音楽心理学の入門書にあたっていて、おもしろい実験にであった。ヘッドフォンをかけて、右と左の耳から違った音列を聞いてもらう。たとえば右から「シ・レ・ラ・ファ」、左から「ド・シ・ミ・ソ」。すると被験者は、右から「シ・シ・ラ・ファ」左から「ド・レ・ミ・ファ」と聞こえたように感じる。周波数が近い音がまとまるのだ。
心理学に「群化」とよばれる現象がある。これはその典型。群化というのは、星空に星座を描くように、個別の要素がまとまって感じとれる現象だ。前述の実験でおもしろいのは、聞こえる方向という空間的な近さよりも周波数の近さの方がまとまりを決めるルールとして優先され、さらにそれを「右から聞こえた」と空間的な近接性に置きかえているところだろう。
群化の法則というのがあって、どのような場合にまとまりとして感じるのか研究がなされている。まず第一に近くにあるもの。それから似ているもの。線でくくられるなど閉じられた中にあるものもそうだ。また、線が重なったときはよい形をつくっている方につながっていると感じたり、連続性が感じられる方につながりを感じとる。
文字が成り立つのもこの力ゆえ。ある文字をじっと見ていると、それが正しくその文字であったか不安になることがある。それはこの群化が薄れるからだ。ギャル文字に慣れない身には、「<〃ωヵゝ」を「ぐんか」と読めないけれど、ゲシュタルト崩壊しちゃっているというか、近接性が薄れて群化が難しい。
情報処理においては、知識をひとまとめの単位にして覚えやすくする「チャンク化」が知られている。また、KJ法のように発想法においてもグルーピングしたり異種を組み合わせることは重要だ。今の世では要素分解する思考をよく使うけれど、たまには群化に目をやって、グルーピングの基準を意識して変えてみたい。図と地をいれかえることで向き合った人の顔に見えるルビンの壷のごとく、世の中が違って見える、きっと。
オンラインテキスト「感覚の生理と心理【第6回】」の中でゲシュタルト心理学、群化の解説があるので参考にしてください。
今回、以前のコラム「音楽と人類 [05.07.07]」からの延長で『音は心の中で音楽になる』を読んでいて、その延長で群化、ゲシュタルト心理学へとまとめていきました。チャンク化については「短期記憶 [04.05.27]」を参考にどうぞ。
えーと、ギャル文字、ぼくには読みづらいです(笑)。慣れない身には、「ギャル文字」あたりを片手に解読するしかない。