小橋 昭彦 2002年4月29日

 春の1日、浜辺で潮干狩りを楽しむ連休の一こまが新聞に掲載されていて、この風景はいつから続いてきたのだろうと考える。青柳の泥にしだるる汐干かな、句にしたのは松尾芭蕉。品川あたりは潮干狩りの名所として知られており、浮世絵としても残っている。
 百科事典にあたってみると、潮干狩りはレジャーとしてではなく、信仰行事として始まったと記されていた。旧暦3月3日、家族揃って重箱を手に海浜に出かけ、みんなで飲食をする。ひなを水に流す風習があるけれど、自らも潮水でけがれを払い、魚介類をとって遊ぶというわけ。節句の日に浜辺で遊ぶ行事は、磯遊びとして今も行われているところがあるという。
 この季節、磯遊びと同じように山に行って共同飲食する山遊びも行われており、こちらは花見のルーツと考えられている。潮干狩りと花見。浜へ、山へ、同じような信仰を背景にしているということになる。
 野遊びといえばピクニックが思い出されるが、こちらはイギリスが起源で、1800年ごろに始まっている。産業革命で都市化が進むなか、家族揃って自然のなかに出かける1日が求められるようになったということであったか。
 ふるさとの町でもっとも高い山の頂上までは1時間弱。ちょうどいい山歩きとなり、都市部からやってくる人たちも多い。ぼく自身、その頂上に何度立ったろう。さわやかな風を受け、町を見おろすときの達成感。蛇行する川沿いの竹やぶや、小さく走る車。鳥の目を得て、どきどきした子ども時代を思い出す。
 先日、久しぶりに友人たちとこの山に登った。約束をして頂上から家に携帯で連絡。庭に出てきた子どもらを見おろし、豆粒のような姿をみやりつつ「見えるよ」と会話する。新しい機器が生んだ新しい山登りの楽しみ。と同時に、電話を切ったあと、鳥の目を得たときまで地上とつながらなくてもいいのになと、自分たちを笑い合ったりもしたのだった。

2 thoughts on “潮干狩り

  1. 今日の没ネタ。ペリーの土産はバラの香水(朝日3月16日)。最古の玉ちょう、西安で発見(朝日3月10日)。太陽系をつくった材料にすくなくとも3つの超新星由来のもの(朝日3月9日)。低タールたばこでも銘柄によっては表示の7倍(朝日3月10日)。6万年前のヒグマ、7000年前のペンギンの骨からDNA抽出(朝日3月22日)。兵庫県の銭湯、水着で混浴なども可(神戸3月8日)。筋肉が動くメカニズム、日本の「あいまい説」に脚光(朝日3月7日)。近親交配重ね弱る但馬牛(朝日3月21日)。

  2. 沖縄では、旧暦の3月3日に浜下り(はまおり)という行事が行われるのだそうです。家族で浜に出て潮干狩りとかするらしいですよ。また清明祭という先祖供養の行事もするとか(詳しくはわからないのですが)…生活の中にいまでも行事として残っているのでしょうね。

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