小橋 昭彦 2004年7月15日

 子どもに絵本を読み聞かせていると、空から落ちてきたバッタが4枚の羽を広げて飛ぶシーンがあって、そうか昆虫も4枚なのだとあらためて気づく。今、鳥の羽は2枚が主流だけれど、初期の鳥はどうやら4枚の羽を利用していたのではないかと、考えられるようになってきた。ちょうどそのことに思いをめぐらしていたところだったのだ。
 最古の鳥の化石として知られるものに1877年に発見されたアーケオプテリクスがある。後足には羽と思われるあとが残っていて、その位置づけについて論争が続いていた。近年になって足に羽がある恐竜の化石が中国で見つかったことで、初期の鳥は4枚羽でグライダーのように滑空したのではないかという説が有力になった。
 鳥が生まれた頃、地上には恐竜が闊歩していた。鳥類を恐竜の一グループと考える学者も増えている。柔らかく化石に残りにくいだけで、実は白亜紀後期の肉食恐竜には羽があったのではないかというわけだ。ぼくが子どもの頃、ティラノサウルスはゴジラのように直立型で想像図が描かれていた。今では脚の付け根付近を支店に、ヤジロベエのように、頭部と尻尾でバランスをとる図が描かれる。あと何年かすれば、鮮やかな羽毛で覆われた想像図が一般的になるかもしれない。
 初期の鳥類がいた当時、空には翼竜が羽を広げていた。同じ空を飛ぶけれど、こちらが鳥の祖先というわけではない。彼らは大きな翼でハングライダーのように飛んだことだろう。飛ぶのに適した脳と内耳を持ち、優雅に飛び、狩りをしていたものと考えられている。空を支配していたのは彼らだった。
 やがて翼竜は滅亡し、空は鳥のものになる。そんな中、草むらからはときに昆虫が空に向かい、やがて哺乳類の中にコウモリなど、グライダーのように飛ぶものが現れる。大空を舞台にした、生命の移り変わり。それを思うとき、ぼくの心も、ふわっと空に昇る。

4 thoughts on “羽のある恐竜

  1. 子どもと読んでいた絵本というのは『とべバッタ』です。鳥の生態については『鳥の生命の不思議』を参考にしました。最古の鳥の化石は「Archaeopteryx」がそれ。4つ羽については「Four-winged birds may have been first fliers」「Four-winged dinosaur makes feathers fly」という記事もご参照ください。翼竜が優雅に飛んでいたというのは、「Specialized brain helped ancient reptiles fly and hunt」にあるように「Lawrence M. Witmer」博士の推測。かつてのコラム、「羽はなぜ [2003.07.31]」「そらへ向かう [2003.02.06]」もご参考にどうぞ。

  2. 恐竜の話は幾つになっても心躍りますね。年々リアルになって行くのも興味を失わせない理由の一つだと思います。
    ところで、「コウモリなど、グライダーのように飛ぶ」という表現がありましたが、私の印象としてはコウモリの飛び方はグライダーとは全く異なり、非常にアグレッシブというかアクロバティックなものだと思います。鳥の中でもツバメなどスピード感はあっても非常に滑らかな飛び方をするのと比べ、コウモリの場合は飛跡が上下左右に小刻みに変わり人間が眼で追うのに苦労する程です。スピードが無い分、空中で蚊を捕らえたりするために、そのような飛び方になったのかと思います。

  3. トドさん、ありがとうございます。確かに印象的にはおっしゃるとおりですね。わかりにくかったですが、文中で「グライダーのように」という表現は、自分で羽ばたくことなく空気をとらえて飛ぶ、という意味で用いています。

    けっこう、このグライダーのようにか、自分で羽ばたくか、というのは重要な違いで、最初の鳥がグライダーのようであったか羽ばたいたか、も論争の焦点なんです。で、4枚羽の登場で、グライダー派が優位になりつつある、といった感じの動きとご理解ください。

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