次男が生まれ、4歳になったばかりの長男が顔を覗き込んで「おしめですかあ」と尋ねたり、それなりにお兄ちゃんぶっている。ふだんから高い子どもの声が、いっそう高くなるのがおかしい。母親の真似をしているのか、自然と口にするものなのか。
赤ちゃんに対するこうした語りかけを育児語と呼ぶ。名づけたのはアメリカのチャールズ・ファーガソン。母親の言葉だから、ジャパニーズならぬマザーリーズ。マンマ、でちゅか、といった幼児語とは区別され、声の調子が高くなること、抑揚が誇張されることに特徴がある。
母親が赤ちゃんに語りかけるとき、1回目より2回目、2回目より3回目と声の周波数は高くなる。聴覚の感度は、地声より高い帯域がよく聞こえるものなので、注意をひきつけようと高くなるのは理にかなっている。京都大学霊長類研究所の正高信男助教授によると、手話においても育児語的な現象があるそうで、耳の聞こえない乳幼児に対し、親は大きな身振りで手話を行う。赤ちゃんの側も、育児語や育児語風の手話を好む。
ちなみにサルの場合も、他のサルに声をかけるとき、1回目より2回目の方が周波数が高くなる傾向があるのだが、それ以上の回数については記録がない。そこまでしないのだ。3回、4回と繰り返して赤ちゃんと喜びを共有しようとするのは、人ならばこそ。
女子大生に幼児へ絵本を読んでもらった調査によると、育児語を使う人と使わない人がいた。育児語が自然に出るのは、年の近いきょうだいがいる人に多いという。このことから、きょうだいが少なくなった現代、育児語が身につかないまま母親になり、子がなつかないとストレスを感じる人が増えないか心配されてもいる。一方で、高齢者を介護するときまで育児語を使ってしまい、自尊心を傷つけているケースも指摘される。
父が手術をした。病室を出て12時間、無事すませて戻ってきた姿に、どんな調子で語りかけるか、頭をめぐらした昨夜だった。
正高信男助教授の研究については「発達研究の紹介」をご覧ください。「言語習得における身体性とモジュール性」「子どもは育児語が好き」「喃語(なんご)」などの情報も詳しいです。
うちの4歳の長男も甲高い声で0歳の妹に
「笑ったの0♪」といっているので
ホントだなあとメルマガを読んで笑ってしまいました。
お父様、手術なされたとのこと、お大事にしてください。
兄弟や親類の赤ちゃんと接する機会の少ない昨今、
赤ちゃんとふれあう経験がないまま母になり、とまどう女性が増えているようですね。
今後地域社会の中心となるべき教育の場でそのような経験ができるようにしていきたいですね。
お父様、手術なされたとのこと、お大事にしてください。
私のとこは、高齢者の介護が始まったところです。
89才の母親 耳が遠く、近頃理解力も劣り、
ついつい大きな声で(怒った声)で私(59才の息子)が話すもので、母親の自尊心を傷つけているなと反省しています。どのような喋り方が、お互い いいのか 悩んでいます。
私も常々病院等で耳にする、高齢者に対する「幼児言葉」が気になって、というより不快に思っていました。私の曾祖母は、幼児言葉は断固受け付けない人でした。
関係は無いと思いますが、私たち四人姉妹(年は近いです)は、お互いの姪たちが赤ん坊の頃から赤ちゃん言葉、幼児言葉は滅多に使ったことがありません。もともと皆声が低めだからかもしれませんが。
そのかわり、飼っている動物たちが赤ちゃんの頃は、思いっきり赤ちゃん言葉で皆メロメロでした。
単なる個人の興味の問題?
お父様、お大事になさってください。
お父様の手術から育児語を想起なさったとのこと。
・・・私の父は病気で7年前に亡くなりました。
赤ちゃんは日々成長しているが、父は昨日まで
できていたことが今日一つできなくなり・・・
感情も一つ一つ少なくなっていき・・・なんて
ことを、毎日病室で考えていました。
>どんな調子で語りかけるか、頭をめぐらした昨夜だっ た。
実際は、どんなでした?今春、義母が手術室から出て
きたときは、気持ちが高揚してしまい、声にさえなり
ませんでした。育児語で自尊心を傷つけるというのは
他人による介護では?親子・親族であれば、語らずとも
通じるものが多いと考えます。(私は、毎日、父の手を
1時間じっと握り、父は両手を合わせてあいさつした
ものでした)
第二子のお子さんご誕生、おめでとうございます。
いつも小橋さんの「子供に向ける」視点の温かさに
なごんでいます。
でも水を差すようで本当に恐縮ですが…我が家で
は、昨年隣家に越してきた小さいお子さん達の出す、絶え間ない金属的な高音に、高齢の両親が体調を壊し、何よりも可愛がっていた愛犬が約3か月後に
突然、若死にしました。人間はともかく、ことに小さい動物は、大きな音が長期間続くと、(人間以上に)多大なストレスを感じるようです。
相手が「子供さん」なので心境は今もって複雑です。
こんなコメントをお送りすると、日本のような社会では、きっと非難轟々だと思いますが…「子供」という
存在を、決して「可愛い」だけではない視点から
見つめざるを得ない人間もいることをご承知下さい。
いつも共感しつつ読ませて頂いています。
幼児語、とはまた違う育児語というのがあるんだとは驚きました。
しかし相手の反応を見ながらしゃべるという大前提がないと、
たぶん育児をしても育児語を話すようにはならないのでしょうね。
電車の中で一方的に子供を叱っているママや
子供に話し掛けないママに出会うと、
コミュニケーションってなんだろう・・・と考えてしまいます。
携帯メールがコミュニケーションになっていればいいけれど、
あれがモノローグのやり取りだったとしたら、
日本語の将来は危ないかもしれません。
シーズーさん、ありがとうございます。幸い現在のわが家は、田舎家で隣家とも離れていますが、うちの妹の子どもをしばらく預かった経験などから、子どもは怪獣でもあることはおっしゃるとおりかと思います。
ちなみに、近隣含め、地域で育てるというところが田舎のいいところです。たとえば小学校から子どもが帰ってきているのを見ると、近所みんな、お帰り!って言っています。