グローバルディミング、日本語で地球暗黒化と名づけられている。スイスで気候を研究する大村纂(あつむ)教授が1980年代に報告した当時は、誰も気にとめなかった。その後観測結果が積み重ねられ、本当らしいとなった。ここ数十年、地表に届く太陽光は減っている。
どのくらい減っているかは地域によっても違う。グローバルディミングの名付け親コーエンとスタンヒルによると、1958年から1992年にかけて多いところでは11%に達しているというし、コロンビア大学のリーパートは10年あたり1.3%ずつ減少しているとしている。いずれにせよかなりの速度。原因は、雲や大気汚染、エアロゾルと呼ばれる浮遊物質。ぼくたちは半世紀かけて地球に遮光カーテンをかけてきたわけだ。
遮光カーテンは、昼間の太陽を暗くする一方で、夜間は星々を隠している。加えて、地上からはネオンサインや各家の灯り、街頭などの光が漏れて大気のカーテンに反射する。いわゆる光害と呼ばれる現象で、これが星々をいっそう見えづらくする。環境省が全国に呼びかけて行っているスターウォッチング・ネットワークの結果でも、この20年来見える星の数は減少傾向だ。
夜間の明かりを映す宇宙からの眼がある。DMSPと呼ばれる気象衛星だ。アジア経済危機のあとで発展途上地域からの光が弱まったといった報告もあるが、総じて世界各地で夜間に明るい地域が広がっている。日本では夏至の日に電灯を消す「100万人のキャンドルナイト」というイベントが行われ、その結果をこの衛星画像で確認してもいる。
停電となった台風の夜。ろうそくを灯し、食事を続ける。わあ、暗い。はしゃぐ子どもの瞳に炎がゆらめいて、いっそう輝いて見える。こんな田舎でも、今年から防犯灯が数本追加設置され、センサー照明をつける家も増えた。この時代、太陽光以上に失われつつあるのは、ぼくたちの心のあかりなのだろう。そんなことを感じている。
スイス国立工科大「大村纂教授のページ」。グローバルディミングについては、「Shabtai Cohen」らによる「Global dimming」などをどうぞ。英語ですが、特集記事「The Darkening Earth」「Goodbye sunshine」「Earth takes a dark slide」などが詳しいです。また「Beate G. Liepert」らの「Could Global Warming Mean Less Sunshine and Less Rainfall?」といったニュースリリースどうぞ。
「スターウォッチング・ネットワーク」から最近のウォッチングの結果をどうぞ。「光害対策ガイドライン」も参考にしてください。また「ダークスカイ協会」というのもあります。で、イベント「1000000人のキャンドルナイト」に参加するもよし。
「DMSP衛星」を利用したデータは、「DMSP衛星によるNighttime Lights of the Worldデータ」から詳細情報が手に入りますが、さまざまに利用されています。「The night sky in the World」プロジェクトもいいですし、リアルタイムに見ることのできる「Earth View」なんてのもあるし、その応用「The Night Sky Live」も。個別調査例としては「Lighting Up the Ecosphere」「夜の地球表面に描かれたアジア地域の経済活動」「夜間光衛星画像データDMSPによるアジアの地域別経済活動強度推定」などなどなど。
台風で被害に遭われた方、お見舞い申し上げます。
私の住んでいる所も、高潮と停電に見舞われました。
停電の夜、暗さに慣れると部屋の中より外の方が明るい事に驚きました。雲をかぶった月以外灯りなど無いのに。
星空が見えなくなったのは、私達が空を曇らせただけではなくて、自然のままのあり方を見る心と目まで曇らせているのかもしれませんね。
いつもながらに、ユニークな話に感心しています。今回のディミングには、驚きました。温暖化現象と太陽光の遮蔽が組み合わされると、一体どのような異常な気象が起こるのか、本当に心配ですね。
ありがとうございます。一度、お会いしたいと思っています。よろしく。
GLOBAL DIMMINGという言葉をはじめて知りました。
ところで、地球の温暖化などと言えるうちはまだいいほうで、炭酸ガス濃度が4%を超えると人間は生存できなくなるだろう、と聞いたことがあります。(実験はできませんから分かりませんが)しかもそれは2”300年後ということでした。
この頃になると、太陽光は26”39%少なくなるということになります。
本当だとすれば恐ろしいことです。
いつも楽しみにしています。台風に震え、地震におびえ、温暖化や今回の地球暗黒化の現象に、ヒトという種が地球に与えたダメージの大きさを思うと、心がい痛みます。といいながら、PCやクーラーを離せない生活をしている自分のあり方を問わなければなりませんね。
私もGLOBAL DIMMINGという言葉を初めて聞きました。
これまでは、オゾン層の破壊により、紫外線(太陽光の1つ)は増えているとばかり思っていました。遮光カーテンは、紫外線は通してしまうのでしょうか・・・。有害な紫外線は増え、有益なその他の光を含む太陽光全体が減っているとしたら・・・子供の将来を真面目に案じなくてはいけませんね。
はい、GLOBAL DIMMINGという言葉を日本で最初期に使ったコラムになったかも(笑。
それが地球温暖化にもたらす影響は、複雑すぎてまだわかっていません。また、農業にもたらす影響もいろいろで、生育が悪くなる植物もあれば、そうでないものもあります。今後の研究が待たれるところだとか。
心の目まで曇るっていう表現はすてきですね。まさに、そうならないよう、心を磨かなくては。
樋口さま、こんど上京する際には連絡させていただきます。(すみません、私信モード)
私の兄、纂は「あつむ」と読みます。
大村さん、失礼しました。紹介している英文サイトでもAtsumuとなっているのに、うっかりでした。修正いたしました。
偶然ですが、うちの父の名も「あつむ」です(文字は違います)。