小橋 昭彦 2005年11月3日

むかごが手に入ったので、さっそくご飯と一緒に炊いていただく。しゃきっとした口ごたえに食が進む。ただ、子どもはどうやら苦手らしく、つまんでは取り出している。

こんなとき、ご褒美を前提に食べさせても効果がないと、研究者らによる実験は教えている。食べたら遊んでいいといえばそのときは食べるのだけれど、食べ物を好きになることはない。料理が手段になっていてはだめで、食べたこと自体をほめるなど、手段と目的を分けない工夫が必要になる。

有効な方法のひとつは、親自身がおいしがって食べること。赤ちゃんにオレンジジュースとトマトジュースを交互に与えている保育園で調べてみると、担当する学生の好みが保育園児にうつっていたという。トマトジュース嫌いの学生が担当した赤ちゃんはトマトジュースを好まない。途中で好みが変わった赤ちゃんの場合、担当する学生が代わっていた。

人間には雑食性動物ゆえのジレンマがある。さまざまな食べ物から栄養を補う必要から、新しい食べ物を前にしたとき、食べてみたいと考える一方、毒であったら怖いと警戒もする。そんなとき、誰かがおいしそうに食べたら自分も摂り、苦しんでいたらやめるにしくはない。周囲の反応によって自分の好みが左右されるのは、雑食性動物のジレンマを避ける自然な態度なのだ。

同じものを食べていれば好物になるという、単純曝露の効果と呼ばれる現象もある。慣れた食物は安心だし自分にとって快いということだろう。一方で、一度の食事では同じものをそう食べられるものでもない。これを感性満腹感というけれど、そのおかげで雑食が進むのでもある。

もっとも人間は、頭をつかっても食べる。嫌いな食べ物の理由は子どもも大学生も五感に基づくけれど、好きな食べ物は、子どもは五感に、大学生はイメージに基づいて理由づけすることが多いという。おいしい食事は、たのしい食卓が作るのである。

4 thoughts on “われら雑食性動物

  1. “人が雑食かどうかには異論もあるようです。というのは人の代謝からの考えです。
    脳はブドウ糖を通常はATPの元としています。しかしブドウ糖の肝臓の貯えは1日分もありません。体の糖質が不足するとアミノ酸のアラニンから糖を作ります。脳は饑餓状態では脂質の代謝産物のケトン体を利用します。蛋白質と脂質を含む肉を食べれば脳は生きのびる事ができます。
    植物から取らないといけないと考えがちな栄養素は葉酸ですが、肝臓に大量に含まれています。
    ビタミンCだけは植物由来でないと摂取は確かに困難です。しかしモンゴルでは馬乳酒という発酵食品からビタミンCを摂取しています。
    ビタミンB12は植物性のものから取るのは非常に困難です。ベジタリアンの中でもビーガンといって、動物性のものをまったく取らない人たちはビタミンB12不足になりがちです。
    人は本来は肉食が好きな雑食動物ではないでしょうか?”

  2. 西園寺さん、ありがとうございます。(家庭の医学ガイド、ご苦労様です!)
    そういえば、人類が原始時代を生き延びることができたのは死体あさりをして栄養素を補ったから、という説がありましたね。
    ヒトの場合、脳という大きな器官をはたらかせる必要があるので、エネルギーを確保するのはたいへんだったろうなあ。

  3. ビールもコーヒーも最初に飲んだときは不味いと思いました。
    それでも飲みつづけたのは『かっこつけたかった』からなのでしょう。
    最近はビールもコーヒーも美味しいと思います。
    慣れたのか、味覚が鈍ったのか・・。

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