ざつがく・どっと・こむ
ちょっと知的な雑学&トリビア

微生物たち

2004年5月06日 【コラム
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 大型の生ゴミ処理機を利用している。数ヶ月ごとに取り出して畑に。その畑で今、ナスやピーマンが芽を伸ばしている。不思議なもので、取り出した後は少量の残土にもみがらを加えただけなのに、その日からはや生ゴミは分解されていく。微生物の力。
 ぼくたちの身の回りには多くの微生物がいる。1グラムの土の中に1億から10億とも。その1%さえ、ぼくたちは把握していない。大気中の二酸化炭素を吸収する海洋の微生物種が特定されたのが、ほんの15年ばかり前。生物学者チザムが発見したプロクロロコッカスは、たった一滴の海水に多いときは2万も含まれている。そんな身近で、しかもそれがなければ大気の二酸化炭素濃度が3倍になっていたのではといわれるほど重要な微生物なのに、長い間見落とされていた。
 微生物は、ぼくたちの体内にもいる。たとえば口の中だけでおよそ500種。米国のゲノム研究者が、口内をこすりとって微生物のDNAを抽出したところ、遺伝子配列の4割以上がこれまで発見されたことがないものだったという。それら無名の微生物たちと健康や病気の関連も、研究が始まったばかり。
 バイオレメディエーションが注目されている。微生物を利用して環境を浄化する技術だ。PCBや原油汚染などに利用できないかといった研究が進む。環境中の微生物バランスを崩さない配慮が必要だけれど、それ以前にぼくたちは、環境による浄化能力を超えた汚染物質を撒き散らしてきたのだ。
 南アフリカでこのほど、35億年前に微生物が食事をした痕跡が見つかった。地球に海ができたとされるのがおよそ38億年前。それからほどなくして、微生物のようなちょっとばかり複雑な生命が誕生していた。その後、何度かの天変地異を生き延び、微生物たちは大気中から地下深くまで存在している。ぼくたちはようやく、この身のまわりの小さなものたちの声に耳を澄ませはじめたばかりだ。

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9 comments to...
“微生物たち”
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小橋昭彦

バイオレメディエーションについては「微生物で環境をきれいにする”バイオレメディエーションとは?”」「環境ナビゲーター バイオレメディエーション」などをご参照ください。この春から「バイオレメディエーション小委員会」として政府での検討も始まったようです。また、「Chisholm」博士については「Chisholm Lab.」でどうぞ。体内の微生物については「口に500種、膣に500種」の記事がていねいです。


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樋口健夫

小橋様
毎回、興味ある話をありがとうございます。すごく楽しみにしています。これはずっと続けて、「科学的なものの見方」などの本にできると思います。また中学・高校の副読本にしても最高です。続けてください。


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kiyoto

微生物ネタって夢がありますよね。
最近Chisholm博士を他のサイトで知っていたので、今日の雑学にも登場してきてビックリしました。


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馬場亮二

*ビニールハウスの中でトマトを栽培し、その中で生ゴミの処理をしますとトマトの糖度が高くなりす。
微生物の分解で発生する炭酸ガスは夜、トマトに有効に働き、生ゴミは肥料としてトマトに使えば良いでしょう。
*貴兄の文章は創造性に足りないと思います。知識の寄せ集めですが、それも大切だと感じています。


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安芸中野司令@猪花栄治

小橋様

海洋の中に、大気中の二酸化炭素を分解する微生物がいるということに注目したいと思います。もはや、大気中では二酸化炭素が増えるばかりで、最後の切り札は海洋中での分解ですね。
 海洋と大気の酸素・二酸化炭素の交換ということにも興味があります。ただ、海洋中に大気中の二酸化炭素を分解する微生物が存在しても、大気中の二酸化炭素が海洋に溶解しなければ用を成さないので。また、海洋中の植物プランクトンが生成した酸素が大気中に噴出するかどうかにも興味があります。
 この大気中の二酸化炭素を分解する微生物の存在と別に、溝にフタをして、植物プランクトンの汚染処理能力を阻害していることも懸念しています。


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今井 

小橋様

毎度、配信いただき有難うございます。
自然浄化の環に驚きます。昔、ウイルヒョウという医者がおられ、病原菌をやっつけることで病気を治すことを始めて、近代医学を開いたと聞いたことがあります。
いまや、自然治癒力こそ大事だといわれながら菌や、ウイルスは手っ取り早く殲滅させる方法がとられがちなように思います。また、最近の新聞では二酸化炭素を固定して深海に投棄するとか、使用済みの核燃料を海底に沈める方法がとられているといわれます。
文明は衛生との戦いだといわれますが、そろそろこの考えを変える時代にきているのではないかと思います。

ところで、小生は1年前から某メーカーの生ごみ処理機を使っています。昨夏、庭に肥料として与えた所、かぼちゃがの大収穫となりました。この場合も小橋様と同じく、庭土の中に微生物が繁殖しつづけていると考えて宜しいのでしょうか。


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吉村 義彦

小橋様
何時も配信ありがとうございます。
今回微生物のことで、ありがとうございました、
私たち農業者は、微生物をいかに有効に活用するかということで、日夜努力しているのです。
堆肥を作りボカシをつくり、EM活性液、バイオなど色々な方法で、化学肥料や農薬を使わない農業を実践しています。地球環境にやさしい農業を行うことは無限の楽しみがあります。応援してください。


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小橋昭彦

みなさま、ありがとうございます。このテーマでこれだけのコメントをいただけるとは意外でした。

樋口さま、ありがとうございます。科学的ネタをどのような発想で切り取るかを常に心がけています。発想法の大先輩のひとこと、感激いたしました。

馬場さま、ありがとうございます。上記の次第で、本コラムでは「必ず複数の知識を入れること」を自分に課しております。おっしゃるとおり、拙文そのものに価値はなく、「寄せ集め」を通して読者のみなさまが何かをすくいとっていただけたら、価値はそこにあるのかなと思っています。

今井さま、ありがとうございます。そうですね、微生物だけと考えるより、それに取り組もうとされた今井さま含め「自然」の力と考えておきましょうか。それにしても、うまく利用すればこれだけの力を持っているものが、多くの場合「ゴミ」として処理されることを考えると、複雑な気持ちですね……。

吉村さま、ありがとうございます。わが隣町でもアイガモ農法に取り組んでいるグループがあります。化学肥料や農薬を使わないということは、自然の力を信じるということでもありますよね。下記のサイトを友人たちと運営していますが、今後とも応援していきたいと思っています。

・田舎.tv
http://www.inaka.tv/


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吉田 正太

小橋様

誕生日にお祝いのメールを頂いたので、ここでお礼申しあげます^^ありがとうございました。嬉しかったです。実はこのところこのサイトのメルマガは届いて、後で見ようと回すうち、いつの間にか全然見なくなっていました・・。で、久しぶりに拝見したところ、やっぱり面白い!!!・・・尊敬致します!!!これからもなるべく読みたいと思います^^がんばってください。

今回のお話について、「だから海からくる風は気持ちいいのかな?」って思いました。僕は山の空気よりも海の空気の方が澄んでいるような気がします。海岸に立つと健康な気分になって、すがすがしい気分になる理由が分かった気がします^^。

それではこれからも本当に楽しみにしていますので、がんばってください!!新聞などを読んでいても、あ、ざつがくどっとこむで言ってた事だ・・みたいな事があって楽しいです。大学のレポートにも時々少し参考にさせていただいています^^;勝手にごめんなさい。長くなってすいませんです^^;。




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 ありさんとありさんがごっつんこしたのは、お買い物に出かけたときだったか。えさ場までアリが行列している光景はしばしば見かける。えさ場を見つけたアリがフェロモンで巣までしるしをつけたのを仲間がたどる。障害物が少なく道幅が広い場合はいいけれど、狭い場合はごっつんこだろうか。フランスの科学者が並行するルートを作って観察したところ、道幅が広く混雑していないときは1本だけを用いていたけれど、道幅が狭く混雑するときは、2本を均等に用いたという。アリだって、混雑にあわせてバイパスを通るわけだ。 ロンドンで行われるノッティングヒル・カーニバルのパレードの道筋を決めるにあたっての、こんな話がある。見物客の流れをもっともスムーズにするため、循環状にパレードしていたのをL字形に近くなるように工夫した。この案のもとになったのがコンピュータ・シミュレーションで、案を出した学者らは、群集の動きは昆虫がえさ場に引き寄せられる行動と同類と述べている。 群れとしてみればヒトもアリもないのだ。群れは、個々の意思と関係なく、全体として流体の動きと見なすことができる。高速道路での車の動きもそうで、工事や車線の減少もないのに渋滞するいわゆる自然渋滞も、ニュートン力学と関係ないにも関わらず、パイプを流れる粉末の動きに似る。 交通渋滞による日本全国での年間損失は、時間にして38億時間、費用にして12兆円。ITSを研究するグループによると、10台から20台に1台が5秒分の車間距離をとっていれば、車の減速が車列全体に及ぶことを避けて滑らかさを保てるとか。ただ、5秒といえば時速60キロの場合で83メートルあまり。少し広めで、後続車の理解を得づらい。こうして結局、今日もまた日本各地で渋滞、そして渋滞。巻き込まれたときは、ひとまず「おつかいありさん」を口ずさみ、自分もまた川の流れと同じく自然の摂理のなかにいると考え、気持ちを落ち着けるほかない。

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 ずっと気になっていた本がある。『アフターマン』というのがそれで、人類絶滅後の生物形態を描いている。出版当時高校生だったぼくには高くて買えず、その後書店では見かけなくなった。だけどなぜか、おりに触れ思い出すのだった。同じ著者がこのほど、2億年後の世界を進化論に基づいて描いた書籍を出したと知って購入。 ページを繰る。魚が空を飛び、イカが地上を歩き回る。そう、こうしたリアリティのある細部を求めていたのだと納得する。絶滅と言葉では簡単でも、細部の、手触りとでもいった部分を感じたい。たとえば白亜紀にしても、隕石の衝突に伴う激変が恐竜を絶滅させたと一般に説明されるけれど、具体的にはどんな光景だったのか。 科学者クリングとダーダによる、焼け焦げた地球というシミュレーション。恐竜たちを絶滅させた隕石の衝突地点はメキシコのチチュルブ・クレーターとされる。飛び散った物質の中には地球と月の中間地点まで達したものもあったという大爆発。それら破片が再び地表へ落下していく。落下物の熱によって植物は乾燥し、発火する。ことにチチュルブ周辺と、落下物が地球を半周して落ちる現在のインド周辺が激しい。地球の自転に伴い、そこから西側に向けて火災が広がる。世界の多くが燃え尽きた。 白亜紀末の大火災から生命がふたたび立ち上がったのは、火災後の世界にも適応できる生き物がいたからだった。ぼくたち人類が滅亡した後も、この世界に存在する多種多様な生命のどれかが、新しい環境に適応していくことになる。そう考えていて、ふと気づく。ぼくが細部にこだわっていたのは、こうした、終わりの向こうに命をつなぐ多様性を見出したかったからではなかったか。未来への種は今にあるのだと、手触りを通して確認したかったからではなかったか。

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