仲間と同人誌を作ってSF作品を発表していた1980年代、ブラックホールといえば大きな質量を持った星が最後に超新星爆発を起こし、中心核が自重によって収縮した結果できたものというのが一般的な認識だった。さまざまなSF作品の舞台として登場したし、白鳥座の方向にそれらしいものが見つかったと話題になってもいた。
題材にしたいと思ったこともある。しかし、物理学の門外漢にはリアリティを持って絵にできなかったし、それはこうしてコラムで扱おうとしている今でも同じ思いが残る。ただ、ブラックホールに対するイメージは当時から大きく変わったし、その変化にどこか時代性が感じられる気もしている。そのことを書きとめておきたいと思ったのだった。
ブラックホール候補が白鳥座X-1以外に多く見つかっていることも変化だが、もっとも大きいのは、天文学の世界に量子力学があわさって、微小ブラックホールが存在する可能性が示されたことではないか。量子重力理論である「ひも理論」が正しくて余剰次元が存在したら、大型加速器で微小ブラックホールを作ることができるとさえいう。できたブラックホールが加速器をのみこみ研究所を崩壊させ、やがて地球もなんて心配はない。理論上、生まれたブラックホールは速やかに崩壊する。加速器で生み出せる規模の粒子衝突ならすでに大気中で起こっていて、研究者たちの試算によると、年間100個くらいは微小ブラックホールが大気中で生まれているとか。思わず、空を見上げる。
ブラックホールが蒸発するというホーキングの理論も驚きだった。のみこむだけじゃなく放射もする。その前後で情報が失われないとすれば、入出力のある一種のコンピュータとしてブラックホールを利用できると研究を進めている研究者もいる。アインシュタインの一般相対性理論からはじまるブラックホールへの旅。はるか何千、何万光年の旅だと思っていたのが、一方で実験室や計算機の世界に向っていた。
ブラックホール関連では「数瞬の救命 [04.01.15]」としても取り上げました。ブラックホールの登場する作品では『ゲイトウエイ』などが思い出深いです。ミニブラックホールを取り上げた短編も雑誌で読んだ記憶がありますが、さて、誰の作品だったか。
日経サイエンスの「ブラックホールを製造する」にミニブラックホールの実現性について、また「計算する時空」にコンピュータとしての利用の話が掲載されています。一般的な解説は「ブラックホール」が入門的。
渋滞を避け 近道をしようと 迷い込んでしまった路地。困っていると ふと見覚えのある大通りに出た。「おわっ ラッキー こんな所に繋がってるんだ。」ってカンジですか?