仕事後のビールはうまい。ストレスがたまると苦みに対して鈍感になるそうで、それが苦いビールでも仕事後ならおいしく感じられる理由のひとつ。
苦いといえばコーヒーなどのカフェインも代表格。植物が苦い物質を生産しているのは、動物などの外敵に食べられないため。本来なら苦いから食べないとなるところを、苦みをたのしみつつ口にするわけだから、人間とは不思議なものだ。
塩味、甘み、酸味、苦みとうまみという5つの基本味の中では、ほかに酸味も本来は避けるべき味。食べものが腐敗していることを示す信号だからだ。大腸菌でさえ、酸っぱい物質からは逃げるという。それをもまた人間はたのしむ。
魚のなかには、もとの姿を知るとよく口にする気になったと思うものも少なくないが、基本味についても、人間はこれまでどんよくに「おいしい」と感じる幅を広げてきたようだ。味を数値化する味覚センサを開発している九州大学の都甲潔教授によれば、甘みに関しても、進化した生物ほどさまざまな種類を甘いと感じるようになるという。ミツバチは砂糖などの糖類は摂取するものの人口甘味料はとらない。バクテリアなどの単細胞生物になると、砂糖なども摂取しなくなる。
言葉遊びにはなるけれど、人類は舌を鍛えたおかげで、人生のあじわいもわかるようになったのかと想像したり。舌の鍛錬といえば、都甲教授が味覚の不思議を伝える食べものを紹介している。きゅうりにはちみつ、プリンにしょうゆ。どんな味になるか。正解は前者がメロン、後者はウニ。
さっそく台所に立ってためしてみる。結果? まあみなさんもやってください。ともあれ、昼下がりのキッチンの片隅で、人生は本質を見誤らないように賞味しなければと思ったことだった。
都甲教授の味覚センサについては、「味覚センサ」「味覚センサとは」が参考になります。
コーヒーなどの嗜好品のCMに「違いの分かる」というフレーズが使われますが、違いが分かるようになるには3世代かかるという説があります。
せっせとグルメに励んでも自分の代では効果が現われず、孫の代になってやっと違いが分かるように「なるかも知れない」というくらい難しい能力らしいです。
もう今から励んでもひ孫に残せるかどうか?
3世代。身体的な部分は、1世代でずいぶん変化しましたよね、脚の長さとか。舌に関してはそうでもないということでしょうか。確かに、コーヒーの違いがわかるほどになるには、ちょっと世代がかかりそう。
田舎料理で育ったので、高級料理店に入っても味がよくわからないぼくなのでした。