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ちょっと知的な雑学&トリビア

ミミズをめぐって

2002年7月29日 【コラム
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 夏の朝、子どもとラジオ体操に向かう途上、道の両脇にたくさんのミミズが群れているのに出会う。多くは陽光に干からびかけている。まるで集団自殺。なにがミミズを路上に迷わせたのか。
 ミミズは日中は土の中で静かにしている。夜になると穴から体を出して地上の餌を採るようだが、体の後半まで出すことはない。一説に、夜の雨が穴を満たして追い出され、戻る前に太陽の紫外線で麻痺するのではとあった。さて、夜のうちに雨があったろうか。ミミズの生態には謎が多い。
 謎といえば「ミミズにおしっこをかけると陰部がはれる」という言い伝えもそうだ。土を育ててくれるミミズを大切にするための迷信とも言われるが、ネット上を検索すると、実際に腫れたという経験談が複数ある。ミミズと出会うときはたいてい手が汚れていて、その手で局部を触るからだ、という説もある。いや、驚いたミミズが体腔液を発し、それがたまたま局部にかかるのだともいう。体腔液が脊椎動物に毒性を示すというのは確からしいので、ありえない話ではない気もする。
 ミミズは環形動物門貧毛綱に属するが、言い換えれば貧毛とはいえ確かに毛を持っているわけで、これは恥ずかしながら意外だった。種によってちがうが、腹部、ないし全周に剛毛がはえていて、移動のときすべり止めとして役立っているのだ。
 あのチャールズ・ダーウィンがミミズの研究をしていたというのも驚きだった。ミミズが動かす土の量を最初に測定したのも彼で、いまもしばしば引用される。累計すれば、地表の厚さ10センチの土は10年あまりですべてミミズの腸の中を通過した計算になるという。一般に1日に体重の半分の量の糞を出すというから、土作りの名人であるには違いない。
 ミミズを利用して有機肥料を作るなど、ミミズは環境教育の格好の教材ともなっている。ダーウィンは28歳のときにミミズ研究を始め、死の前年、書籍『ミミズと土』を発表した。進化論で知られた彼は、生涯をミミズに捧げてもいたのだ。こんどミミズを見かけたら、しゃがみこんで子どもとじっくり、ダーウィンの話でもするか。

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9 comments to...
“ミミズをめぐって”
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小橋昭彦

まずダーウィン『ミミズと土』はこちら。関連して、『ダーウィンのミミズの研究』もおもしろそうな本ですね。さて、ミミズ関連サイトとしては、「なんでも研究室★ミミズあれこれ」「ヤマトヒメミミズ研究グループ」「ミミズのページ」をどうぞ。環境教育と関連してでは、「みみずプロジェクト」「みみずコンポスト」といったところでしょうか。それからぜひ読んでいただきたいのがミミズ研究家の中村さんのインタビュー「ダーウィンが始めたミミズ研究」と講演録「ミミズとつきあってわかったこと【PDF】」です。「[きょうのなぜ]ミミズ」もよいですね。ミミズの体液の毒性については触れているページが少ないのですが、「シマミミズ体腔液は脊椎動物には毒性を示すが、無脊椎動物には毒性を示さない」といった研究発表があります。


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ジュモン

ミミズで腫れた話は、こどもの頃極当たり前の話とし
てよく耳にしました。ミミズにおしっこをかけなかっ
たので自身の体験はないのですが、友人らの話による
と、へびと錯覚する大きさのヤマミミズのようです。


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Nobu

もう40年以上前ですが、ミミズにおしっこをかけたら、その1時間くらい後に、本当に腫れてしまいました。それ以来、怖くて確認実験はしていません。特にその時だけ手が汚れていたとは考えにくいですね。いつも大体同じようなものでしたから。


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ハマ

ミミズのおしっこの話は子供のとき聞き、また実際はれたという子供がいたので、怖くて実験したことはありません。腫れたのが陰茎か陰嚢かは、はっきりしません。


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小橋昭彦

やはり現実に腫れた経験のある人はいるんですね。ぼくもちょっと実験する気になれないです……。


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こやちゃん

私は田舎育ちですので、小学生の夏休みは毎日用水掘りで魚釣りをしていました。
えさはいつもミミズでしたが、夕方いつものようにつりをしていて、たまたま餌を釣針に付けようとしていたときに、ミミズの体液が少し目に入ってしまいました。
その翌日には目が腫れ上がり結膜炎になりました。
それ以来、魚釣りをするときのえさのつけ方には気をつけています。


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小橋昭彦

こやちゃんさん、貴重な体験談、ありがとうございます!


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五語

俺も最近試しましたが
3日腫れたねw
シマミミズ5匹をまとめてかけました。
しかもその時かなり溜まってて15秒間ぐらい
かけてて最後の3秒ぐらいで痛い!!!!!!!!!
てな感じです。


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高倉

小水をかければ、本当に腫れます。体験者です。なぜか、知りたいです。




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 フランセス・アッシュクロフトによる『人間はどこまで耐えられるのか』は、全米オープンで優勝したプロゴルファー、ペイン・スチュワートの飛行機事故を紹介するところから始まっている。高度1万1300メートル、なんらかの原因で機内が急速に減圧、そのまま自動操縦で飛び続けた。住宅地に墜落する危険性を考えて米軍機がスクランブル発進。けっきょく燃料が尽きて墜落したが、乗員ははるか以前に命を失っていたはず。 高度1万1300メートルにもなると、人間は生きていられない。無酸素で耐えられる限界は標高9キロ弱。世界最高峰の高さとほぼ同じというのは単なる偶然か。同書にはほかにも、月面で放置されても生きのびていた細菌の話、腕相撲大会に参加して、自分の筋力で骨が折れた男の話など、印象的なエピソードが紹介されている。高さや深さ、寒暖、あるいは宇宙という極限への挑戦。 それらを読みつつ、自分を信じることの力を思っていた。腕相撲の男に見られるように、全身の筋繊維が同時に収縮すれば、骨を折るほどの筋力が可能になる。アスリートは、トレーニングによって筋繊維を同調させることを学ぶ。それでもすべてを同調させることはできない。素人ではなおのことだが、火事場のばか力という現象もある。ぼくたちはふだん、自分の潜在的な力を信じていないだけなのだろう。清水の舞台から飛び降りた気になれば、限界に迫ることができる。 清水の舞台といえば、同寺学芸員の横山正幸さんの調査によれば、江戸時代、実際に234人の飛び降りの記録があったそうだ。最年少は12歳、最年長は80歳代。かつては飛び落ちと呼んでいたが、自殺ではない。多くは「心願」ゆえ。引き留めや未遂も含め、助かったのは85%。彼らの願いはかなったか。 困難な課題ほど、自分を高めてくれる気がする。もうだめだと思う瞬間にこそ、予想しなかった発想が芽生えたり、力が生じたりする。日々の小さな挑戦。生活の中にも、清水の舞台は、たくさんある。

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