映画館で子どもは笑い大人は涙していたと話題になったクレヨンしんちゃん『嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』をDVDで観る。始まりは1970年万博のシーン。ぼくも行ったが、まだ幼なく行ったという記憶しかない。それでも「月の石」を話題にした思い出は残っている。見れなかったに違いないのに心に残る、特別な展示だった。今のように月着陸に疑問が出される世の中じゃなく、みんな純粋に科学の力を信じていたなあ、と、これではすっかり映画の手の内。
その月の石、記録によると大人のこぶし大の大きさで約1kgとある。持つにはちょっと重いだろうか。そんなことを考えたのは、人間は500グラム程度の重さを本能的に選ぶという論文を目にしていたから。ブラジルのアラン・チャネル氏によるその研究によると、若い男性に、目標に投げたときに最大の損害を与えるような石を選んでくれと頼んだところ、並んだ180グラムから1900グラムまでの石の中から、全員が480グラムの石を選んだという。腕の長さや振りなどから力学的に考えると、確かにその重さが、最大のエネルギーを石に伝えられるという。
同じ研究によれば、地質学者が収集して各地の博物館に納められている試料も、平均500グラムだったとか。男性用のハンドボールの重さもほぼそれに近いし、1ポンドはほぼ500グラム。われわれは最適の重さを選ぶ力を先天的に持っているのではないかと推論されている。もちろん、重力の違う月では仮にそんな本能があったとしても働かなかったろうけれど。
それにしても500グラムってどのくらいなのだろう。気になって、台所の秤に手近なものをのせて量ってみた。ぼくの茶碗に伴侶のそれを重ねる。まだ軽い。4歳になった長男にようやく与えた瀬戸物を重ね、離乳食を始めた次男の食器を重ねる。これで500グラム。重なった4つの食器。なるほどなあ、ぼくたちにはほどよい重さの幸福や暮らしがあるのだろうと、ふとそんなことを思った。
『映画 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』、これでクレヨンしんちゃんを見直した親御さんも多いかも。今年の新作は文化庁メディア芸術祭賞を受賞していましたね。チャネル氏の論文は「Throwing Behaviour and the Mass Distribution of Geological Hand Samples Hand Grenades and Olduvian Manuports」(Journal of Archaeological Science 29 335-339 (2002) )です。
うまい!
そう来るか。座布団一枚!
500グラム理論、楽しい発想ですね。
あけましておめでとうございます。
新年早々のコラム、すばらしいできですね。
本年も楽しみにしております。