小橋 昭彦 2000年12月29日

 はやしさんが作ったからハヤシライス。冗談のようだが、こればかりはどうやら本当らしい。このはやしさん、丸善の創業者として知られる早矢仕有的(はやしゆうてき)。牛肉が大好物で、友人が訪問するとありあわせの肉と野菜のごった煮にトマトケチャップで味をつけ、ご飯に添えて出していたという。
 いまひとつ、ハッシュドビーフ語源説もある。確かにハヤシライスのソースはハッシュドビーフにルーでとろみをつけたもの。ちなみにハッシュドビーフらしき料理は、1885(明治18)年、米国人ホイットニーによる『手軽西洋料理』にビーフハッシと称して登場している(日経12月2日)。
 ハヤシライスが一般に広まったのは明治30年代。1906(明治39)年には「ハヤシライスのたね」まで登場している。東京・一貫堂が売り出したもので、ルーと肉を乾燥させた固形食品、熱湯で溶いて食べる一種の即席食品だ。
 西洋料理にご飯をあわせ、即席食品にまでしてしまう。ハヤシライスの歩みは日本の食文化の深みを感じさせる。で、語源の真相はというと、残念ながら藪の中。林さんという人の大好物だった説まである。あんがい早矢仕さんがハッシュと自分の名前をもじって命名し、気に入った林さんが毎日食べに来ていた、なんてところかもしれない。あいまいな結論も日本的でいいんじゃないかな。

2 thoughts on “ハヤシライス

  1. 日本郵船のコックだった林さんが作ったという説もありますね。

  2. ハヤシライスのルーとビーフシチューの正確な違いの分かる人いませんか?

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