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ちょっと知的な雑学&トリビア

親子の絆

2006年3月31日 【コラム
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 子どもをつくるという表現の特徴に気づかされたのは柏木恵子氏の著書『子どもという価値』のおかげだった。何気なく使う表現だけれど、たとえばそれは「授かる」にくらべて、親の意思を前面に出している。計画出産することが多い現状を反映した言葉ではあるだろう。ただその延長にどことなく、子どもを第三者的な存在として切り離し、ときとして自分の自由な生活への脅威とさえ考えてしまう傾向がある気がしないでもなく、ちょっとばかり落ち着かない。
 子を宿すとはどういうことだろう。出産を経たラットは餌の位置を記憶する能力がよりすぐれているという研究報告や、人間の場合でも、子どもを持った人のほうがさまざまな仕事をこなすマルチタスク能力が高いといった報告が出されている。おどろかされたのは、胎児の細胞が母親の脳に入りこむという話だった。シンガポールの研究者らが昨年の夏、マウスで発見した。人間でも、母親の血液に胎児の細胞が入り込むことは知られている。出産後27年以上も母親の体内に残る場合もあるというから、親子の絆は深い。脳に入っている可能性も高いだろう。
 マウスでは母親の脳細胞の1000個に1個、ときには10個もが胎児由来だったという。胎児の細胞はさまざまな器官や組織に成長できる。実験では、傷ついた部分にほど多く集まったというから、母の傷を子の細胞が修復しようとしているようだ。ちなみに、ニューイングランド長寿研究によれば、40歳以上で妊娠したことのある女性の方が、100歳まで生きる可能性が高いという。子の細胞の力が関係しているのかどうか。負うた子に教えられるとは古いことわざだが、最先端の科学は、宿した子に助けられる姿をかいまみせてくれている。
 だから子どもをつくろうとオチをつける気はない。親子の絆は、そういう功利的な視点を超えたところにあるような気がするし、それは、人間社会よりずっと長い生命の歴史によって築かれたものだから。

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21 comments to...
“親子の絆”
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小橋昭彦

柏木恵子『子どもという価値』お薦めです。
今回、日経サイエンス2006年4月号『子育てで賢くなる母の脳』を参考にしました。
Gavin Dawe」による脳に入った胎児細胞の発見はセンセーショナルでしたね。こちらも日経サイエンス2006年2月号「胎児の細胞が母親の脳へ」が詳しいです。英文ですが「Baby comes with brain repair kit for mum」もそれを扱ったもの。
母体に胎児の細胞が出ていることは、「Diana W. Bianchi」の発見です。
そのあたりもろもろ、「脳のなかの胎児」で触れられていて、おもしろいです。あと、ニューイングランド長寿研究については「New England Centenarian Study」にて。


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もうりい

胎児の細胞が母親の傷を修復するなんて、すごいです。母体から与えられるだけじゃなくて、与えてもいたんですね。
もしかしたら本質は、「母親が死んでしまうと、面倒を見てもらえなくなるから」という利己的な意味があるのかもしれない。けれど、滋養の流通が相互に行われているということ、いろいろ考えさせられます。


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建築プロデューサー

凄いですね、自然のシステム、と言うか、肉体の不思議!
|母親の血液に胎児の細胞が入り込むことは知られている…
|胎児の細胞はさまざまな器官や組織に成長できる…
|実験では、傷ついた部分にほど多く集まったというから、
母の傷を子の細胞が修復 しようとしているようだ。
関連資料含めて、読み入りました。本当、凄い。
そんな情報を戴けた、小橋さんにも、感謝です。


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みけ

面白く読みました。
> 子どもを持った人のほうがさまざまな仕事をこなすマルチタスク能力が高い
これは、そうでしょうね。どうしても時間が足りないから、そうなるのだと思います。
私はいろいろ考えて子供は持たないことにしたのですが、『次の人生』というものが、もしあったら、子供を持ってみたいと思います。たぶん感情的になったり、やってはいけないと考えていたことばかりして、あーあと、自己嫌悪に陥ってしまいそうですが(笑)。
今、子供を持っている方にお願いしたいのは、ぜひご自分も幸せでいてほしいということです。時々ケンカもするけど、基本的に仲がよい両親ならば、子供は幸せなんです。


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まきの

そりゃ母親にはかないませんね(笑


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まきの

私も2児の父親ですが・・・
こりゃ母親にはかないませんね(笑
10年近く読ませて頂いて初めて投稿させていただきました。
一番インパクトのあった内容のような気がします。
ありがとうございます。


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HIRO

ここのところ,小橋さんのコラムを見るのをさぼっておりました.「親子の絆」というタイトルが気になり,久しぶりに読みました.胎児の細胞が母親の胎内に入っているなんて話,本当に始めて知りました.ちょっとだけ嫁さんがうらやましい(?)と思うとともに,人間の生態のメカニズムに今更ながら興味を抱きました.ご子息と同級の娘も4月から小学校2年生.子供の成長も神秘的です.今後もメ貴重な情報配信,がんばってください.


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Foreddy

初の投稿です。
非常に興味深く、面白く読ませていただきました。人間の不思議と強さを感じました。『子供を作る』とか『子供ができた』という言葉には、私は違和感を覚えます。いろいろと悩んでいる知人もいますし、思いがけず親になった知人もいました。私自身は、3人の子の親となりましたが、この子達が生まれる時には、それらの知人たちの様子を思い浮かべ、自分のことを考えると、授かるといった表現がぴったりのような気がしていました。


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ういろう

親子の絆ってまさに「切っても切れない」って感じですね。
私の傷も息子の細胞が癒してるのかな?なんて思うと
「なんとかわいいヤツ!」とすでに反抗期に入りつつある息子が
なお愛しくなりました。


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おふう

嬉しくなりました。自分もずっとそう思っていました。数え上げれば枚挙にいとまないほどですが、「子供を保育園に預ける」これも自分に落ち着かない言葉の一つであります。自分は経済上の理由や夫の健康の問題等で、子供を保育園にお願いして勤めて来ました。お蔭さまで子供も無事に成長し、今は感謝の毎日です。「預ける」の言葉の意味を考えてみてはいかがかと思います。
いつもいろいろとありがとうございます。


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小橋昭彦

たくさんのコメント、ありがとうございます!
家族を持つ、持たないはそれぞれの事情もあるし、踏みこむことじゃないと思っていますが、こういう生命の不思議を通して、子どものいる社会のすてきさを、みんなで共有できたらいいなあと思っています。
それからごめんなさい、トラックバック部分の記述方法を間違えていて、トラックバックいただいたサイトへリンクしていませんでした。現在では修正されています。


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のら

コメント遅くなりました。
興味深く読ませていただきました。
子供を生み育てながら親もまた新たに心の出発点に立ち、自らの過去を振り返りながら再出発する「育ち直し」をよく耳にしますが、子供の細胞が親の胎内にも入るなんて、体の仕組みにも少し当てはまるのかと妙に納得しました。


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しゃあ

子を持つ事と マルチタスク能力は関係が有るのですか?
ただ単に 子を持つプレッシャー(時間やお金など)から 頑張って仕事をこなしている様な 気がします。
父親には 胎児の細胞って来ないんでしょう?


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小橋昭彦

 そういう報告もある、というぐらいでいいのではないかと思います。母親については、ですが。
 たとえばこう考えます。胎児の細胞が脳の組織を強化するとします。その結果、マルチタスク能力を強化された母親と、そうでない母親ではどちらの方が生き残りやすいか。
 子どものことを考えつつ敵にも対処できる、マルチタスク能力がある方ですね。それが重なると、進化の結果として、妊娠の結果マルチタスク能力を得る突然変異のあった方が、優勢になる。とすれば、現代の人類に、妊娠すればマルチタスク能力がある遺伝子を持つものが多いと考えても、矛盾はありません。
 まあしかし、実際には個人差の方が多いと思いますし、妊娠とマルチタスク能力をあまり結びつけて考えないほうがいいと思います。そういう考え方はときとして暴力になるので。ただもちろん、子どもができてから並行処理する能力が高まったという人は多いと思いますし、それはそれで認めていいかと思います。
 子育てが父親にもたらす影響については、まだこれから研究しなくてはいけない分野のようです。


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しゃあ

なるほど。


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k

> 40歳以上で妊娠したことのある女性の方が、100歳まで生きる可能性が高いという。
文脈からすると「実験では、傷ついた部分にほど多く集まったというから、母の傷を子の細胞が修復しようとしているようだ。」とつながっているように読めますが、40歳以上で妊娠することのできる恵まれた女性だから長生きするのかも知れませんよ。恵まれているというのは、経済的にとか、体力的にとか。
つまり
妊娠したから→長生きできた
ではなく、
長生きする素質があった→妊娠にもつながった
という可能性です。
本文は、感情に流されすぎているように思います。


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小橋昭彦

kさん、ありがとうございます。
はい、統計を読むときに因果関係を誤ってしまうというパターンですね。それも念頭にあったので、すぐ次の文章で「子の細胞の力が関係しているのかどうか。」と疑問文をはさんで冷ましておきましたが、ご指摘のようにまだ誤解の余地があるかもしれません。
この部分で分析的な補足をしてだらけさせるわけにいかないので、いっそこのネタを盛り込まないでおこうか、と最後まで迷った箇所ではありました。


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へむへむ

母体に移行した胎児の細胞が、ある種の自己免疫病の原因であるという説もあります。必ずしも有益な影響を及ぼしているとは限らないようです。


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へむへむ

母体に移行した胎児の細胞が、ある種の自己免疫病の原因であるという説もあります。移行胎児細胞が、必ずしも有益な影響を及ぼすとは限らないようです。


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へむへむ

二重投稿になってしまいました。失礼しました。
失礼ついでに、あと2点追加させてください。
>実験では、傷ついた部分にほど多く集まったというから、

詳細を知りませんので、不正確なコメントになるかも知れませんが。上記の事実は、傷を治すために集まったのではなくて、胎児細胞が集まって組織にダメージを与えている可能性も考えられます。
もう1点は、
胎児細胞の遺伝情報の半分は母体と同じであり、この半分は母体に影響を及ぼしません。移行した胎児細胞が母親の体に何らかの影響を及ぼすとすれば、それは残りの半分、つまり夫の遺伝情報による、ということになります。良きにせよ悪きにせよ、母体の変化に関しては夫の責任重大という事になりませんか。


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小橋昭彦

へむへむさん、ありがとうございます。
おっしゃるとおり、これまで、胎児細胞が病気に起因していると考えられる事例がいくつかあったようですね。でも、実はまったく逆なんじゃないか、ということが最近言われるようになってきた、ということで。
特にGavin Daweの実験は、化学的に傷つけて行ったものですので、胎児細胞がダメージを与えたのでは明らかにない。細胞が脳まで到達できたということとともに、常識をやぶる発見だったといえるのではないかと思います。
お父さんの役割についての考え方はおもしろいです。確かに責任重大。




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