小橋 昭彦 2001年5月10日

 少年事件を分析するため、警察庁少年課がまとめた資料がある。95年から99年までに逮捕、書類送検された容疑者6499人の年齢を分析したもの。もっとも多かったのは49歳で、185人を占めた。それに続くのが47歳、そして48歳。人口そのものが多い団塊世代ということを割り引いて考える必要はあるにしても、50歳前後は老後への不安や人生の岐路に立つ不安定さを感じる年ごろだと専門家は指摘している。
 一方、さいきん目立つ少年重大事件については、最高裁の家裁調査官研修所が背景を研究した結果を発表している。少年たちは追いつめられた苦しい気持ちを避けるために、破壊的な行動をとっていると分析、深い挫折感や自殺企図もみられ、それら前兆をよみとる力が欠かせないと。
 ふと気になって毎年の重要犯罪の発生率を調べてみる。平成になった頃を底にして、2000年は10万人あたり14.4と、当時の倍。目立つのは強盗や強制わいせつなどの増加だ。重要犯罪に限らず、犯罪そのものが増えてもいる。
 ああしかし、犯罪をもとに世の中を語ることはすまい。
 ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』を読み返している。学生時代に衝撃を受けた、もっとも好きな作品のひとつ。ロシアの「カラマーゾフ的」なる精神が生み出す葛藤、そして事件。再読して、また魂をゆさぶられている。
 49歳の犯罪が多いからといって、あるひとが49歳になったから危険だというわけじゃない。14歳とか17歳とか、ぼくたちはそういう単純化をしてしまいがちだ。統計や数字にとらわれないでいよう。それよりも信じたいのは、ぼくたちの心のカラマーゾフ的なるものを探る想像と洞察の力。

1 thought on “事件な年ごろ

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