小橋 昭彦 2002年6月13日

 恐竜絶滅と隕石衝突の関連がこれほど注目を集めているのは、恐竜というたぐいまれな存在があってこそだろう。実際のところ、それに匹敵する、あるいは上回る絶滅なら、これまで何度か地球に訪れている。
 その中で最大のものは、2億5000万年前、当時の生物種の90%が死に絶えたペルム期末の大量絶滅。これを地球上にもたらしたのも、隕石の衝突ではなかったかという説がこのところ熱い論争を呼んでいる。証拠のひとつが隣町・兵庫県篠山市で発見されたこともあって、論争の行方がずっと気になっていた。仮に隕石衝突が原因とすれば、そのために地球の生態系が変わり、恐竜の登場につながったわけで、恐竜は幕開きも終幕も、隕石とともにあったことになる。もっとも、この時代には超大陸パンゲアの形成と分裂という一大イベントもあった。絶滅の原因は、地球内部の変化にあるとする学者も多い。
 それにしても、直径5キロメートル以上の隕石に絞っても、過去6億年間で約60個が地球に衝突しているという。5回の大量絶滅はすべて隕石に関係している、とする説さえある。ファンタスティックなのは、なぜこのように定期的に隕石が落ちてくるのか、という理由をさぐるところだ。恐竜時代へ、さらに過去へむかっていた思考は、ここで一気に宇宙に広がる。
 ぼくたちの太陽系は、銀河系の端に位置し、銀河とともにゆっくり回転している。回転しつつ、銀河面をおよそ6000万年周期で上へ、下へ往復しているのだという。隕石が多くなるのは、この銀河面を横切ることが影響しているのではないか、という説。あるいは、ネメシスと仮称する、遠く離れた太陽の伴星があって、その軌道との関連を指摘する説。
 定まった説はない。ともあれ、われわれは銀河の片隅の、小さな生命に満ちた星で暮らし、そしてまたいつか、隕石でか、あるいはほかの理由でか、絶滅する運命にある。何百年か、何千年か、あるいは何億年か先。それゆえに、今日という日は、はかなく、しかし慈しい。

4 thoughts on “終わり、始まる。

  1. 最大の絶滅と隕石衝突について、関連論文は、「Did an Impact Trigger the Dinosaurs” Rise?(Science17 May 2002)」や「Impact Event at the Permian-Triassic Boundary(Science23 February 2001)」をどうぞ。また、反論としては「An Extraterrestrial Impact at the Permian-Triassic Boundary?(Science28 September 2001)」があります。このあたりは朝日新聞記事「史上最大の絶滅に新データ」に詳しいです。なお、地球の生命とその周期性について、日本発の壮大な説として、以前のコラム「10億年後の大渇水」をご参照ください。

  2. 恐竜絶滅と隕石衝突との因果関係がほぼ確実だとは言うが、何故人類だけが生き延びたのか不思議でならない。隕石衝突は、恐竜絶滅の理由の1つには違いないが、全てではない様な気がする。いやもっと外の原因があり、隕石衝突は、人間の盲腸のようなもので、存在はするが、”あつたとして なかつたとしても”恐竜絶滅の理由は、もっと外にあると言う説の方が人類の偉大さが描かれて、面白い推論ができないか?昼寝をしながら考えた。

  3. そうなんですね、なぜ恐竜は滅び、人類、というか哺乳類が生き延びたか。このあたりが、隕石衝突説で、今後補強すべき点であるようです。

  4. ともあれ、われわれは銀河の片隅の、小さな
    生命に満ちた星で暮らし、そしてまたいつか、隕石でか、あるいは
    ほかの理由でか、絶滅する運命にある。何百年か、何千年か、ある
    いは何億年か先。それゆえに、今日という日は、はかなく、しかし
    慈しい。

    仕事関係の先輩が「心配しなくても今世紀中には皆いなくなっちゃうんだ」と私が悩み事を相談するたびに言います。私はなんだか肩の力が抜けるのです。そのことばを思い出しました。

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