小橋 昭彦 2001年2月19日

 光速は一定だ、という言葉が一人歩きしちゃっているから勘違いしてしまうのだけれど、光の速度が一定だというのは真空中の話。物質の中を通るときは変化する。水に入るとき屈折するのはそのためだ。
 光の速度は真空中ではおよそ秒速30万キロ。物質の中では、その物質を構成する原子と結びつき、「ポラリトン」という状態になる。電子系と光子系がエネルギー交換しているような、光とも物質ともつかない状態。こうして光の速度は遅くなる。
 この光速を一瞬「止めた」のが、米ハーバード大の2つの研究チーム(日経1月22日)。ひとつのチームはセ氏零下273.15度近くに冷やしたナトリウムガスを、もうひとつのチームはセ氏70度から90度のルビジウムガスを使った。このガスにスイッチの役目をするレーザー光をあてたあと、光信号を入れる。光信号がガスの中に入りきった瞬間にスイッチ用レーザーを切ると、光信号はガスの中にとどまり、ふたたびレーザーをあてると元通りの信号となって出てきたという。ただし、この間わずか500から1000マイクロ秒。まさにほんの一瞬のできごとだ。
 ボブ・ショウに「去りにし日々の光」という短編がある。光が通過するのに長時間を要する「スローガラス」をめぐる物語。何年も前に亡くなった人が写りこんだガラスを自宅にはめて思い出とともに生きる人など、心を揺さぶられる話だ。
 光は、過ぎてゆくからこそ美しい。

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2 thoughts on “光を止める

  1. リーン・ハウ教授、ロナルド・ウォルズワースという研究に携わったふたりのサイトを探しましたが、ちょっと探しきれず。ポラリトンについては「共振器ポラリトンからのTHz帯電磁波発生の研究」「光物性研究室」などを参考に。その他、検索の途中で出会った、相対論関連等のおもしろページ。「宇宙論を256倍楽しむページ」「役に立たない屑知識」「科学について-相対性理論と疑似科学」「相対性理論」。

  2. 今日の没ネタ。質屋の起源は「大宝令」に求められる(日経1月15日)。日本人ゴルファー第1号、水谷叔彦(日経1月24日)。仮説の検証が困難になり、科学は難しい時代に(日経1月15日)。

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