小橋 昭彦 2000年12月29日

 庶民の家に台所が登場するのはそう昔の話ではない。せいぜい江戸時代後期以降のこと。それ以前、火を通す料理は囲炉裏でしていたものだし、かまどは土間、流しもまた離れたところ。調理は切盤(きりばん)と呼ばれる大きなまな板を持ち運び、適当な場所で行っていたのだとか。
 ダイドコとカッテがある民家においては、ダイドコは土間のこと、カッテは囲炉裏のある板間を意味することが多い。特に関東ではダイドコロは料理とは無関係。カッテの方が厨房を意味する。
 台所という言葉は鎌倉時代ごろから使われていたそうだが、もともとは食器を載せるために利用された足つきの台をしまっておく台盤所から派生した言葉ともいう。一方の勝手は食糧を意味するカテ(糧)からきているともいい、そうすると語源的にもやはりカッテの方がいまのキッチンに近いか。
 台所が大きく変化したのはここ100年のこと(日経11月26日)。ことに大正期に作業の合理化が唱えられ、コンロやナガシ、調理台などが一体化されていった。いわゆる「文化流し」、現在のシステムキッチンへの一歩だ。
 数年前、わが家の台所も改築し、対面式のキッチンのあるフローリングの部屋に変わった。親とテーブルを囲み、おまえが子どものとき土間に降りてかまどの灰を食べて困ったよ、なんて言われつつ、さて、自分の子どもはこのダイニングキッチンでどんな思い出を持つのかと、遠い気持ちになる。

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1 thought on “台所

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