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ちょっと知的な雑学&トリビア

野鳥のいのち

2001年6月06日 【コラム
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 庭先に立っていると、すうっと地面をかすめるようにツバメが飛んでいく。明日は雨かな、なんていいながら、その行く先を見る。軒下に並んだ巣、そのうちのひとつ。見上げると、巣の中から小さな声がちちちと呼びかけている。ヒナが孵っているらしい。このままでは見えないので、子どもを肩車して、赤ちゃんいる、とたずねる。いるよ。いくつ? ふたつ。2羽か、なんだか少ないな、落ちてイタチに食われでもしたのかな。
 野鳥の寿命は総じて短い。正確なところはわからないけれど、ツバメの平均寿命は、1年と1カ月ほどという。スズメが1年3カ月、マガモが2年数カ月。寿命といってもそのほとんどは弱肉強食の中で食われたり冬を越せなかったりするわけで、たとえばスズメなら冬を越して生きのびられるのはおよそ10羽に1羽ほどらしい。学習能力があって生きのびる確率が高いとされる鳥類でもこの確率。野外での長命記録としては、スズメで6年、ツバメで16年といった例も報告されているから、仮に生きのびさえできれば、長く生きられるのだろうけれど。
 つまりはそれほどに野生の世界は厳しい。平和そうに見える山里の風景も、野鳥の視点に立てばワイルドな世の中。厳しいといえば、じつはさらに大きなレベルで、世界におよそ9800種という野鳥の種の12%が絶滅の危機に陥っているという調査もある。最大の原因は生息地の破壊。
 にぎやかな巣を見上げつつ、ヒナたちの行く末を思う。思う資格があるのかな、イタチより怖い生物の一員として、と苦笑したりもしつつ。とまれヒナたちよ、来年元気で帰ってこいよ。

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5 comments to...
“野鳥のいのち”
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小橋昭彦

野鳥のページでは、まず「日本野鳥の会」へ。「Yachoo!オンライン野鳥図鑑」も便利です。「野鳥のページ」もよくまとまっていますね。「ワールド・バード・カウント」もどうぞ。ことに「絶滅に瀕した野鳥たち」など考えさせられます。野鳥の絶滅については、「BirdLife」をどうぞ。報道発表資料「世界の野鳥の12%、1186種が絶滅の危機に」も詳しいです。


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小橋昭彦

今日の没ネタ。大阪市、地下水くみ上げ規制の結果、地下水がビルを押し上げ(朝日5月1日)。温泉活用で高齢者医療費抑制(日経4月29)。コレステロール卵白が増加抑制(朝日5月8日)。マグニチュードの計算方式は何通りもある(神戸5月6日)。菜の花や月は東に日は西に、の月は満月(神戸5月6日)。


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大ちゃん

こんにちは、初めまして。
マガジンの方はもう長らく読ませていただいているのですが、メールを差し上げるのは多分初めてです。
ツバメの記事を見て、つい入ってきてしまいました。
いつもほのぼのとした書き味が気に入っています。
ところで、目の前に”今日の没ネタ。大阪市、地下水くみ上げ規制の結果、地下水がビルを押し上げ(朝日5月1日)。”の一行が入ってきました。
非常に興味のある問題なので、思わず目がいきましたが、いろんな雑誌や新聞などかなりの情報を租借されて居るみたいですね。
ご努力感心いたしました。


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harlly

 我が家の飼い猫は小鳥を捕獲するのが得意のようだ。幸いな事にまだ1度も殺さずに我が家に持ち帰ってきている。鳥たちは怪我などが無い事を確認してから、猫君に気付かれない様に外に放すが、一瞬とまどってから飛び去って行く。
 おかげで、コゲラ、メジロなど小鳥の名前がかなり解かるようになった。市民の森など緑の多い住宅地に住んでいるおかげではある。でも、もう鳥は捕まえてこないで欲しいな。


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小橋昭彦

大ちゃんさん、ありがとうございます。毎日いろいろ調べて、その結果を、自分の日常の視点からまとめているって感じのコラムです。ぼく自身、発見の連続です。

大阪市の地下水位、かつては地下30メートルだったのが、さいきんでは3メートルになっているとありました。地震の際の液状化などの心配もあり、研究中だそうです。




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 何年か前、子どもたちと遊んでいて「おじさん」と呼ばれ、それからすぐ「あれ、おにいさんかな」と訂正されたことがある。30歳になったころ。確かに、ぼく自身が10代だったころの30歳の印象って「中年」だったな、なんて思い返す。いまこのコラムを読んでいる若い人たちも、おじさんの書いた文章として読んでいるのかなあ。 それにしても、おじさんって何歳からなんだ。日本言語研究所が日本語教師らにアンケートした結果によると、「おにいさん・おねえさん」は20歳から32歳で、39歳から57歳が「おじさん・おばさん」なのだそうだ。うむむ、とするとぼくは、すでにおにいさんは卒業し、おじさんに足を踏み入れる前の、微妙な年代にいるなあ。 大人になると記憶力が鈍くなるといわれる。実感しないでもないけれど、実はこのところ、脳細胞は大人でも成長しているという観察報告がしばしば見られるようになった。従来は大人になると神経細胞は新たに生まれないとされてきたので、定説がゆらいでいるわけ。記憶力はいざ知らず、新しい用途を考えたり改善したりといった能力は70歳くらいまで25歳のころと同じ程度に保たれるともいわれる。おじさんにもまだまだ可能性はあるのだ。 そんなこんなで、日々少しでも進歩すればとメールマガジンの発行を続けている。同じどうしようもない人間ではあれ、20の頃のどうしようもない自分よりは、ちょっとだけましなどうしようもない奴になったんじゃないかと願ってもいる。 おじさんかどうかはどうだっていいや、青春は心にあるっていうのが真実じゃないかと、オジサンは思うのだよ。

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 田植のあいま、あぜ道を歩きつつ子どもとタンポポを摘む。花の後ろの外総ほう片と呼ばれる緑の部分が花に添って立っている。日本在来種らしい。 タンポポには在来種のほか、明治以降に入ってきたセイヨウタンポポなどの外来種がある。外総ほう片が反り返っているのがセイヨウタンポポとされてきたが、このところその勢力が広まっている。 貿易が盛んになるとともに、ある地域に野生していた種が他の地域の生態系のなかで広がるケースが増えている。外来生物、帰化生物などと呼ばれる動植物。ときにはその土地にもともといた種を滅ぼしてしまうこともある。そういう視点からは、インベーダー生物、侵入生物という呼び方のほうがしっくりくるかもしれない。 国際自然保護連合がこのほど発表した、影響の大きい一〇〇の侵入生物のなかにも、アリの一種からグアバのような果物の一種まで、幅広い「インベーダー」がリストアップされている。 ちなみにタンポポの場合、遺伝子分析をした結果、形からセイヨウタンポポと判断されたうちの大半がニホンとの雑種とわかったとか。たくみにニホンの遺伝子を取り込み、適応力を高めつつ広がったわけだ。どこか人間に化けて地球に侵入するSF映画のような。 ペットの猫だって、本来の生態系に猫がいないところに連れていけばインベーダー動物になる。オーストラリアの固有種は、人間が持ち込んだウサギや猫によって危機に陥ったともいう。イエネコはたくみに人間にとりいることで古代エジプトから世界に広まった。これもまたどこかSFじみている。 こうして気づいたときには、インベーダー生物がはびこり、生物の多様性が失われた世界にぼくたちは生きている。これじゃあSFというよりホラーじゃないか。息苦しいなあ。タンポポを摘む手をとめ、若葉の目立つ山々を眺める。

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