富士山通勤
日本でもっとも高いところにある建築物は何か。答えは富士山測候所だ。標高3776メートル、日本でもっとも高い頂に立つ建物だから、この記録が破られることはない。
富士山測候所が設置されたのは1932年のこと。当初は木造。冬になると平均気温氷点下20度、風速20メートルという土地、朝になると吐いた息で布団が白く凍っていたという。現在のアルミニウム合金に立て替えられたのが1970年代の初め。建築には苦労もあった。
資材運搬はヘリコプターに頼るしかないし、建設機械もほとんど使えない。おまけに屋外で工事が可能なのは6月上旬から9月上旬にかけての夏場だけ。こうしたなか、全館暖房の施設がようやく完成した。
測候所で働いているのは通常4人。生活している以上食事は必要で、調理担当者もいる。勤務は3週間交代(日経1月26日)。4人がローテーションしている。交代といっても、冬の「通勤」はたいへん。早朝6時ころふもとの基地を出発、5合目まで雪上車でのぼる。そこから山頂までは歩いて5、6時間。
突風に備えて登山道には測候所職員用の手すりが備え付けられているものの、雪道は凍っているので滑ると危ない。命がけだ。
日本最高地の職場への出勤。この光景を考えると、都心の「痛勤」もなんとか耐えられるだろうか。
“富士山通勤”