土星の衛星タイタンから送られてきた画像に、なぜか懐かしさを感じていた。海のような暗い部分と、渓谷のような筋。零下200度の世界では、海があるとしても水ではなくメタンの海だろう。それでも違った形の生命が存在しないかと、夢を抱く。その夢を、土星探査機カッシーニが中継して、地球に送ってくれる。光速で80分。ブロードバンドとはいかない、ISDN並と考えておけばいいようだ。
幸い土星からの画像はくっきりしていたけれど、仮にこれが何光年も離れた地球外文明との交信なら、宇宙線や散乱の悪影響を受ける。エネルギー効率を考えるなら、瓶に手紙を入れて届けた方がいいらしい。この試算結果が掲載されている科学誌の表紙には、金盤の写真が載っている。外惑星探査機ボイジャーに積まれた、地球人からのメッセージを刻んだ円盤だ。今頃は太陽系の端を星の海原に向っている。原始的なようだけれど、その方法が案外正しかったのだと。
ちなみに、電波による地球外文明との交信を科学的に呼びかけたのは、物理学者ココーニとモリソンによる1959年の論文だ。それ以前は、たとえばエジソンの弟子、というよりエジソンに抗して交流を主張しライバルとなったニコラ・テスラなどが火星からの信号受信を模索してもいたが、まじめにはとりあげられなかった。
タイタンに降下する探査機が拾った音声を聞く。大気を切るような音に耳を澄ましつつ、それが異星をわたる風で、地表の草原をなびかせていたならと想像する。たとえそこに文明がなくとも、その光景にどんなに勇気付けられるだろう。いつかそんな光景に出会うことを、瓶に入れた手紙が地球の浜辺に流れ着くことを、夢見ている。
地球外文明との交信について、ココーニらの論文は、こんな言葉で結ばれている。成功の確率を見積もることは難しい、しかし探さなければそれはゼロなのだ、と。ゼロではない、夢を追うとはそういうことなんだな。
探査機カッシーニとホイヘンスについては「ESA – Cassini-Huygens」「NASA – Cassini-Huygens」からどうぞ。日本語では「カッシーニ探査機による土星探査」がおすすめ。
地球外生命の存在確率については、以前のコラム「どこかで、だれかが [2002.06.27]」を参照ください。ボトルに入れた手紙の方が交信の効率がよい、という論文は、「Inscribed matter as an energy-efficient means of communication with an extraterrestrial civilization(Nature 431 47 – 49 (02 September 2004))」がそれで、「CHRISTOPHER ROSE博士」のサイトからダウンロードできます。
ココーニらの論文は、「SEARCHING FOR INTERSTELLAR COMMUNICATIONS」でどうぞ。
今回も結構、熱つ目のメッセージですね、私は最近「シュレジンガーの猫のパラドックス」を題材に映画「世界の中心」の死んだアキをオーストラリアの大地を渡る赤い大地の風に弔った物語を映画評として書きました。「何か感じることが共通なイメージ」でした。
面白いですね。 昔は 真面目に相手にされなかった地球外文明との交信のために 莫大な予算と労力をつぎ込んで ボイジャーを飛ばしたわけですか。
ビンにメッセージを入れて宇宙に流したからには 「お返事」を期待しているのでしょうか。 人類には準備は出来ているのでしょうか。
!) 「いつか あるかも知れない でも きっと無いと思う」なんて 日本の自衛官みたいなコメントしか用意出来ない。
!) 白ヤギさん 黒ヤギさん状態で「お返事」に気付いていない。
のどちらか なんて言うのではチト情けない。
でも 何らかの「お返事」に右往左往の大興奮も 味わって見たいです。ちょっと ムシが良すぎるかな?