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ちょっと知的な雑学&トリビア

ウラの経済

2002年3月27日 【コラム
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 米ウォルマート・ストアーズの年間売上高は民間企業として世界最大の2200億ドルという。日本円にすれば約29兆円。スウェーデンの国民総生産に匹敵する。似たような数字をどこかで見かけた、と思い出してみると、日本の地下経済の規模なのだった。
 地下経済。オモテに現れない経済のことで、脱税や売春、麻薬密売などがそれにあたる。浜銀総合研究所の門倉貴史研究員の試算によると、たとえば女子中高生の援助交際の市場規模がおよそ500億から630億円など、積み上げていくならば、日本の地下経済規模は高めに見積もって17兆1000億円だという。別の推計方法を使うなら23兆2000億円とも。
 これは日本の国内総生産の5%前後ということになるが、先進国の中では比率が低い。米国で7.5%、英国で10.2%、イタリアはマフィアの暗躍があって23.4%と見積もられている。一般的には、職の少ない発展途上国ほど、地下経済比率が大きくなる。
 ウラの金といえば、対テロ「戦争」を通じて知られるようになったビンラディンの資産が300億あるいは500億円と話題になった。確かに巨額ではあるのだけれど、彼をめがけて飛び立ったステルス爆撃機の価格は1機2800億円ともいう。世界長者番付トップのビル・ゲイツならともかく、ビンラディンが5人集まったって1機も買えない。両者が戦うというのは、いったいどんな「戦争」なのか。ちなみに、世界全体の武器取引額は年間15兆円とか。
 さて、怪しげな話ばかり並べたけれど、地下経済には含まれないものの、オモテに現れない経済にはもうひとつあって、家事など家計の無償労働がそれ。内閣府の推計によれば国内総生産の2割を占めており、縁の下で日本を支えているわけだ。地下経済にお金を回すくらいなら、もっとこっちに捧げたいものだが、いかが。

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4 comments to...
“ウラの経済”
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小橋昭彦

地下経済については、「地下経済の規模に関する実証分析」をどうぞ。書籍としてまとまって読みやすいのが、門倉貴史による「日本の地下経済」「日本『地下経済』白書」です。その他、「NPOの経済効果」「世界の国一覧」「無償労働の貨幣評価について」「ウォルマート」もどうぞ。


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長谷川

いつも楽しく読ませていただいています。

今日、書店で「日本の地下経済」が目に止まり
買って家路に着いたら、メルマガで取り上げられていて
びっくりしました。

わたしのマフィアのイメージとしては、どうしてもゴットファーザーを思い浮かべてしまいます。


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井浦ムツオ

地下経済が豊かな(?)国には、いろんな背景がある
のかもしれませんね。経済の貧富もさることながら、
法律が厳しすぎると地下が増える、とか宗教とか。
それにしても、世界各国に『地下』が存在するところ
に人間性をみる気がします。研究すると面白いでしょ
うね。


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四谷

発展途上国だから地下経済比率が高くなるのではなく
地下経済比率の高い国だから発展しないのでしょう。
 というのは地下経済とは人間の欲望に根ざした労せずに富を得る手段でしょうが、そのようなビジネスが横行する国の国民は総じて努力する事が嫌いなため、国が発展しないのだと考えられます。




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 地学の授業でプレートテクトニクスを習ったときは驚きだった。大地が動く、しかも何億年も前から大陸は離合集散を繰り返してきたというのだから。 もっともプレートテクトニクスが説明するのは地殻から上部マントルまでの700キロメートルの世界。地球の半径6400キロからするとわずかだ。700キロから下、2900キロまでの下部マントルの世界を描くのが、プルームテクトニクス。東京工業大学の丸山茂樹教授らが提唱者だ。 プルームテクトニクスは、マントルの中にスーパープルームと呼ばれる巨大な上昇流があり、それが地球を動かすエンジンとなっていると説明する。プレートが沈み込むときに大量の水がマントルに入り、これが燃料の役目をしてマントルの動きを活発化、スーパープルームを生み出すというシナリオだ。東京工業大学の広瀬敬助教授らが実験したところ、地球の下部マントルには、地表にある海水の5倍の水を蓄える能力があることがわかっている。 火星への植民を描いたキム・スタンリー・ロビンスンの小説を読んでいる。失われた水を取り戻し、火星緑化を進める人々。火星に水が無い原因については、水素になって惑星間空間に吹き飛ばされたなどいくつかの説があるが、丸山教授は、過去に存在したプレート運動によって大量の海水がマントル深部に運び込まれ、いまもそこに閉じ込められていると推測している。赤い惑星の奥深く、多くの水が眠っているのだろうか。 地球と火星の大きさの差からすると、火星の海水がマントルに移動したのは約41億年前。丸山教授は、地球も10億年後には火星と同じ運命をたどり、すべての水が地表から失われてしまうという。 最近の火星の地形の研究から、1000万年前に火星の赤道付近で洪水が起こったともされている。表層にはつい最近まで一定量の水が残っていた可能性もある。もっともそれとて、ヒトが誕生するはるか前のこと。人類がいつの日か、火星の海を見る日は来るだろうか。

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 一般的になった仮想現実と似たような言葉で、研究が進められているのに強化現実という技術がある。仮想現実が現実を模倣した世界を構築するものなら、強化現実は、現実の風景に仮想情報を付加する。 東京大学デジタルミュージアムでは、ヘッドマウントディスプレイをかけて館内を見て回ると、展示に関する説明が展示物ちかくの空間に浮かび上がる。強化現実を利用し、人に出会うと顔をスキャンしてデータベースを参照、プロフィールが自分にだけポップアップされると便利かもしれない。 いまひとつ、限定現実なんて技術もある。こちらは、看板や広告など不必要な情報がカットされて視界に入る。仮想、強化、限定といった現実が世の中に出回ると、いったい他の人が何を見ているのか、共通した土台が無くなってしまうことだろう。ただ、そもそも感覚なんてそんなものかもしれない。 共感覚という現象がある。共感覚者は、言葉を見て色を感じたり、音に色を感じたりする。2000人にひとりとも、2万5000人にひとりとも言われるけれど、「甘いマスク」「黄色い声」「くさい話」といった表現が一般的に使われるところをみると、共感覚的な感性は、もっと一般的にあるものともいえる。 米バンダービルト大学のトマス・パルメリ博士が、ある共感覚者にテストした結果によると、「2」だとオレンジだけど「two」だと青といったように、意味より言葉そのものによって色が違ったという。本を開いて、内容ではなく美しい色彩にしばし見とれることもあるのだとか。 あなたの隣の人が、あなたと同じ光景を見ているとは限らない。現実なんて、前提が違えばまったく違って見えるものでもある。たとえばこれから、ぼくはひとつの魔法の言葉を書きとめる。その言葉を目にしたあとでは、あなたの、このコラムへの視点だって、がらりと変わることだろう。 その、ひとこと。今日は、エイプリル・フールだ。

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