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血の汗

2001年5月21日 【コラム
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 中央アジアに、汗血馬と呼ばれる名馬が知られている。1日に千里を走り、疾駆すると血のような汗を流すという。天馬ともたたえられ、前漢の武帝は汗血馬を得るために二度も大宛征伐を敢行している。
 この血の汗、畜産学の見方では多乳頭糸状虫という寄生虫の一種が原因ともされる。いずれにせよフィクションではなく、騎馬民族文化研究家の清水隼人さんが中央アジアで、史書にあるとおり前肩付近から血の汗を流す様子を確認している。
 血の汗といえばカバも流すといわれているが、こちらは血ではなく、保湿の役割をもつピンク色の体液だとか。おっとこれは余談。
 十字架にかかる前夜、イエス・キリストがゲツセマネで流したとされる血の汗。あるいはもっと身近なところでは、星飛雄馬が巨人の星をつかむために流したと歌われていたっけ。
 汗血馬は詩や像となって、その躍動する姿を現代に伝えている。ゲツセマネの園にはオリーブの老木がいまも緑の葉を茂らせ、巡礼者の憩いの場になっている。あるいはスポーツ中につい口ずさんでしまい、そんな自分に苦笑いをしたりもする、巨人の星の主題歌。
 血の汗はいまも、いろいろな場面でぼくたちにロマンをもたらし、勇気を与え、やさしさを教えてくれる。血の汗が事実かどうかは、じつは大きな問題ではない気もする。この心の動きは、真実なのだから。

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One comment to...
“血の汗”
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小橋昭彦

汗血馬について。「汗血馬」に詳しく紹介されています。




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 目には青葉山ほととぎす初鰹と山口素堂。これは江戸っ子の初物好きから生まれた習慣で、脂ものっていないし、この時期のカツオがひいでておいしいかというと異論もあろう。ともあれ、初がつおのシーズンだ。 カツオはマグロの近縁。英語ではskipjack tunaと呼ばれたりもしてマグロと近くとらえられているけれど、日本語でマグロとカツオを混同することはない。マグロは刺身などとして食した一方、カツオは干魚とするのが常識、調理方法がまったく違ったためだ。堅い魚、カタウオからカツオと呼ばれるようになったゆえんでもある。ただ、鰹の文字そのものはかつてはウナギをさしていたらしい。 4月頃から夏にかけて日本近海を北上することでも知られるように、カツオは回遊魚。時速およそ40キロ、ときには100キロを出すというから、おそろしいスピードだ。現在の高速船でもここまでは出ない。 そんなに急がなくてもと思うが、スピードが落ちれば呼吸に支障をきたす、とまってしまえば浮き袋のない筋肉質の魚体は沈んでしまうとあれば、高速泳法はその宿命でもある。 勝つ魚として武家で珍重され、なまぐさを禁食した仏家でも鰹節は「木魚」の隠語で呼ばれ口にされたともいう。あるいは、ついつい酒がすすむ内蔵の塩辛、酒盗。さまざまに愛されてきたカツオ。いまも南海を高速で泳いでいるだろう彼らに、ありがとう。ぼくも泳ぎつづけます。

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 ホタルの季節が近づいてきた。闇に浮かぶちいさな光を求めて、野草をかきわけた幼い日。 ホタルの光は、ルシフェリンという発光物質が、ルシフェラーゼと名づけられた酵素のはたらきで酸化することによっている。つまり燃焼作用なのだけれど、一般の火と違ってホタルのそれは熱くならない。酸化で発生するエネルギーのほとんどを光とし、熱として放出しないからだ。光への変換効率は90%以上だとか。冷たい火と呼ばれるゆえん。 発光原理は違うけれど、同じくエネルギーから光をつくりだす蛍光灯では、変換効率はせいぜい20%というところ。ホタルの光がいかに効率いいかがわかる。照明器具会社のなかには、ホタルの仕組みをいかした光源開発に取り組んでいるところもある。 夏の虫といえばハエもそうだけれど、これまた驚異のメカニズムを持つ。視覚だ。8つの視細胞からなる個眼を約6000持ち、ほぼ360度の視野を確保する。その情報処理方法を知ることで人工視覚の開発につなげようという研究もまた、進んでいる。 身近な、小さな生命にも、学ぶべきところがまだ多く残されている。ホタルの光、トンボの複眼、あるいはカブトムシの力。少年の日追い求めた世の中の驚きたち。いや、見方さえ間違わなければ、ぼくたちはまだ、それを見つけることができる。

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