ざつがく・どっと・こむ
ちょっと知的な雑学&トリビア

2004年9月02日 【コラム
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 かすんだ山を見ながら、黄砂かと頭をよぎり、いや夏場にはないかと思い返す。多いのは春。白色つながりで枕草子の春の情景を連想することが多いのだけれど、近年の調査の結果をふまえるなら、のどかに構えてもいられない。タクラマカン砂漠やゴビ砂漠で巻き上げられた砂は、中国大陸を横切るうちに大気汚染物質を伴って運んでいる。
 砂塵の旅は長い。1998年4月19日に中国内陸部で巻き上げられた黄砂を追った研究者は、同じ25日にアメリカ西海岸に到達したことを確認している。ダーウィンも注目したサハラ砂漠の砂は、ヨーロッパに砂塵をもたらし、大西洋を渡ってカリブ諸島へ、そして南米大陸へ。ただしこの場合、サハラの塵はアマゾン盆地に栄養分を補充する役を担っている。
 塵といえば、ハウスダストの研究も進んでいる。屋内でもっとも塵が多い場所として、米国環境保護庁のランス・ウォレスは意外な場所を指摘する。カリフォルニア州の住民に小型モニターを装着して測ってもらったところ、室内や屋外に設置した他のモニターより高い数値を示したのだ。住民自身こそ、塵をまきちらしていたわけ。ウォレスはそれを「パーソナル・クラウド」と呼んでいる。
 パーソナル・クラウドの正体ははっきりしない。1割は自分の皮膚のかけらだとわかっている。1日にはがれるおよそ5000万個のかけらのうち、70万個くらいを自分で吸い込んでいる計算。その他には、糸くずやアロマキャンドルの煤、2キロほど離れたハイウェイからの排気ガス。
 塵は宇宙からも降っている。平均すれば1平方メートルあたり1日1個とか。どこの家のカーペットからも見つかるというから、パーソナル・クラウドにも紛れ込んでいるかもしれない。ぼくたちは日々彗星の、あるいは小惑星の、もしかすると月や火星の塵を口にしつつ生きている。そして何十年あるいは何百年か後には自らも塵となり、さらに何十億年か後、この地球も宇宙の塵となる。やがてはそれがどこかの星に舞い降りるだろうか。

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2 comments to...
“塵”
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小橋昭彦

小さな塵の大きな不思議』がおもしろいです。ご興味のある方はご一読を。実は塵とひと言で言っても大きさもいろいろで種類もさまざまです。たとえば「日本エアロゾル学会」の解説をご参照ください。エアロゾルについては「日傘効果 [2001.01.11]」として昔触れたことがありました。コラムで紹介した黄砂の旅については「The Asian Dust Events of April 1998」が出所。「Satellite Analysis of Asian Dust Events」もご参考にどうぞ。その他黄砂については「黄砂はなぜこの時期にやって来るの?」「東アジア域の黄砂・大気汚染物質分布予測」「黄砂情報のページ」などを参考にどうぞ。

文中に紹介したハウスダストの研究は「Research Gets Personal as Volunteers Wear Pollution Monitors」の記事写真にあるようなモニターを利用するようです。「Correlations of Personal Exposure to Particles with Outdoor Air Measurements」あたりを参考にどうぞ。それから宇宙からの塵については、「Stratospheric Dust」のデータベースをどうぞ。あとまったく関係ないけど、SFファンとしては『宇宙塵』だな、やっぱり。


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てつろ

私は塵といえば、A・C・クラークの「火星の砂」を思い出します。これも塵ですよね。




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Article: Language may shape human thought?| New Scientist
Hunter-gatherers from the Piraha tribe, whose language only contains words for the numbers one and two, were unable to reliably tell the difference between four objects placed in a row and five in the same configuration, revealed the study.
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The researchers found that cockroaches can’t walk over ramps and barriers without using their brain. This means that to climb up stairs, robots will need a brain.

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