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大地の下、水は流れ

2001年4月11日 【コラム
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 そう、わが家にも井戸があった。汚れて帰った夏の午後、腕に足に、ひんやり冷えた水を浴びた。スイカをつるして冷やしたりもしたっけ。あの井戸水は、どのくらいの年を経た地下水だったろう。
 地下水の年齢は、地域によっておおきな差がある。乾いた土壌ほど、水の流れは遅い。アフリカのサハラ砂漠などでは流速は年1メートルから2メートル、水の年齢は2万年から3万年という。関東地方の地下なら、おおよそ数十年から百年。幕末の志士の肩を濡らした雨が、あなたの目の前で湧き出ていることもあるかもしれない。
 地下水の年齢は、トリチウムなどの放射性同位体を利用して決定する。誤差があるので正確な年代決定は難しいけれど、1953年以前のものかどうかはわかりやすい。1952年に開始された水素爆弾の地上実験の影響で、それ以降に地下に入り込んだ地下水は、トリチウム含有量が多くなっているから。
 トリチウムの半減期は12.4年。実験終了後30年以上経つけれど、まだ平常値には遠い。環境省による日本の名水100選を見れば、湧水と呼ばれるものが多い。多くの人が認める地下水の貴さ。その長い旅程に、現代人があまり深い痕跡を残していなければいいのだけれど。
 ちなみに温泉水の起源も、いったん地中に入った天水。火山地域ではこれにマグマが冷えて固まったときに分離される「初生水」が混合する場合も多いようだ。初生水はその名のとおり、地球の水循環とは孤立して、いわば地球創生の原材料から生まれた、まさに初めての水。
 湧水を口にし、あるいは温泉に身をひたす。そのとき、ぼくたちはたしかに、地球と会話をしている。

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One comment to...
“大地の下、水は流れ”
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小橋

まず参考書として、『水の自然誌』をおすすめします。地下水のトリチウム測定については、「農業工学研究所」内の「水中のトリチウムによる地下水の流れのレポート」や、東京都の「トリチウムによる地下水の年代測定」などをご参考に。また、初生水については、「温泉の科学」内、温泉水の起原の話などをご参考に。環境省「名水百選」もどうぞ。「地下水学会」というのもあります。




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 きなくさい、という。類焼にあったときのあの匂いはまさに字義どおりだったと思い出す。ともあれ、きなくさい奴といった表現を生むほど、危険を察知するのに、嗅覚は人間にとって重要な情報源だったわけだ。 危険を察知するだけではない、健康を保つのにも鼻は役立っている。ほ乳動物は一般に鼻呼吸をするが、人間は発声のために気管が口につながっており、その結果、口呼吸が可能になっている。鼻から吸った空気は、鼻腔を通る間に加湿、浄化されて送り込まれるのに対し、口呼吸は有害物質がろ過されないまま体に取り込まれてしまう(日経3月17日)。鼻呼吸をすすめる東京大学の西原克成講師によれば、花粉症やアトピー性皮膚炎、ぜんそくなどの患者にも効果があるとか。 人間の五感の中で嗅覚はもっとも退化しているともいう。にもかかわらず、無臭化をはかったり、あるいはあえて快適な匂いだけにしようとしたり、匂い関連の商品は絶えることがない。 まあ、それもいいんだけど、もう少し自然の香りをかぎつつ、日々意識して鼻呼吸してみる。危険への対応力向上になるし、健康にもいい。自分がこんなに役立っていると知ったら、鼻のやつ、ちょっとは高くなるだろうか。

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 言葉は、日々新しい。ほぼ10年ごとに改訂されている三省堂国語辞典の場合、新版が出るごとにおよそ3000から4000の新項目が加わっている。1日にひとつは辞書掲載レベルの言葉が生まれている計算。いまの新聞を調べると、カタカナ言葉を中心に新語が毎日10くらい見つかるともいう。 カタカナ言葉の由来は英語からのものが多い。いま英語は、母国語あるいは公用語として7億5000万人がしゃべり、さらに10億人が学んでいる。2050年には世界人口の半数が英語をたっしゃにあやつるという説が王立協会の発表にある。 ビジネスでも主役は英語。企業で使われる言葉と総売上高などに注目して換算した英語の経済価値は、5兆4550億ポンド、日本円にしておよそ1000兆円だとか。日本語の経済価値はそれについで2兆9600億ポンド、ドイツ語が1兆7140億ポンド、スペイン語が1兆2490億ポンド。 とはいえ、普及した言語はまた分解の危機も抱える。英語も変種に分かれ、互いに理解不能になる可能性があると、言語学者のデビッド・クリスタル教授は指摘する。かつて世界中のウェブページの8割以上を占めていた英語ページが、いま半分にせまるまでに減り、多言語化しているように。 言葉は、日々うつろう。いま口にしているひとことは、このひとときのいのち。人も思いも世の中も、今日とはほんの少し違う明日があり、消えていく言葉がある。 今日の気持ちは、今日のうちに伝える、今日の言葉にのせて。

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