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ちょっと知的な雑学&トリビア

空間と時間

2001年10月01日 【コラム
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 空間と時間はどちらが先に生まれるのだろう。現在の標準として考えられているビッグバン宇宙論では、開びゃくの大爆発とともに空間も時間も物質も、すべてが同時に生まれたことになっているから、この問いにあまり意味はない。
 でも、ぼくたちの脳の中では、少々事情が違うようだ。産業技術総合研究所の北澤茂氏らが行った実験がある。
 この実験では、両手を前に出し、それぞれの手に短い間隔をあけて刺激を与えている。まず左手を刺激し、そして右手を刺激する。そして、どちらの手が先に刺激されたかを答えるわけだ。この順序をゆっくりとやれば、もちろんどちらの手が先に刺激されたかを間違うことはない。いや、たとえ刺激が0.1秒感覚など短くてもだ。
 では、右手と左手を交差させるとどうだろう。結果はびっくり、刺激の時間差が1秒以上あるときは間違いがないのだけれど、0.3秒以内の場合には、先に右手が刺激されたと理解してしまうのだ。手を交差させることで、脳の中で時間が逆転している。
 この結果から、ぼくたちの脳には、入力信号の時間順序そのものを判断するセンターはなく、まず入力信号の空間配置を行い、その後で時間の処理がはじまるものと考えられる。左手からの刺激を感じ左手はいま右側にあるから自分の右の方に刺激のもとがあると判断し、これに時間順序を与える前に右手に刺激を感じるものだから、云々。
 ちょっと頭がこんがらがってきちゃったね。ともあれ、ぼくたちは手からだけじゃなく視覚や聴覚もふくめいろいろな信号を受けているわけだから、それらを総合してまず空間を把握し、続いて時間処理をするというのは合理的ではあるわけで。
 時間って、あんがい揺れるものなんだ。

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7 comments to...
“空間と時間”
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小橋昭彦

北澤茂氏の研究発表については「手の交差で時間が逆転」をご参照ください。体性感覚野については「体性感覚誘発脳磁」がわかりやすいかな。といいつつ、じつは今回ぼく自身研究内容を把握するのに時間がかかってしまいました。誤解してないとは思うのですが。詳しい方、いらしたらご指摘ください。


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ジュモン

 ・自分の手。
 ・物の位置関係。

“右”と“左”
どっちがそれなのか、理解するのに時間がかかったこ
どもの頃を思い出した。

お茶碗を持つ手が左。
右はお箸を持っている手だよ。

何度も教えられながら、“茶碗”を、“箸”を持つ手
を確認するのに、混乱していた幼い自分を、今でも憶
えているのは、自分ばかりではないと思う。


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バナナ

> は手からだけじゃなく視覚や聴覚もふくめいろいろな信号を受けて
> いるわけだから、それらを総合してまず空間を把握し、続いて時間
> 処理をするというのは合理的ではあるわけで。

にあるように、今回の実験では目を開けた状態で望んだわけだよね。
つまりこの結果は、人間の情報収集能力の大半が、■・・・ちがう、
四角・・・ちがう、「視覚(これ!)に依存している」ということを
示すことにもなるわけ。

じゃあさて、同じ実験を、目を閉じて行ったらどうだろう。
耳をふさいでおこなったらどうだろう。
(それでも左右間違えるようなら、もっと他の原因がありそうだね)

つきつめて調べたら、日常ボクらが、どこまでの能力を使って
生活しているのかわかりそうで面白そう。
もしくは、どこかの能力(今回は視覚)に頼り切っちゃって、
(実は見えるのに、)見えなくなっちゃってる情報とか出てきたりして。

「コスモ」とか。(おいおい)


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sin

こんばんは。ココへの書き込みは初めてですが。
>総合してまず空間を把握し、続いて時間処理をする
これで合っていると思います。
刺激が与えられる感覚が短くなると空間認識(手の交差)の前に
答えを求められるので、脳が手が交差していると事を認識(計算)
する前に右側に刺激を受けた場合そのまま右と答えて間違うと…。

視覚や聴覚がふさがれても間違うでしょう。自分の体は触覚や
筋肉の動きで認識できますが、交差していることを認識する必要が
あることに変わりはないですからね。


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まさお

はじめまして
“時間と空間”ねえ
面白いけど難しい難しいけど面白い
問題ですよね

本題とはずれますが
以前テレビで鏡を使って右と左を逆転させる
という実験をやっていました
あれも面白かったです


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小橋昭彦

sinさん、ありがとうございます。すっきりしました。


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ウチダ

これを読んでいて小中ぐらいのときに人差し指と中指を交差させて目を閉じて1本か2本のペンで相手に擦ってもらって何本か当てるというのをしたのを思い出しました。




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 10月の頭に運動会があるらしく、隣の保育園からは毎日応援演奏の練習。窓から聞こえる保育園児の太鼓に合わせて、子どもにタンバリンをたたかせてみる。タン、タン、タタタ。なかなか上手なものだ。 父親ときたらリズム感がからっきしない。カラオケは嫌いなのだけど、音痴もさることながら歌い始めなどのリズムがとれないことが最たる理由。外国語だって、リズム感さえあればもう少しましにしゃべれたろうに。子どもがその轍を踏むことはないか。 オーケストラの指揮者ともなればリズム感はさすがに鋭いらしい。岩城宏之さんが、音楽学生のころ仲間と飲みに行って時間あて遊びをした話を書いていた。誰かの号令でスタートし、それぞれ1分と思うところで手をあげる。誤差0.5秒もないそうだ。これをリズム感というかどうかは微妙だけど、体内に確かなメトロノームがあるには違いない。 そういえばぼくたちにはクロックとよばれる遺伝子がある。これに異常があるマウスでは活動時間帯になっても体温上昇がゆるやかだといい、朝が苦手な夜型人間の場合も、この遺伝子が関係しているのではないかと推測されているのだとか。 リズム感覚に遺伝子が関係しているかどうかは知らない。少なくともわが家では遺伝はしていないということか。いや、ピアノをしていた母親の遺伝子を受け継いだということかも知れぬ。 ともあれ、音楽的センスのないことに気づいた父親は、せめて文章だけでも上達したいと、毎日こうして練習している。きみはどんな方向に行くのだろうな。タン、タン。

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 来年Uターンする予定とあって、月1回の割合で打ち合わせなどのために田舎に帰っている。田舎には常時接続環境が無いので、そんなときはメールマガジンはお休み。休みが多くってごめんなさい。 常時接続環境が無いといっても、契約していないからではなく、サービスがないのが現状。フレッツ云々はもちろん、数万円の常時接続サービスはおろか、数十万の専用線さえひけない。大阪から車で2時間かからない土地でこのありさま。都市部では数千円でブロードバンドが使えるのに、なんて落差だろう。21世紀も、都市集中の世の中になるのだろうか。 そんなことは信じたくない。21世紀こそは、個人個人が、それぞれの価値観で生活環境を選ぶことができて、それを支えるしくみが整っている、多様性のある世の中になってほしいと思っている。ぼく自身の会社の本拠は東京にあるし、都市もいいんだけど、目下の課題は、都市再生以前に、田舎創生なのである。 ぼくたちには男と女がいる。純粋に遺伝子を残すためなら、両性はいらない。バクテリアのように、無性生殖で、分裂によって増えるのがもっとも効率的。相手を探す時間や相性を調べるリスクも必要ないし。 ではなぜ、性はあるのか。有性生殖はどこが便利なのか。ひとつは、父と母から染色体を1セットずつ引き継ぎ、2セットの染色体をもっておけること。一方に損傷を受けても、いわばスペアがあることになる。 そしてもうひとつ、おそらくより大きな理由が、多様性だ。有性生殖は効率が悪い。でも、効率が悪いゆえに、親の細胞とはちょっと違った細胞が生まれ、遺伝的な多様性が生まれる。多様性があるおかげで、環境の変化にも適応し生きのびてきたわけだ。 遺伝子レベルの話と実生活をいっしょにするのはあまりよくないけど、それでもぼくはこの一年あまり、ずっと「多様性」ということを考えつづけている。

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