地元の財団法人から頼まれて、地域観光を考える研究会に手弁当で参加している。いまさら従来型の観光振興でもないので、いろいろ学びつつ悩んでもいるわけだけれど、それはまたいずれ書かせてもらうとして、今回は「八景」の話。おそらく、あなたの身近にもあるのではないだろうか。国立環境研究所の調査によれば、2001年7月時点で全国に400以上あるというから。
世界大百科事典によると、日本で初めての八景は近江八景だという。比良の暮雪、矢橋(やばせ)の帰帆、石山の秋月、勢田の夕照、三井の晩鐘、堅田の落雁、粟津の晴嵐、唐崎の夜雨がそれ。観光名所というより、画題として選ばれたものだ。
そのルーツは中国の瀟湘(しょうしょう)八景で、11世紀から12世紀頃に確立したもの。こちらは江天暮雪、遠浦帰帆、洞庭秋月、漁村夕照、煙寺晩鐘、平沙落雁、山市晴嵐、瀟湘夜雨だから、近江八景がそのまま画題をなぞっていることがわかる。現在全国にある八景のうちにも、たとえば東京の深川八景のように、木場の落雁や塩浜の秋月などとこの画題に添ったのもあるし、画題までは踏襲していないところもある。
そもそもなぜ「八」なのかも気にかかるけれど、こちらは聖数の起源もからんできて定かではない。中国では八卦などと言われもともと「八」が重んじられてきたし、日本でも「八百万」「八千代」など、八はめでたいものと考えられてきた。四方位の倍として「八」が尊ばれてきたともいわれるから、風景と「八景」は方位を軸に相性がよかったともいえる。
わがふるさとで八景による観光振興をしようというわけではない。八景について思いを馳せるにつけ、四季折々に添って心に響く風景を切り出そうとした姿勢に、現在の「名所」がなんだか薄っぺらにも感じ、背筋が伸びる思いがするのだ。観光とは、地域の生活と季節と自然、人の心を守り育てていくところにあると、研究会では言っている。
コラムで触れた国立環境研究所による調査は、「日本に伝わった景色の見方“八景”」をご参照ください。
なお、本年は今回をもちましてお休みいたします。30日の更新はいたしません。新年は6日の更新をお休みし、コラムは13日よりお届けする予定です。
あっと言う間の一年間でしたが小橋様には休む間もない長期にわたる執筆でご苦労様です
仕事をしていればなんでもないことなのですが、趣味から義務へと替わってきたとき辛さが出ますよね。そんなときいかがなさいますか
70年間、相変わらずのいい加減生活で過ごしてきました。
新年は古希なので小学校の同窓会を予定しております。
何かにつけて刺激を頂ありがとうございました
丁度60年経ちバブル崩壊から政治、経済、社会と大転換の時期にあたるのではないかとふと思いました。
新年は無理なことは避け、中味の充実を図ることで平穏無事に過ごすことを心がけます。
新年も張り切ってよろしくお願いしますね
小橋さん、橋本大也さんの紹介で渋谷でのパーティでお会いしたあと、ご無沙汰しています。
数字の吉凶について上海、台北、NYのメル友に質問して回答を得たことがあります。
上海、台北とも数字の「八」は発音が、幸運を意味する言葉の発音に近いので縁起をかついで好まれるそうです。
数字の「四」は死や失う意味の発音に近いので忌み嫌われるそうです。
日本と違うのは、数字の「六」はものごとがうまく行く、数字の「九」は発音が高揚するを連想させるので好まれるそうです。
とくに台北では結婚の祝いに赤い袋に紙幣を6枚入れて渡すのだそうです。
米国では、幸運の数というのは個人のジンクスはあっても共通の数はないそうです。その一方、13 や 666 が忌み嫌われるのは事実で、ビルの13階はスキップして存在しなビルが多いそうです。