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ちょっと知的な雑学&トリビア

ガマの油

2002年5月13日 【コラム
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 ある雑誌に連載している原稿の下調べで馬油(ばあゆ)という言葉に出会う。調べてみると、名前の通り馬の油。もっともあぶら汗をしぼりとるわけじゃなく、脂肪を精製してつくる。1頭の馬からとれる脂肪はおよそ200キログラムとか。馬油は、シミ・ソバカスの防止など、肌の手入れに重宝される。一般名は馬脂で、馬油は登録商標。
 商標を登録した古伝医道研究家の直江昶(とおる)さんは、ガマの油も馬油だったのではないか、と推測している。こちらは傷薬として用いられた軟膏剤だ。ヒキガエル類が目の後方の耳腺から分泌する乳白色の液がその正体。実際それが用いられてきたのか、あるいは馬油だったのか。
 ガマ油の主成分は、ブフォトキシン。ステロイド化合物なども含み、服用すれば強心などの効能もある。一方で、かみついた犬が苦しむなど、毒性を持つ。カエルは多かれ少なかれこの種の毒を持っているから、手でつかんだあと目をこすったりしてはいけないという。これは知らなかった。このところアマガエルと仲良くしている息子に伝えなくては。
 話がそれた。ガマ油だ。ここまで有名になった背景には、バナナのたたき売りと同じく、香具師(やし)の活躍がある。サアサアお立会い、ではじまるあれだ。筑波山の四六のガマといえば名産。口上にいわく、ガマの油をとるときは「四方へ鏡を立て、下に金網を敷き、中へガマを追い込む。」鏡に映った自分の姿を見て驚いたガマは「タラリタラーリとあぶら汗を垂らす」。なるほど、あぶら汗から作るイメージはこれで養われたものだったか。その後、肌を切って傷薬の効能を実演しようかの見せ場となる。
 生まれたばかりの次男の肌荒れが目立つので小児科で相談した。処方箋を書きつつ、「ステロイドを含みますが、心配しなくていいです」と医師のひとこと。ガマ油、いまだ健在なりというところか。

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8 comments to...
“ガマの油”
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小橋昭彦

馬油については「馬油と梅雲丹の研究」をご参照に。ちなみに、「油を売る」という慣用句の油は馬油でもガマ油でもなく、髪油。江戸時代、婦女に髪油を売るとき、ゆっくり話をしていたから、と広辞苑にありました。


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香田 隆二

(肌荒れ)
真実を知ることから
最大の原因となる日用消費材を本当に安全なものに置換えましょう。なぜなら毒物の皮膚からの経皮吸収は口からの
経口吸収の100倍あるからです。
また経口毒は8割は排出されますが、経皮毒はその逆です
日用消費材の有害毒物の一部(製品の裏に表示)
。プロピレングリコ”ル(保湿剤)。トルエン(染色剤)
。ラウりル硫酸ナトリウム(発泡剤)
。エデト酸塩(変質防止剤)。タ”ル色素(着色料)など
また地球環境汚染の大きな原因に家庭排水からのこういった毒物の垂れ流しにあることも知っておきたいものです。


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konet

ガマ油で有名な筑波山が近くにあるため、僕の周りの人たちはほぼ全員が小学生の頃までには、筑波山に遠足に行きました。その時にガマ油の実演販売を見ることが出来たのですが、結構迫力があるのですよ。

日本刀のような刃物で自分の腕に傷をつけて、すかさずそこへ「さあさあ、取り出したのはこの薬…」といって傷口に油を塗りこんでいくと出血があら不思議、止まってしまったのですね。

もう、そうすると子供たち大興奮で、限られた少ないお小遣いからガマ油をまんまと買ってしまうのです。

しかし、今思うと、傷口に油を塗って出血を止めるのはボクシングでもワセリンを傷口に塗って出血を抑える原理と同じじゃないかしら? 等と疑ってしまったりするのですが、こういうのって疑ってはいけないのかもしれませんね。

お子様がステロイド配合の薬を処方されたとのことですが、僕の兄もアトピー性皮膚炎で、幼少の頃から今でも悩んでいます。やはり親というのは子供のためならば何でもするもので、両親は色々と試ていたみたいですが、大人になった兄本人の話によると、薬でかゆみがおさまるのは、やっぱりステロイド配合のものでないとあまり効果がないとのことです。

しかし、大切なことは、良い環境にいることが第一の薬になると彼は言っています。環境とは、空気や水はもちろんですが、疲労やストレスも指すみたいです。

新聞広告の間に挟まっている利用者の声がたくさん載ったチラシは、彼の経験上からは結構「?」だったらしいです。そんな兄は今では油屋さん(工業用油)の営業で、毎日油を売りに走り回っています。

お子様をお大事に。


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小橋昭彦

ありがとうございます。子どもの皮膚のかぶれは一時的なもののようで、大丈夫です。


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Nobu

香田隆二さんの「なぜなら毒物の皮膚からの経皮吸収は口からの経口吸収の100倍あるからです。また経口毒は8割は排出されますが、経皮毒はその逆です。」の
ところをもっと詳しく,お話を伺いたいと感じました。とても大切なポイントであると思うからです。よろしくお願いします。


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Nobu

馬油についての雑学をひとつ。ピアノの鍵盤は、指が触る部分の木片の下側にあけた穴にライニングされたフェルトに、金属の軸が下から刺してあり,それが各キーの位置を保ち,また適度のあそびを作るのですが,そのすべりの良し悪しは弾くときのタッチに微妙に影響します。調律の専門家,内田三郎さんが道具箱の中にいつも「ばあゆ」を持ち歩いていて,それを私のピアノに施してくれたことがありました。ただ,その効力の程は難しいところで,少し弾いていないと経時変化(酸化か乾燥?)のために、鍵盤がフリーズ(かなり微妙な程度のものではありますが)するようになりました。雑学でした。


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kerokero

ガマの油はガマの油です。日本薬局方にもセンソとして規定もありますし、江戸時代、イヤそれ以前からガマガエルは薬用動物として我が国でも珍重されてきました。馬の油がガマの油などというとんでもない話がまことしやかにされているのは、ちょっと悲しいことです。カエルでこの種の毒を持っているはガマガエルのたぐいで、トノサマガエルやアマガエルにはこのような毒はありません。救心製薬のホームページの生薬の話のセンソのところにガマの油の詳しい話が載っています。参考にしてください。


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西村 義弘

ガマ油の購入をしたいのですが販売先を教えて下さい。




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 一般に混同されやすいけれど、迷路と迷宮は違う。迷路は言葉どおり迷い道だが、迷宮はそうではない。迷宮に分かれ道はなく、一本の道だけで構成される。その道は、ある図形のなかをくまなく埋め、迷宮を歩くものは必ずすべてをたどる構造になっている。 迷宮としてもっとも知られているのはクレタの迷宮だろう。牛頭人身の怪物ミノタウロスが閉じ込められていたもの。アテナイの王子テセウスは、迷宮の中心に行ってミノタウロスを倒したあと、クレタの王女アリアドネに渡された糸の導きで帰還する。神話にあるように、世界各地に残る迷宮図は、いったん中心にいき、再び出てくる構図になっている。 渦巻きを描く。中心部で折り返して、いま描いた線の間を通って外まで線を引く。この線を経路と考えれば、迷宮的な中心に達し再び出てくるという感覚が理解できるだろう。子どもの頃、そんな図から始まって、後には迷路図をよく描いていた。 長じて学生時代、「風のある迷宮」という戯曲を書いたことを思い出す。自らの進む道を模索する少年の物語。風を感じる以上は、きっと閉鎖空間ではなく出口があるのだという意味を込めたタイトルだった。けっきょく上演にいたらず、戯曲も迷宮入り。 ヨーロッパに芝生迷路として知られるものがある。あれも正確には迷宮だ。ヴェルサイユにも庭園迷宮があり、男女の散策者がよく利用したという。もっとも、恋の迷宮とでも言えばいいか、別の楽しみに利用されることしばしばだったようで、後に当局によって取り壊されることとなった。 迷宮には、ひとたび中心である死に向かい、よみがえって外周へ再生するという思想がこめられているという。ぼく自身、人生のなかでなんどか迷宮を描き、いまふたたび、コラムで触れている。自らの進む方向を模索するとき、迷宮に帰っているのか。それが、再生への道だから。

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 子どもと寄ったドーナツ店のトレイ敷に、ドーナツの穴の由来が書かれていた。いわく、米メイン州に住んでいたハンソン・グレゴリーという船乗りに起源があると。彼が子どもの頃、母親の揚げるドーナツの真ん中が生っぽいと文句を言ったことから、母親がドーナツの真ん中をくりぬいて作るようになったという。 ドーナツをかじりながらそれを読んでいて、映画『マルコヴィッチの穴』じゃないけど、「穴」が新しい発見、新しい可能性をもたらすことって、これまでもいろいろあったんだろうな、と想像していたのだった。 マカロニにも穴があるが、あれは乾燥させたり固ゆでしたりするのに便利なのと、ソースがからみやすいためだという。残念ながら起源はわからない。なにせスパゲティより古く、数百年以上の歴史がある。 ゴルフボールのディンプルはどうだろう。空気抵抗を減らして飛距離を伸ばすことが知られている。物資が少なかった時代、使い込んで傷ついたボールの方がよく飛ぶので、新品にもわざと傷をつけて発売するようになったのが起源という。 まて、そもそも人間のことを、口から排泄口まで続く穴だと言った人がいなかったか。それは極端にしても、壁と屋根に覆われた空間、つまりは穴に暮らすことを習慣としているとはいえそうだ。蛇口やガス管、コンセントの形状を思えば、ぼくたちは穴のおかげで生活できている気もする。 ことわざに、人を呪わば穴二つとある。あの穴は墓穴だという。呪いを受けて死んだものが入る穴ひとつ、呪ったもの自身が入る穴ひとつ。いやまったく、人を呪うものではない。 重力井戸という表現がある。重力がものをひきよせる穴とすれば、ぼくたちは地球という穴の底に住んでいる。同じ穴のむじなということか。 お父さん、行こうよ。子どもの声が思考を中断、ドーナツ穴をあとにする。子どもとのんびりできる、穴場だったかもしれない。見上げた空は広く、青い。

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