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ちょっと知的な雑学&トリビア

涙はなぜ

2003年10月09日 【コラム
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 どうした会話の流れだったか、5歳の息子が「ぼくも泣くことあるで」と言う。どんなときと尋ねると、「お父さんがこわいこと言うたとき」「ふんふん」「それからな、うれしいときも泣くで」。小さなうちから嬉し涙を知ってるんだな。人情の機微が誘うちょっと高級な涙と思っていたけれど。
 涙はなぜ流れるのだろう。そんなことをぼんやり考えていた。涙には3種類ある。ひとつは毎日150から300グラム流している、眼を守るための基礎的な涙。もうひとつは、タマネギをむくと出るような反射性の涙。タマネギの涙は化合物が誘うものだが、さいきんではそれをつくる酵素が発見され、味がよく涙の出ないタマネギが作られる見通しになったという。加えて、ぼくたちに特徴的な涙として、感情による涙がある。
 ウィリアム・フレイがタマネギによる涙と映画による涙を比較、成分の違いを測定している。それによると、感情によって流された涙は、ストレスに関係する副腎皮質刺激ホルモンを多く含んでいた。涙を流すと心まですっきりするのは、こうした事情もあるらしい。もっとも、大泣きになればあふれる涙は涙小管から鼻涙管を通って鼻腔へと流れ、鼻から出ていく。それをすすって体内に戻す人も多く、ストレスホルモンの除去方法としては少々効率が悪いけれど。
 感情の涙はプロラクチンの値も高い。母乳を出させる女性ホルモンであることから、フレイは女性が泣きやすい理由をここに求めているが、リラクセーション法を知っている女性ではプロラクチン値も低くなるので、そう単純なものでもないらしい。
 ある種のうつ病患者や、深刻な育児放棄を受けた子どもは、涙を流さないという。涙の持つ、人に訴える力が信じられないほど傷ついて。赤ちゃんが親の抱擁を求めて泣くように、涙は人を信じるメッセージ。泣くことを、恥じることはない。

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18 comments to...
“涙はなぜ”
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小橋昭彦

人はなぜ泣き、なぜ泣きやむのか?』を参考にしました。「涙の役割」「なぜ、泣くと涙が出るのか?」「涙の話」「涙のわけを聞かせて」などにていねいな解説があります。涙は、テレビ材料としておもしろいのかな、「男はなぜ女の涙に弱いのか?」「人はなぜ泣くのか?」なども具体的でおもしろい情報です。


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ぽてちん

いつも読ませていただいてます。詩的ですよね。いつもほっとさせて貰ってます。


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よう

43歳になりました
最近特に「涙もろい」自分に気づきます。
TVの何気ない番組に負けてしまったり・・
年齢と涙腺は関係あるのかしら?

女の涙が「武器」なのでは?
(^^)


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松本秀人

ヒューマノイド(人間型ロボット)が出てくるドラマなどでは、“泣いている!”ということが、“人間になれた(本物の人間により近づいた)”という象徴として描かれることがよくありますよね。
やっぱり涙は心の汗なんでしょうか。


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やあないん

「嬉しいときでも泣くで」
そうですね。うん、うん、うん、・・・。
そんな想い出を沢山作っていってください。


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三朗

確かに涙もろくなる年齢ってありますね。
心に余裕が出て来て、自分の辛い体験や他人の痛みが分かってくる頃、小説を読んだり映画を観ながら、始めは熱くきついものが込上げてきて、やがてぽろぽろと涙が流れます。
残念ながら嬉し泣きは最近ありません。
素直に喜べないのか、昔ほど嬉しくないのか、心が冷えてきたのかも知れません。でも哀しいことには同情できるのですから、干からびた訳でもなさそうです。


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ゆうこ

子供の頃、泣かない子でした。心のガードが堅かった
んだろうと思います。
子供を生んでから、泣くようになりました。喜びや悲
しみが強烈な実感になったからかもしれません。
40を過ぎると、もうダメですね。TVでも映画でも、す
ぐ泣けてきます。
子供の学校の合唱祭など、我が子の出番ではなくて
も、なんだかやる気のないコーラスでも、切なくて、
涙があふれてしまいます。
そんな自分は心地いいし、歳をとるのも悪くないなと
思ってます。


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子供のころ よく泣いていました。病気ばかりしていて、死ぬことへの恐怖がありました。20才まで生きればと言われていたのに、倍以上生きました。しかし、人生半ば近くなってきた今、戦争の悲劇やアフガンなどの地雷の悲劇を見ているとふと大粒の涙がでてきて、自分に何かできなることはないかと思ってしまいます。これから先の人生、目標を達成したときみたいなうれし涙が増えることを期待したいと思います。....


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相良無意味

たとえば、眠い時のあくびと、退屈な時のあくびと、移ったあくびでは成分が違ったりするんでしょうか?

……ホルモンは気化しませんか。うーん……


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へぇ0

 涙がそうなるのかわかりませんが…。
あくびは移ってきますねぇ。

何でもかんきょうがちかよっているとそうなりやすいとか
って 聞いた話ですけど…。

男は泣かずに…。

って言われた人も多いでしょうねぇ

言われなくっても 泣きづらい世の中です


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よう

嬉し泣き

そうですねえ、最近は全然有りません
嬉しいと思う事自体が無くなったような・・・

ゆうこさんへ
私も先日運動会で小6の騎馬戦や組体操を見ながら
目頭が熱くなって来ました。
そういう自分を
「まだ大丈夫!」と思っています。


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R . O . C

僕の父は、「年をとると涙腺がゆるくなるなぁ」というようなことを申しておりました。
涙腺がゆるくなるってわかるようなわからないような現象ですね。
年をとると顔にしわができるようなものなのでしょうかね。細胞の老化現象と言いますかなんと言いますか。

ちなみに僕は、激昂したときに涙が自然に出てきます。この意味が今回のお話でわかりました。
最近悔し涙と悲し涙しか流してないかもしれないなぁ…ポジティブシンキングでいきたいものですね。


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みどり町

涙の話、興味深く読みました。思春期を迎えたとき映画を見ながら涙した事を今も覚えています。ホルモンの影響が大きいようですね。81歳の誕生日を今日迎えた私です。


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テラサン

私も涙もろくなってきたなあ!と感じます。
特に感動すると涙もろくなるようです。
でも恥ずかしいことではなく、感動出来る心があると言うことだと言い聞かせています。
同僚で凄い人(?)がいます。
会議で部下を納得させる時に涙を流せるのです。
会議が終わって幹部だけになるとペロッと舌を出します。
驚くばかりの男ですが、こんな風にはなりたくないものだと思います。
世の中には色んな(信じられない)奴がいるものだと思います。


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タニチュウ

小学校のころはなかったのに今(高校生)の方は映画を見て泣きそうになることがよくあります(;;)


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あいあい

男の人の書くものって、何でこんなに
ロマンチックで、ウェットで、優しいのだろうと、思います。
女性が書くと、こんなふうにはならない気が。


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MAX

最近「オレって涙もろいから」という男性が急増中のような気がします。
みんな素直になったから??

男も女も、大人も子どもも、泣きたいときは泣こうよ。
我慢してもカッコよくないから・・・。


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小橋昭彦

ウィリアム・フレイは神経生理学者で、なんでもアルツハイマー研究施設をかなり初期に設立した功労者のようです。そのサイト内、

http://www.alzheimersinfo.org/grief_loss.htm

として、まさに「泣きたいときは我慢するな」という主旨の文章を寄せています。『涙?人はなぜ泣くのか』という書籍の邦訳もあります。




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Your Comment:

 寺田寅彦記念館から高知県立文学館に移動、記念室を訪れる。腰をおろして見たのは、彼が行った実験を再現した数分間のフィルム。なかで、生物の模様をとりあげた巻が心に残った。飼い猫の模様を弟子に写させ、胚分割の割れ方と比較、模様はそこに由来しているのではとし、さらに研究室前のコンクリートの割れ目との類似も指摘している。この視点は弟子の平田森三に受け継がれ、キリンのまだらは皮膚の割れ目という仮説になった。 寺田寅彦が没して約20年、数学者アラン・チューリングが反応拡散系という説を提出する。化学反応によって安定的な繰り返し構造を作ることができることから、生物の模様も何らかの波ではないかと考えたのだ。そして1995年、日本の研究者によってゼブラフィッシュの模様が反応拡散系のシミュレーションに一致することが見出される。色素をコントロールする化学物質が、縞模様を描きながら拡散した結果ではないかと。 トラ柄のシマウマがいないように、模様を決めるにあたっては遺伝子の役割もあるには違いない。ただ、たとえば2002年にはじめて生まれた猫のクローンは、性格だけではなく、模様もまったく違っていた。細かい模様まで遺伝子情報で決まっているわけではないのだ。遺伝子は、化学反応式でいう反応係数に影響を与えていると考えればいいという。 寅彦の時代、生命科学に物理学を持ち込むのは冒険だった。平田森三の説は今では否定されている。それでも、皮膚の模様が化学反応で説明できることを知ったら、彼らはどう思うだろう。見過ごしがちな日常に科学をみた寅彦の眼。彼には、この世のすべてが科学の織り模様だったろうか。そんなことを思いつつ、文学館を出る。高知城天守閣の方角から生バンドの演奏が風に乗って聞こえてきた。それもまた音の波。大通りは日曜市でにぎわう。光の波のなかを、音の波がたゆたっている。ぼくは波間に身体を滑りこませる。

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 やってしまった。テーブルから落ちた茶碗は、のぞきこんだときには砕けている。ゆっくり割れてくれれば手の施しようもあるのに。調べてみると、割れ目はほぼ音速で広がるとあってはっとする。そうか、音が振動の波であるならば、外部からの衝撃が伝わるのも同じ理屈だ。空気中はもとより、固体中はいっそう速く、追いつくはずもない。 平田森三博士による割れ目の法則というのがある。分岐は二股にはなるが三股にはならないなどとするものだ。周辺的な研究に思えるけれど、メロンの網模様はひび割れだから、メロン農家は日々苦心しているところだし、商品の品質管理部門にとって、壊れ方は重要なテーマだろう。スペースシャトルの事故究明では破片の形状も重要な情報だった。割れ目もあなどれない。 カリフォルニア工科大のデビッド・スティーブンソン教授の小論文を思い出す。地殻に幅30センチ、長さと深さが数百メートルの亀裂を作り、地球の中心部を探ろうというもの。割れ目には探査機を包んだ溶けた鉄を大量に流し込む。すると鉄は重力に従って沈み始め、やがて中心核に達するという。膨大な予算が必要だし、数百メートルの割れ目を作るには核爆発が必要になるともいい、実現性は低い。とはいえ、壮大な割れ目ではある。 床に落ちた茶碗のかけらは、乱雑に見えて、ある法則によっている。亀裂は力の伝播とともにまばらになるから、破片は大きくなる。結果として、べき乗則と呼ばれる法則にしたがって、さまざまな大きさの破片が分布することになる。惑星が衝突してできたとされる小惑星群でもそれは同じ。観測の結果からは、質量と数の間にべき乗関数で表現される関係があることが知られていた。最近では小さな破片では事情が違うことがわかってきているものの、割れ方の基本は、大きくても小さくても同じ。台所の隅で茶碗のかけらに伸ばす手が、火星の向こうにつながっている。

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