保育園から帰ってくるなり、祖母のところにかけていって、ダイコンとハクサイの種をください、とお願いしている。園内菜園で育てるのだろう。この夏もトマトやキュウリなど、自分たちで収穫した野菜が給食の食卓をにぎわしていたと聞く。小さな手で摘みとられる野菜を想像し、それらの来歴について思いをはせる。
ニンジンやナス、キャベツなどはアジアやヨーロッパでも昔から知られていたが、トマトやジャガイモ、カボチャやトウモロコシは南北のアメリカ大陸が原産だから、コロンブス以前は知られていなかったことになる。トウモロコシやジャガイモが人類を飢餓から救うのにどれほど役立ったかを考えると、新大陸「発見」は食卓にとっても大きなできごとだった。
ジャガイモは地下茎を食べることから、はじめは奇異な目で見られていた。もっぱら花や枝葉の観賞用だったのは有名な話。17世紀ごろから食用に栽培されるようになり、やせた土地でもできることから飛躍的に拡大する。そうなると、戦争にあたっては敵国のジャガイモ畑を荒らすことが重要戦略。1778年のプロイセンとオーストリアの戦争は「ジャガイモ戦争」と呼ばれもしているほどだ。
いまでこそぼくたちは野菜をはじめとした植物の恵みをあたりまえのように消費しているけれど、本来は、食べるものはもちろん、着るものから日用品まで植物に大きく依存していたわけで、むしろ植物に生かされてきたといえる。「だいこんとはくさいのたね」を育てつつ、子どもは、店頭に並ぶ消費するものとしての野菜ではなく、そんな、生きている仲間としての野菜について知ることになるのだろう。そう思いつつ、ふと、そもそもダイコンやハクサイの種ってどんなだったけと振り返る。あわてて保育園かばんを開けて確かめた今朝だった。
『世界を変えた野菜読本』が参考になりました。ジャガイモについては「ポテトランドめむろ」などをどうぞ。
北海道芽室町のじゃがいも畑は圧巻ですよ。
うす紫色のじゃがいもの花は本当にきれいです。
北海道で暮らすようになって、「野菜って、人の手で作られているんだな」と実感するようになりました。
そして、あのちいさな一つ一つに、栄養以外のいろいろな恵みが含まれていることを感じるようになりました。
天と地と人の恵みの詰まった野菜たちを、これからも感謝していただきます。