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ちょっと知的な雑学&トリビア

冬眠

2002年12月09日 【コラム
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 冬眠をする哺乳類はあんがい多く、約4000種のうち200種ほどがするとされている。コウモリやシマリス、ネズミなどの小動物が多いのは、体重に対する体表面積が多く、エネルギーが失われやすいからともいう。
 大型の哺乳類ではクマの冬ごもりが有名だが、それを冬眠と呼ぶかどうかは議論が分かれるところ。体温は31度から32度と平常より6度ほどしか下がらないし、雌は冬眠中に子どもを産む。冬眠中は飲まず食わずで、体重は3、4割減る。うらやましいことに皮下脂肪が減るだけで、筋力、骨重などはほとんど変わらない。おしっこもしないが、腎臓は働いており、尿毒素がたまることはない。
 こうしたスタイルをクマ型とするならば、シマリス型は本来の冬眠。体温は通常の37度前後から6、7度まで下がる。1分間の心拍数は10回以下、呼吸数は5回以下。平常時の心拍は300回から400回、呼吸は約200回というから、いずれも30分の1以下に減っている。必要な熱量も減るから、冬眠中は本来の1日分の食べ物で100日分がまかなえる計算。
 三菱化学生命科学研究所の近藤宣昭さんらによると、シマリスの血液中には、冬眠に関係するHPというたんぱく質があるという。冬眠に入る前に減り、目覚める前に増える。室内で飼っているシマリスは冬眠をしないけれど、HPの増減はあり、減った時期に気温の低い部屋に移すと冬眠に入る。逆に、減っていないのに寒い部屋に移すと死んでしまうのだとか。
 寒い冬をやりすごす冬眠があるなら、乾燥する夏をやりすごす夏眠もある。ヒガンバナのような植物も夏眠するが、身近な生物ではカエルやカタツムリにも。寒ければ眠る、暑くても眠る。自然に合わせた生物の知恵が、あくせくした日々のなかで、ちょっとうらやましく思ったりもしている。

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6 comments to...
“冬眠”
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小橋昭彦

文中、近藤宣昭さんの研究グループは「冬眠制御研究ユニット」を、著書『冬眠する哺乳類』もあります。その他冬眠については「冬眠」をぜひどうぞ。「シマリスの冬眠」がわかりやすく書かれています。「樅木勝巳博士」の研究も参考になります。あと、総合学習で調べたのかな、「動物の冬眠」なんてたいしたものです。


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moon

いつも楽しいお話有難うございます。月曜日と木曜日は楽しみにしていて、自分のファイルに保存しています。
配信していただいてからの内容で、一番感動したのは「長い実験」の話でした。一滴が何十年もかかるという、まさに、夢みたいな話には驚きでした。毎回、「ヘー」とか
「ホー」とか、感心してばかりです。
本が好きで雑学の本もたくさん読みましたが、また、新しい知識に触れて嬉しいです。これからも末永く続けてください。


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まみこりんご

「それでは
1月から3月の間は冬眠入りますので
後よろしくお願いします。」
とか言って、会社休めたらよいのにな。。(笑


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まさ

こんにちは!いつも楽しく拝見しています
冬眠に反応しました
私はリハビリの仕事をしているのですが
動物の冬眠と人間の寝たきりはどう違うのでしょう
か?冬眠後は筋力低下と関節拘縮は起きませんか?
良い文献がありましたら教えて下さい


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小橋昭彦

まささん、ありがとうございます。たとえばクマは、冬眠の間は皮下脂肪からエネルギーを補給します。筋力などはそのまま保たれるそうです。


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まさ

そこなんですよね
筋力低下しないメカニズムが
人間に応用できれば
「寝たきり」は減らせるのですが、、、




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 メコン川に生息する大ナマズが生存の危機にあるという。貨物船の航路整備のため川底の岩場が次々に爆破され、産卵地が減少。写真を見て驚いた。大きいどころではない。体長2メートルあまり。体重は300キロにもなるという。なるほどこれなら地震も起こせると、妙な納得をしたものだ。 それで気になって地震とナマズの関係を調べてみたが、これがよくわからない。大地の下で何かが動いて地震が起こるという伝承は、世界でもさまざまなバリエーションがある。それが蛇だったり亀だったり魚だったり、はたまた柱だったり交わる男女の神だったりする。仏教系の流れでは、世界の中心たる須弥山(しゅみせん)を巨魚が載せているという伝承もあるので、その影響もあるだろうか。 鹿島神宮には、地震を起こさないようにナマズをおさえている、要石(かなめいし)がある。じつはこれ、江戸時代までは龍をおさえていると伝わっていた。もともとは龍で、それが江戸時代に諧謔かあるいは地震のときナマズが動いたという身近な目撃例が重なったかでナマズになったのか。 もちろん、現代ではナマズが原因とは信じられていない。新しいキーワードとして注目されているのは「アスペリティ」。地震の原因は大地をのせたプレートとプレートがずれることと言われるが、このプレートの境界で、ずれずにくっついている部分をいう。これがたまりにたまって、最終的に一気にずれることで大きな地震となるのだと。 アスペリティ周辺では、地震波を出さないようなゆっくりした断層の動きがあると考えられていて、ゆっくり地震とも呼ばれる。観測技術の向上で、このわずかな揺れも観測できるようになった。それを通してアスペリティの規模を知れば、地震の理解に役立つと期待されている。 95年1月17日、あの朝の記憶は今も新しい。なまずからアスペリティへ。研究が進む一方で、われわれ一人ひとりの自覚も欠かせない。

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 ハインラインに『夏への扉』という作品がある。恋人も仕事も失い、失意の中で冷凍睡眠によって未来に目覚めた主人公。甘くせつない物語で、今もSFのオールタイムベストに必ず入る。ここで登場する冷凍睡眠は、名前の通りコールド・スリープ。人間を冷凍して未来に蘇生させる。 冷凍冷蔵庫が普及したこともあって、多くの人の脳裏にある人工冬眠のイメージはこれに近いのではないだろうか。しかし、精子の冷凍保存こそ実現しているけれど、人間の身体を冷凍保存することは、現在の技術ではできない。冷やすと細胞の中の水まで凍り、膨張して細胞膜を破るのが一番の問題。精子冷凍の場合は、グリセリンを不凍液として利用しているのだが、人間の身体のような複雑な細胞集団になるとそうはいかない。 映画『2001年宇宙の旅』には、乗組員たちがカプセルに入って目的地まで眠るシーンがる。あれはコールドスリープではなく、ハイバーネーションと表現されている。冬眠だ。心拍も呼吸も、ゆっくりとではあれ続いていた。確かに人工冬眠なら、まだしも可能性がある。シマリスの冬眠に関係している遺伝子と似た塩基配列が、人間にもあることが発見されてもいるから。 人工冬眠の研究は、NASAが興味を持っているように、長期の宇宙旅行に備えて、という側面もあるが、より短期的には、手術への応用が期待されている。外科手術でも患者が冬眠状態ならダメージが抑えられる。あるいは、心臓移植のために心臓を運ぶとき、冬眠状態にできれば長時間の輸送が可能になる。 いずれにせよ、道は遠い。そんな現状にあって、世の中には超低温で肉体を保存するサービスを行う会社がすでに存在して、それなりの契約を得てもいる。人間って、夏への扉を探さないではいられない生き物なのだろう。

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