小橋 昭彦 2002年12月29日

 米国の宝くじ「パワーボール」の抽選で、3億1490万ドルがあたったという。一等の累積賞金が高額になっていたもので、個人の獲得額としては米史上最高だとか。自分で数字を選ぶこのくじの当選確率はおよそ8000万分の1。累積の高額賞金がときに話題になる。
 この種のくじは、しばらく当選が無かったからといって当選確率が高くなるわけではない。しかし、たとえばコイン投げで裏裏裏裏裏と出たとき、次は表に賭けたくなるように、ぼくたちの心はときに理性を裏切る。実際は次に出るのは、表も裏も同じ確率。
 2002年のノーベル経済学賞をとったカーネマン教授の「プロスペクト理論」は、人は合理的な判断をするとは限らないことを示したものだった。たとえば、80万円をもらえるか、もらえるのは100万円だが15%の確率でもらえない、のどちらかを選ぶとする。多くの人は、80万円をもらえる方をとる。では、80万円を支払うか、100万円支払うが15%の確率で支払わなくていい、では。たぶん、後者。得する場合には目先の確実な方を、損する場合には不確実な方を選ぶのが人間なのだ。ちなみに合理的に考えるなら、最初の質問では100万円×85%で期待値は85万円だから、相場に関わる人なら後者を選ぶ。
 なんとなく気になって、賭けごとの還元率を調べてみる。競輪や競馬、競艇などの公営賭博は、ほぼ75%。宝くじは意外に低く、約40%。パチンコはギャンブルとはされないので公的な数字はないけれど、おおむね9割ぐらいのようだ。米国の大手カジノでは85%から93%くらいの間で調整しているという。
 ちなみに、冒頭のパワーボール当選者は会社経営者なのだけど、賞金で事業をてこ入れし、解雇した人材を再雇用するのだとか。2001年にもあった高額当選者の場合は、慈善財団を設立して図書館や養護施設などに寄付しているという。個人的には賭けごとに手を出す余裕は無いが、夢が、ほかの人たちの夢を育むなら、それも悪くない。

5 thoughts on “幸運の確率

  1. 本年はこれが最後です。新年は2日から。それではみなさま、よいお年を!

  2. 知人に紹介されて読ませて頂いております。
    有難うございます。
    時間に追われて熟読は出来かねており、失礼しておりますが、広範囲なご勉強感服の至りです。
    来年もよろしくご指導のほどお願い申し上げます。

  3. インターを始め(5年位)てから見ていますが、ご苦労様です。色々なものがあり勉強になります、今後も拝見しますので頑張ってください。

  4. 「“日本一宝くじの当たりの出る売り場”とは、“日本一はずれくじの多い売り場”でもあろう」という話を聞いて、ナルホドと思った記憶があります。

Leave a comment.

Your email address will not be published. Required fields are marked*