ざつがく・どっと・こむ
ちょっと知的な雑学&トリビア

「キレる」の科学

2001年4月03日 【コラム
Share...Share on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

 抗うつ薬として米国で大ヒットした「プロザック」。世界で2000万人が服用したとも言われるその薬には、セロトニンの働きを助ける作用がある。
 セロトニンというのは脳内物質のひとつで、これが減ると片頭痛を起こしたり、攻撃的になったりするとされる。ハーバード大学のダリン・ドーティー博士によると、「キレやすい」人の脳内には、セロトニンを受けとめるたんぱく質がふつうの人より少ない傾向があるという(朝日3月9日)。
 オハイオ州立大学のランディ・ネルソン教授は、セロトニンと遺伝子の関係を研究している。NOSと呼ばれる一酸化窒素合成酵素の遺伝子を働かなくしたマウスは攻撃的になるけれど、こうしたマウスも、セロトニンの働きが落ちている。
 上智大学の福島章教授の調査も紹介しておこう。脳と犯罪の関係だ。大量殺人を犯した人の8割以上に、脳の形態異常が見られるという結果。
 こうして「科学的事実」を並べると、なんだかぼくたちが「キレ」ちゃうのは、脳内物質や遺伝子や脳の形態異常のためのように思えてしまう。でも、勘違いしちゃいけない。セロトニンの働きが落ちたからといって必ず暴力をふるうわけじゃないし、脳に形態異常がみられても、ほとんどの人は平和に日々を過ごす。
 ネルソン教授のもとには、依頼人の遺伝子を調べてほしいという弁護士が訪れるという。NOSの遺伝子に異常が見つかれば、本人ではなく遺伝子に責任がある、と裁判で主張しようとしているらしい。
 もちろん、ネルソン教授は依頼をすべて断りつづけている。遺伝子が人生をあやつるわけじゃない。脳の形状が行動を決めるわけじゃない。それは一因子であるかもしれないけれど、ぼくたちはそれ以上のなにかを持っている。

Share...Share on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

One comment to...
“「キレる」の科学”
Avatar
小橋

怒りと脳内物質については、「進化研究と社会」「さまよえる脳」「PHYSIOLOGY of BEHAVIOR」「人はなぜキレるのか?」「怒りと脳内物質」などをご参照ください。




required



required - won't be displayed


Your Comment:

 編集ソフトの説明にはカラムの調整なんて表現がされているから気づかなかったけれど、そう、縦列を意味するカラムと、この小文のようなものを指すコラムは、もともと同じcolumnだ。 コラムの歴史は古く、1751年に英国の新聞ロンドン・アドバイザリー・リテラリー・ガゼットが連載を開始したのが最初。その3月11日は現在もコラムの日とされている。新聞紙面上に縦の欄を利用して掲載されていたので、コラムと呼ばれていたわけだ。 ニュースではない、かといって堅い論調でもない、コラムはその後も一定した人気を得る。それが新聞の目玉商品として発達したのは、1920年代のアメリカ。タブロイド新聞の全盛期で、芸能界内幕のゴシップなどを書いたコラムがシンジケートを通じて各紙に配給・転載され、著名コラムニストを生みもした。その後30年代からは政治論評を展開するコラムニストが人気を得る。 そういえば、ギリシア建築に見られるような美しい円柱もやはりcolumn。インターネットを使って、誰もが文章を公表できる時代になった。天に向かってすっくと伸びる、そんな志をもったcolumnが建ち並ぶ世の中になるとすてきだと、自戒を込めて思う。

前の記事

 日本に初めてポストが設置されたのは1971(明治4)年のことだ。名称は一定ではなく、書状集め箱などと呼ばれたりしていたという。翌年には角柱型の木製ポストが登場。黒塗りで、表に大きく「郵便箱」。これをはじめてみた人が「たれべん」とよんで公衆便所と勘違いしたという逸話も残る。 ポストと呼ばれるようになったのは、POSTの文字が投函口に書かれていたから。ちなみに海外ではフランスでは1653年に、イギリスでは1852年に登場。 ポストが鉄製になるのは1901(明治34)年のことで、すぐ赤色のものもつくられ、1908年から、正式に丸型の鉄製赤色と制定される。それまでは緑色に塗られたものなどもあったらしい(朝日3月10日)。 現在見られるような、角型のポストが見られるようになるのは、1950年代のこと。郵便物の増加に対応してのことだけれど、形のうえでは先祖がえりともいえる。丸型のポストは現在でも約6000個が現役として残る。 各地にはそれぞれの土地柄をうつしたポストや記念等のポストもあるけれど、正式なポストはその形状を公示されることになっており、現在は14号までの14種類。 ポストの正式名称は「郵便差出箱」という。「差し出す」は郵便局に対してか相手に対してか。相手にとすれば、その言葉のやさしさにあらためて気づかされる。電子メールを差し出す、なんていい方はしなくなった。 いま、郵便差出箱は全国でおよそ17万個。そのそれぞれで、今日も、心をこめて差し出された手紙が、かさっと音とたてて吸い込まれている。

次の記事