ざつがく・どっと・こむ
ちょっと知的な雑学&トリビア

きみは誰

2001年11月07日 【コラム
Share...Share on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

 木簡(もっかん)の利用法としておもしろいもののひとつに、奈良市の長屋王邸宅跡から見つかった例がある。中央に人名、横の端に三つの点。割れて文字が残ったというわけでもない。はじめは不明だったが、やがて画指(かくし)木簡だと判明する。
 指を画(か)く。木簡の端に人差し指のつけ根をあて、指の先とそれぞれの関節ごとに印をつけたわけだ。人によって長さや関節の位置が違うから、本人かどうか識別できる。つまり、署名ができない人向けのIDカードだったわけ。
 もっとも、当時出入りチェックに実用的に利用されていたかどうか、確かなところはわからない。子どもの奴婢(ぬひ)管理のためだったとも言われている。ま、少なくとも顔パスだけでは通じないほどの人数を抱えていたことは事実なのだろう。
 誰何(すいか)の方法としていまひとつ思い浮かぶのは、合言葉だ。日本書紀に、天武天皇の時代に用いられた様子が記されているから、これが記録に残るもっとも初期の例のひとつだろう。有名なのは赤穂義士が使った「山」「川」だが、もともと浄瑠璃では、討入りの装束を調えた商人天河屋義平の屋号をとって、「天」「川」となっている。タイムスリップしたとき、お間違いの無いように。
 ちなみに、小学館の日本大百科には、第二次大戦中に米国軍が「lollapaloosa(驚くべきこと)」を合言葉にした例が紹介されている。日本人はどうしたって「rorraparoosa」になっちゃうから、ばれてしまう。LとRの発音が苦手なのはいまの日本人もそうだけど、いやはや、運命をわけるとなれば、しっかり発音練習しなくちゃなあ。

Share...Share on FacebookShare on Google+Tweet about this on TwitterShare on LinkedIn

5 comments to...
“きみは誰”
Avatar
小橋昭彦

没ネタ。時刻表が商業出版物として最初に売り出されたのは19世紀半ばのイギリス(日経9月19日)。クジラの祖先はウシなどに近い偶蹄目(朝日9月20日)。高さ約170センチ、最大級の家型埴輪出土(朝日9月21日)。紀元前1世紀から紀元1世紀ごろ、日本最古のすずり出土、文字使用の起源論争に一石(日経10月4日)。


Avatar
papa

歌の上手下手。そんなのは気にしなくてもダイジョブダイジョブ。思い切りほめてあげて「楽しかった?」って聞いてあげてくださいね。大人だってご愛嬌のカラオケってあるじゃないですか(笑)。ねえ?!
音を楽しむんですから。専門職は、、、音を学ぶですかね。


Avatar
kenwinning

今も昔も日本語には “L” の発音は存在しないため
仕方のないことだと思いますよ。
逆に英語に存在しない発音『りゃ、りゅ、りょ』なんてのもあり、
“R” の発音はどの言葉でも難しいです。
特にフランス語の “R” なんて至難の業です。


Avatar
第三市民

私は旧世代に属しているので、「発音」によるアイデンティティが「命に関わること」としては、「関東大震災」の際の「朝鮮人狩り」が先ず想起されます。もちろん祖父の時代の惨劇ですが、子供の頃「夜口笛を吹くな」と父から厳しく叱られたことがありますが、それも「虐殺」に関係があったようです。

自己と他者を明確に区別するのは精神の成熟には不可欠ですが、区別しなければ安心して日常生活を送れなくなった現代とは何なんでしょう。


Avatar
Hirocked

いつも海外から興味深く読ませていただいています。

発音が生死を分けた古い例としては、聖書の士師記(裁き人の書)12:4-6にギレアデ人がエフライム人と戦った際に生じたことが記録されています。
ギレアデ人はエフライム人が川の渡り場から逃げないように、来た人に「シボレテ(シボレト)
「合言葉」にまつわる話、洋の東西や時代の如何を問わずいろいろなエピソードがあるようですね。




required



required - won't be displayed


Your Comment:

 聖徳太子の笏について調べていて、ひとつ連想したのが木簡だった。古来、さまざまなメモを書きつけた木片。かつての人が自分で書きとめたものを今読むことができるのだから、過去から未来への伝言といってもいい。 地中から掘り出された木簡は樹脂が洗い流されて水を含んでいるから、とてももろくなっている。けっきょく水につけたまま保存するほかなかったりするのだが、最近では乾燥しつつ強化するような保存方法も開発されている。 で、その木簡だが、利用方法はさまざまだったらしい。もちろん事務連絡や記録などにも使われたけれど、落書きなど筆ならしにも使われている。荷札としても用いられていて、この利用法は戦後しばらくまであったそうだから、年配の方にとっては懐かしいかもしれない。 木簡は削って消せばまた利用できるけれど、再利用法としておもしろいのが、福岡市の平和台球場の下で見つかったもの。8世紀頃の迎賓館があったところで、さすがに各地から多くの物品が送られてきたらしく、荷札の木簡も多く見つかった。で、それがあったのが、縦約4メートル、横約1メートル、深さ4メートルという深い穴。さて、なんの穴だったか。発掘に携わった人に聞けばはやい。というのも、やたらと「におい」がした。そう、トイレだったのだ。 紙が貴重品だったころ、日本人はワラやふきの葉など、さまざまなものでお尻を拭いていた。使い古した木簡も、最後はトイレで利用されていたわけだ。先を丸めたり削ったり、尻をけがしないようにしてあったというから、念が入っている。木簡も、それなりに納得して一生を終えたのではないかな。

前の記事

 今週は連想コラムみたいになっちゃったが、合言葉といえば、やはり暗号のことに踏みこまざるをえないか、と調べはじめる。ちょうど『暗号解読』という、古代から量子暗号までにいたるエピソードを盛りこんだ書籍がベストセラーになっているのでもある。 とはいえこの問題、けっきょく現代の情報セキュリティの話にならざるをえず、ちょっと書きにくいなあ、なんて思いつつ調べを進めていたら、「ナップサック問題」という言葉に出会ったのだった。難解な数式の間にこのての話が出てくるとほっとする。 ナップサック問題は、有名な巡回セールスマン問題などと並んで、組み合わせ最適化の解法に関する事例のひとつ。巡回セールスマン問題は、同じ道を通らずにすべての顧客を回る順路はあるか、あれば最短ルートを探せというもので、これの簡単なものは子ども雑誌にもクイズとして載っていたりする。 ナップサック問題は、山を登るにあたってナップサックにどう荷物をつめればいいかを考える。たとえば背負える重さを10キロと限定する。全部はつめない。重い燃料をあきらめて小さな缶詰を多く詰めるのか、いや、燃料は必須で、残る範囲でほかの物を積んでいくか。 この種の問題に対して、最適の答えを見つける公式、というか解法というか、そういうものが果たしてあるのかどうか、というところがポイント。じつはこれがまだわからないそうで、いまのところ無いんじゃないか、つまりしらみつぶしにあたっていくほかないんじゃないかと考えられている。だから、ナップサック問題を盛り込んだ暗号は、解くのに永遠に時間がかかるから有効だと。 子どもが親を真似したがるので、アンパンマンのリュックを背負わせている。公園に行くとなると、好きなお菓子やボールやタオルなどを自分でつめている。大きな車のおもちゃも突っこんで。重いと思うのに、気にならないらしい。彼がナップサック問題に悩むのはいつからだろう、なんて考えている。抱っこと言われたとき辛くないよう、親の荷物はできるだけ減らしつつ。

次の記事