、ヒトやチンパンジーらが含まれるヒト上科と違うオナガザル上科に属している。ヒトから少し遠い彼らでさえ、知的作業をするときは、ヒトと同じような脳の部位が活性化しているともいう。サルとヒトの、類似を知ることの楽しさ。 田舎に移り住んで、夜はよく空を見上げる。冬は一等星が多く、澄んだ空があざやか。天頂から少し西に傾いてふたご座、月明かりに淡くなった天頂のかに座に、東からしし座が追う。子どもの頃、星座線をたどりつつ、知的生命はいるかと空想したものだった。人類は宇宙でひとりぼっちなのかと。 今なら、あの日の自分に教えることができる。この地上に、ぼくたちにとても近い隣人がいることを。

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