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ちょっと知的な雑学&トリビア

振り子

2004年3月11日 【コラム
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 地下鉄の線路は駅を出発すると下りになり、次の駅の手前ではのぼりになる。出発時は坂を転がる要領で加速し、到着時は逆に坂を利用して減速する。電力の節約になるわけだ。そんなことを聞いたのは、国立科学博物館の体験展示室。とすれば地下鉄は、ある種の振り子の原理を利用しているということか。
 ある地点から別の地点まで玉を転がすとき、もっとも早く着くのは直線距離を転がした場合ではない。地下鉄に適用するなら、駅間をサイクロイド曲線と呼ばれる曲線にそってつなぐとよい。ジェットコースターが落ちるときのような曲線で、より具体的には、自転車のスポークの端につけた反射板が、進行とともに描く曲線がそれだ。仮にサイクロイド曲線で地下鉄を掘り、東京と大阪をつなぐなら、約十分で到達するという。重力だけのクリーンエネルギー。サイクロイド振り子は、振幅によらず周期が一定という特徴もあるから、東京・大阪間の中央地点まで5分かかるとすれば、静岡から転がり始めてもやはり5分ということになる。
 振り子にもさまざまある。ほうきを掌に立ててバランスをとる、あれも一種の振り子で、倒立振り子と呼ばれている。ばねの下におもりを吊るして鉛直方向に振動させるのも振り子だ。思い起こせばあの日、ぼくは博物館の入り口でフーコーの振り子に出会ってもいたのだった。天井から吊るされた大きな振り子。地球の自転の影響で、振動面が移動する。極なら一日で一周するけれど、東京では41時間。南へ行くほど一周に要する時間は長くなる。
 大阪市立科学館の調べによると、日本には50を優に超えるフーコーの振り子があるという。春を待つ日、子どもとブランコを揺らしながら、子どもたちに宇宙の中の地球を感じさせる振り子が日本各地で揺れている様を思い描いていた。それはなんだかちょっと、すてきな光景だった。

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9 comments to...
“振り子”
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小橋昭彦

PHYSICS is the WORLD」をご参照ください。ちょっと難しいですが、サイクロイド曲線といえば、ニュートンも登場する「最速降下問題」という話があります。


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本谷 佑久(モトヤ タスク)

先日の福井のWEBサミットで、名刺交換させていただいた本谷です。ほんとうにご苦労さまでした。
1日目は行けなくて、2日目だけの参加でしたが、小橋さんに会えて大感激でした。WEBマスターで名を成している人はすごいなというのが実感です。今度、社内ネットでコンプライアンス(企業論理)のメルマガを立ち上げようと思っています。読まれるメルマガのコツ、ポイントは何ですか。自分で研究することに尽きると思いますが、ノウハウを紹介したサイトをご存知ありませんか。
田舎のサイトも頑張ってください。応援しています。
それでは。


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ken

 いつも、興味深いお話ありがとうございます。
振り子、 大変面白かったです。
昔見た映画の、ターザンの移動手段でした。
蔦にぶら下がり、ア0ア0ア0と言いながら。 
 
              65歳 信州人      


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竹内英二

東京・大阪間が10分ですか。
すごいですね。
でも、ものすごいGがかかりそうです。
地下鉄に乗るための訓練が必要になるかもしれませんね。

子供の頃、上野にある科学博物館で、研究している人の
部屋でいろいろな話をきいた覚えがあります。
内容は覚えていませんが、とても熱心な方だったので、
それ以来、科学博物館のファンです。

本谷さん、はじめまして。
読者の立場としていわせていただければ、
メルマガはおもしろいか、役に立つかどちらかがないと
読みません。まして、社内向け、それもコンプライアンス
(法律遵守)となると、相当工夫しないと読んでもらえないと思います。少なくともぼくなら読みません。
工夫の考え方としては、メルマガにする必然性を考えることだと思います。それと、継続すること。
小橋さんのメルマガも不定期であったなら、いまほど読まれなかったと思います。


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加藤

先週の土曜日に神戸から東京に家族で行ってきました。ディズニーランドを希望に対し、2人の息子は恐竜の骨が見たい!と言い出し、科学博物館にいってきました。子どもたちはフーコーの振り子よりも恐竜がいいようで、人類の発達史にも簡単していました。


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今井 功

やあ、驚きました。これまで、私は60数年間「直線で下りが最も早い」と思っていました。サイクロイド曲線ってすごい法則なのですね。これって、空中、それに宇宙空間や水中なんかでは如何
毎度、配信有難うございます。 


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小橋昭彦

今井さん、ありがとうございます。数式に基づいた計算をする能力がないので、正確な答えはできませんが、少なくとも重力による下向きの力のかかるところでは、同様のことがいえるのではと思います。

竹内さん、地下鉄の動力は重力なので、もっとも加速するとしても自由落下と考えればいいのではないかと。とするとたとえばロケットの打ち上げ時のような過度なGがかかることはないのではないでしょうか。止まるときはどうなのかな……


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ALG

 文系の人間なのでイメージでしか話せないのですが、振り子(地下鉄)を東京から大阪まで落とすということですよね?
 東京大阪間の距離の3分の1(150Kmちょいくらいになるのかな)くらいは地下にもぐらないといけないのでは、、、今度はそこから登ってくるエレベータの時間がすごくかかりそうです(^^;
 数学って面白いですね。
 しばしサイクロイドと最速降下問題について思わずいろいろネットで調べてしまいました。


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CO

ご紹介いただきましたPHYSICS is the WORLD を製作しているCOといいます。ご紹介いただいた日に、アクセスが普段の倍以上になっていたのでびっくり、アクセス増の原因を探ってここにたどり着きました。
過去コラムの量が膨大なので一部しかまだ読ませていただいてませんが、理科の内容が多いですね。とても面白いコラムだと思います。このコラムを読んで理科を好きになってくれる人が増えるといいな、と思います。




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 いろは歌のように、文字すべてを利用して意味のある文章を作る遊びをパングラムという。いろは歌の誕生は平安中期といわれるが、同じ平安期に五十音図も誕生している。もっとも庶民の手習いにはいろは歌が好まれ、五十音図が広まるのは明治になって教科書に登場してから。 教科書に五十音図が採用されたのは構成が論理的だったからだが、これは古代インドのサンスクリット由来だという説がある。梵語は紀元前三世紀までに音の並びを科学的に決めていたと言われ、この表を読もうとカナを振ったのが五十音図につながったというわけだ。梵語で二重母音とされるエとオがアイウの下にきている事実も、この説を裏付ける。 世界の言語の連鎖性を説く津田元一郎氏の著書に、各音の起源が説明されていて目をひいた。ア行は原霊性、ナ行は生産性、ラ行は輝光性を持つなどと定義した上で、各音のなりたちを見ている。たとえば日本語のソ音は祖先、基礎などのように「源」を示す性質を持つが、英語でもsource、soulなどs音に同様の傾向があるというわけだ。こうした性質が単語レベルにも現れて洞(ホラ)とhole、名前とnameなどのような共通性を生む。ただし、単なる偶然の一致と指摘する説もある。 心理学のラマチャンドラン博士らは、言葉の発生に共感覚的な感性が入りこんだ可能性を指摘する。星型のようなとんがった絵を言葉で表現するとき、多くの人が「ギザギザ」といった耳障りな音を混ぜる。「ちょっと」や英語で言うteeny-weenyなどの表現は口をすぼめる音が混ざるが、物の小ささをジェスチャーでも表現しているというわけだ。この見方をとれば、音や単語の類似性を、言語としての連鎖に求める必要はなくなる。 いずれにせよ、音はそれぞれ、祈りに似た思いから発せられた力強い何かであったのは事実だろう。ふだんそれらをまるで記号のように軽く口にしていないかと、振り返りもするのである。

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