小橋 昭彦 2001年4月9日

 字形からいえば、二枚扉の上に横木を掛け渡したのが門。一枚扉の「戸」と区別されてきたわけだが、屋外に独立して建つのを門、建物の出入り口を戸、という使い分けもあって、現代の日本における用法はそれを伝えている。
 門はもちろん西洋にもあって、ふたつの塔の間に扉口を設ける古代エジプトの塔門や、同様の基本形式をとる古代メソポタミアや古代ギリシアの「都市門」などが知られている。古代ローマで好んでつくられた凱旋門などは別にして、門の多くは防備を目的としたものだった。大砲の登場で門による防御が意味をなさなくなって以降、宮殿や邸宅には、風圧の影響を受けにくい鉄格子扉が多数見られるようになる。
 日本に見られる門は、中国からの流れを受け継ぐもの。屏中門、唐 (から) 門、上土門、四脚門、長屋門など、形式によってさまざまな名前がついている。ただ門としての機能を追及するだけではなく、門を持つ建物を表象しようとしたためでもあっただろう。
 イタリア・ウフィッツィ美術館「都市門」の着工が正式に決まった(朝日3月13日)。設計者は磯崎新氏。このところ海外での作品には「ゲート」をモチーフにしたものが続く。中心喪失の都市が無限に広がる今、都市を象徴するゲートが必要だと氏は語る。
 外と内を隔てる門じゃなく、自分を表象するものとしての門。インターネットでつながれた世界は境界を無くしていくけれど、それは自分を無くすということではない。どこを見回しても同じような平板な風景が続くなんて、殺伐としている。現代の都市門は、そんなことを問いかけてもいる。

1 thought on “

  1. 今日の没ネタ。ふたたび重宝されるちゃぶ台(朝日3月13日)。胃荒らさずにきく「スーパーアスピリン」セレコキシブ(朝日3月14日)。

Leave a comment.

Your email address will not be published. Required fields are marked*