中央アジアに、汗血馬と呼ばれる名馬が知られている。1日に千里を走り、疾駆すると血のような汗を流すという。天馬ともたたえられ、前漢の武帝は汗血馬を得るために二度も大宛征伐を敢行している。
この血の汗、畜産学の見方では多乳頭糸状虫という寄生虫の一種が原因ともされる。いずれにせよフィクションではなく、騎馬民族文化研究家の清水隼人さんが中央アジアで、史書にあるとおり前肩付近から血の汗を流す様子を確認している。
血の汗といえばカバも流すといわれているが、こちらは血ではなく、保湿の役割をもつピンク色の体液だとか。おっとこれは余談。
十字架にかかる前夜、イエス・キリストがゲツセマネで流したとされる血の汗。あるいはもっと身近なところでは、星飛雄馬が巨人の星をつかむために流したと歌われていたっけ。
汗血馬は詩や像となって、その躍動する姿を現代に伝えている。ゲツセマネの園にはオリーブの老木がいまも緑の葉を茂らせ、巡礼者の憩いの場になっている。あるいはスポーツ中につい口ずさんでしまい、そんな自分に苦笑いをしたりもする、巨人の星の主題歌。
血の汗はいまも、いろいろな場面でぼくたちにロマンをもたらし、勇気を与え、やさしさを教えてくれる。血の汗が事実かどうかは、じつは大きな問題ではない気もする。この心の動きは、真実なのだから。
汗血馬について。「汗血馬」に詳しく紹介されています。