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ちょっと知的な雑学&トリビア

太陽からの風

2003年1月22日 【コラム
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 宇宙天気予報が現実味を帯びてきたことを書いたのは、1998年、コラム執筆を始めて1年目の夏だった。いまではインターネット上で提供されているこの予報は、日々の太陽風と地球磁気圏の様子を知らせている。
 太陽風というのは太陽から出る粒子の流れのこと。秒速300から800キロメートル、地球までおおむね3日前後かかる計算だ。地球の磁気圏と衝突した太陽風は、地磁気を乱してオーロラを見せたりするわけだが、激しいときは磁気嵐を起こす。
 磁気嵐が発生するとなれば、宇宙飛行士は船外活動を控えて放射性物質を浴びる可能性を減らし、人工衛星も姿勢を変えて防御しなくてはならない。ふだんぼくたちは、地表からおよそ8万キロ上空までを覆う地球の磁場によって守られている。静止衛星の軌道は赤道上空約3万6000キロメートルだし、スペースシャトルはせいぜい高度400キロ。いくら宇宙といっても、そこはまだ宙空と呼ばれる地球磁場圏内なのだ。
 さて、地球に磁場があるのは、地球が磁石になっているからだ。ただし地球内部は高温で磁力を帯びることはできないので、永久磁石をイメージするとちょっと違う。磁力発生の原因として有力視されているのが、流体ダイナモ説。地球の外殻部にある、高温になって液体のように流れている誘電性流体が、磁場を生んでいるというわけ。
 地磁気は、1日のうちでも変動する。ぼくが生まれた日を調べてみると、地磁気的にはきわめて静穏な日だったらしい。寒い日で部屋を暖めたり産婆さんを呼んだりわが家ではたいへんだったろうが、それをとりまくこの地球の磁場はなべてこともなし、平穏に過ぎていたというわけだ。こういう巨視的な視点と小さな視点の出会うところが好きで、それを捜し求めつつこの4年間書き続けているのだったと、あらためて思う。本日、太陽風速毎秒569キロメートル、地磁気は平穏なり。

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4 comments to...
“太陽からの風”
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小橋昭彦

太陽風と地磁気が出会う宇宙環境。「宙空環境研究センター」「平磯宇宙環境センターワークショップ報告」「宇宙環境科学」「水田孝信研究紹介」などをご参考にしてください。実際に太陽風を持って帰って調べようという「GENESIS」計画も進められています。宇宙天気予報の必要性については、「太陽で何が起こっているか」「太陽のSの字は危険のしるし」「宇宙天気システムグループ」のミッション説明あたりがわかりやすいです。実際の宇宙天気予報は、「太陽地球環境情報サービス」「SpaceWeather.com」で提供されています。


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小橋昭彦

当時からは少しスタイルが変わってきているので恥ずかしいのですが、1998年8月5日のコラムを再掲載しますね。梅雨が明けたのどうのと話題を呼んでいた年でした……

宇宙天気予報

 京都南部の明日は晴れときどき曇り。山沿いでは雷雨となる見込みです。次に、衛星軌道の明日は太陽風が強まるでしょう。宇宙飛行士の皆さん、宇宙線被ばくにご注意ください。
 まあ京都と並ぶことは無いと思うけれど、こんな宇宙天気予報が現実味を帯びてきた。郵政省が来年度から宇宙環境監視衛星の研究に取り組む方針を決めたのだ。国際協力で進められている宇宙ステーション時代を見こしてのこと。
 太陽からコロナガスが大規模に噴き出すとX線の放射量が増え、宇宙飛行士の被ばくの危険が高まる。高エネルギー粒子線によって衛星が破壊されたり、それが地球の電離層にあたって磁気嵐が発生し、大規模な通信障害が起きたりもする。これらの問題に対処しようというのだ。
 宇宙天気予報を支える衛星として考えられるのは、太陽表面や太陽風を観測する太陽定点監視衛星と、磁気嵐を観測する磁気圏プラズマ・イメージング衛星。
 何年か後には宇宙飛行士たちが宇宙天気予報の的中率を話題にしたりするのだろうか。梅雨明けの時期をめぐってにぎやかな青い惑星の島国を見おろしたりしながら。


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青山 憲太郎

太陽から出る粒子の流れは、約10年周期の太陽活動に影響されている様ですが、アマチュア無線を趣味にしている者にとっては、電波伝搬が悪くなり、大袈裟に云えば死活問題です。太陽活動のサイクル23が下降期には入り、今は次のサイクル24を待ちわびて”冬眠期”に入っています。そう言えば、ある経済学者は、世の中の景気は、太陽活動のサイクルに影響されていると・・・・。そうか、これから景気が悪くなるには、太陽活動の影響ですかね?


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松本秀人

「太陽風を帆に受けながら、太陽をぐるりと廻ってくる」という壮大な“宇宙帆船レース”構想なんてのもありましたよね。




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 市販の方位磁石を見ていると水平に思えてしまう地球の磁場。実際には沖縄で約37度、帯広で57度強下を向いている。これがちょうど垂直になる地点がいわゆる磁極。これは北極点や南極点とはずれていて、この50年ほどの間にでも緯度にして10度くらい動いている。現在の北磁極は北緯80度近辺、南磁極は南緯70度近辺だ。 地磁気変化のなかでもっとも大きなものは、極性の反転だろう。世界に先駆けて反転の事例を指摘したのは松山基範博士だった。その後の研究によると、地磁気の反転は平均すれば20万年ごとに起きていて、これまで知られているだけでも約1000回、1回おおむね1000年から1万年かけて起こっている。 気になるのは次の反転だが、予測は難しい。最新の反転が78万年前と聞くとそろそろの思いも抱くが、5000万年間反転しなかったこともある。ただ、じつは過去150年で地球の磁場は急激に弱くなっている。このまま弱まると、1000年後には磁場が消えてしまう計算。これは極性反転への過程なのかもしれない。 ハリウッドではさっそく磁場消滅をテーマにしたパニック映画を作ったようだが、さて極性反転の影響はいかほどか。過去の極性反転と大規模な種の絶滅との間に相関関係はなく、生物学的には反転を乗り越えるように進化してきたともされる。ただ、いわゆる生物学的以上に過剰なモノを生んできた人類のこと、それをふまえると心配もただ杞憂と言い切れない。なかにはハリウッド流に核爆発で磁場反転に歯止めをかけようなんて、ある種のパニックに陥る人もいるのだろうか。 個人的には、ぼくたちが千年単位の地球変動の中にいるという考えは、むしろ心を開放してくれる。現在の状態はけっして永続的ではない。だからこそいまこの大地をいつくしみ、小さな今日を積み上げていこうと、そんなことを考えもしたのだった。

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 夕焼け小焼けで日が暮れてとうたったのは中村雨紅。子どもの頃、夕方になるとしばしば思い出したものだった。烏と一緒に帰りましょうと歌うときには、ほんとうに夕空にカラスが飛んでもいて。カラスは日没30分前くらいの明るさに相当する、照度10000ルクスくらいになると家路につき始める。 気になるのは、帰る先はどこかだ。山岸哲博士の『オシドリは浮気をしないのか』を読んでいて、答えに出会う。カラスは、繁殖期こそ自分の巣の傍で寝泊りすることが多いのだけれど、冬の期間は、集団で眠るねぐらに帰る。それこそ何千羽と集まってきて、眠る。たいていは竹やぶで、一羽が竹の先端にとまる、すると少し竹がしなる、しなってできたとまり場にもう一羽がとまる、またしなる、そこにまたとまる、そうして何羽もとまってやすむ。 その集団ねぐら、山岸博士が調べた長野県の場合、わずか7箇所なのだという。長野県中の、正確にはカラスに県境は関係ないから隣県からもだけれど、カラスが夕方になるとわずか7箇所のねぐらに帰ってくる。季節の風向と重ね合わせると、疲れた体を追い風にのせて、ということらしい。そんなわけだから、7箇所に集まるカラスを数えれば長野県のカラス人口が出るわけで、1962年当時のそれは、およそ1万5000羽と推定されている。 山岸教授がこの発見をしたのは、学生として信州大学に学んでいた頃。特別な手法があったわけではない。夕方になると長野県下のあちらこちらに出かけ、自転車やオートバイを使って、ねぐらに向かうカラスを追いかけ、行き先をつかむ。その後山岸教授は田舎の中学校の理科教師として赴任、鳥の生態の研究を続け、京都大学教授などを経て、山階鳥類研究所の所長として活躍。カラスとともに家路についた日々の情熱を持ち続けることは貴い。

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