小橋 昭彦 2001年1月24日

『晩鐘』と並ぶミレーの代表作といっていいだろうか。刈り入れのあと、畑に落ちた麦の穂を拾う3人の農婦を描いた、1857年の作品。サロンに出品したこの作品に先立つ1857年、ミレーは同じモチーフを扱った『落ち穂拾い、夏』を描いている。
 山梨県立美術館にあるこの作品は、画面が縦長で、麦の積み藁(わら)が農婦たちのすぐ後ろにある。完成版では積み藁を遠ざけ、画面を横に使い大地の広さを強調することで農婦たちの孤独を際立たせている。画家の試行錯誤を見るようだ。
 当時、農業といえばフランス人の6割が従事する最大の産業(朝日12月17日)。落ち穂拾いは、農村共同体が弱者の保護と扶養のために許していた慣行で、数日間、通常の労働では生計を支えられない者に耕地を開放し、老人や寡婦などに落ち穂を拾うことを許していたもの。ミレーの描いた3人の農婦も、生計の助けにと許可を得て落ち穂を拾っているわけだ。
 実家の主な職業は米作り。おいしいと評判で注文も多いのだけれど、減反政策のため多く作ることはできず、すべての注文に応えられない。稲刈りをしつつ、もったいないと落ち穂を拾う。そんなとき、ふとこの絵を思い出し、豊かな時代になったな、と感じつつも、ふと複雑な思いが心をよぎるのでした。

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