帰省途中に寄ったハイウェイ・オアシス。4歳の長男の注文は「カレーライス」。ウィンドウの食品サンプルを見て悩むこともない。そういえば食品サンプルで選ぶのは、日本生まれの風習という。これは笑い話だが、米国のレストランで食品サンプルを置いたところ、ウィンドウを見て、よくできているわりに安いなどと来客が品定めしている。サンプルそのものを販売していると勘違いしたわけだ。
模型にほんものの味を想像する文化は、盆栽に大自然を見、石庭に宇宙を見る日本人ならではか。研究家の野瀬泰申氏によると、食品サンプルには3つのルーツが考えられるという。これを事業化し、現在に続くグループ企業に育てたのが岩崎龍三で、昭和7年のこと。その時点で彼がヒントにした模型があったのだが、それはおそらく、大正6年に料理模型を製作していたと記録に残る西尾惣次郎によるものと推測されている。ふだん彼が作っていたのは、島津製作所から発注された理科教育用模型など。ノーベル賞を生んだ企業は、食品サンプルの源流でもあった。
食品サンプルの隆盛は、百貨店食堂の登場と重なる。多量の注文をさばくため、先にオーダーを決めてもらう必要があった。東京の白木屋に食品サンプルを納入して、関東でのルーツになったのが須藤勉だ。
初期の食品サンプルはひとつの型から大量に作った。ラーメンといえば全国どこでも同じラーメン。その後ご当地料理が広がり、それぞれに工夫をこらした少量生産に変わる。そしてふたたび大量に同一のものを作る時代に。外食チェーンの興隆だ。
ちなみに米国人が気にしたサンプルの価格だが、汚れたら取り替えるため、貸付方式が一般的という。岩崎氏が決めた価格が、月額にして本物の料理の10倍。毎日本物を作って飾るより20食分安くなるという論理だ。なかなかよく考えられた理屈で、さすがにひとつの事業を起こした人は視点が鋭いと感慨にふけったことだった。
野瀬泰申氏の研究については、書籍『眼で食べる日本人』をご参照ください。岩崎グループは「いわさき」を、また「食品サンプル創作館」もご参考に。「西尾製作所」のように、今も同じく営業しているってすごいですね。
毎々お世話様です。
食品サンプルとはチョット違うのですが、「寿司の飴」も良くできていて感心します。
「寿司なの?飴なの?どっちなの?」と言われそうですが、寿司の形をした棒キャンディーです。子供連れでお寿司屋さん(もちろん廻る方)へいくとくれることがあります。特に感心するのがエビ(茹でたやつ)! オレンジ色と白の縞模様が妙にリアルなんです。
あれも、食品サンプル屋さんが作ったのかな?
いつも楽しく読ませて頂いております。
最近のカフェでは、サンプルではなく本物を置いている
ところもありますよね?
我が家の娘たちはとりあえず触って見て、
「本物だ!」
とか
「偽者だ!」
といって楽しんでいます。
こんにちは。
お子様の成長記録と共に、毎回楽しく読ませて頂いております。
食品サンプルは子供の頃から大好きで、未だに触ってニヤつき夫に離される私にとって、今回は違う側面から見る機会を与えて頂き、とても新鮮な気分になりました。早速本も購入し、カラーの頁に日々見入っております。
今春から北海道暮らしなのですが、いつか創作館に行って体験をするのが目下の目標です。それまではサンプル並の料理腕を何とかしようと思います。
新しい視野を、ありがとうございました。
こんにちは。
此処で祖父の名前を見つけ懐かしく思い書き込んでおります。 サンプルに興味を持っていただき有難う御座います。勉の孫より