野鳥のいのち
庭先に立っていると、すうっと地面をかすめるようにツバメが飛んでいく。明日は雨かな、なんていいながら、その行く先を見る。軒下に並んだ巣、そのうちのひとつ。見上げると、巣の中から小さな声がちちちと呼びかけている。ヒナが孵っているらしい。このままでは見えないので、子どもを肩車して、赤ちゃんいる、とたずねる。いるよ。いくつ? ふたつ。2羽か、なんだか少ないな、落ちてイタチに食われでもしたのかな。
野鳥の寿命は総じて短い。正確なところはわからないけれど、ツバメの平均寿命は、1年と1カ月ほどという。スズメが1年3カ月、マガモが2年数カ月。寿命といってもそのほとんどは弱肉強食の中で食われたり冬を越せなかったりするわけで、たとえばスズメなら冬を越して生きのびられるのはおよそ10羽に1羽ほどらしい。学習能力があって生きのびる確率が高いとされる鳥類でもこの確率。野外での長命記録としては、スズメで6年、ツバメで16年といった例も報告されているから、仮に生きのびさえできれば、長く生きられるのだろうけれど。
つまりはそれほどに野生の世界は厳しい。平和そうに見える山里の風景も、野鳥の視点に立てばワイルドな世の中。厳しいといえば、じつはさらに大きなレベルで、世界におよそ9800種という野鳥の種の12%が絶滅の危機に陥っているという調査もある。最大の原因は生息地の破壊。
にぎやかな巣を見上げつつ、ヒナたちの行く末を思う。思う資格があるのかな、イタチより怖い生物の一員として、と苦笑したりもしつつ。とまれヒナたちよ、来年元気で帰ってこいよ。
“野鳥のいのち”