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ちょっと知的な雑学&トリビア

ゆっくり地震

2002年12月05日 【コラム
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 メコン川に生息する大ナマズが生存の危機にあるという。貨物船の航路整備のため川底の岩場が次々に爆破され、産卵地が減少。写真を見て驚いた。大きいどころではない。体長2メートルあまり。体重は300キロにもなるという。なるほどこれなら地震も起こせると、妙な納得をしたものだ。
 それで気になって地震とナマズの関係を調べてみたが、これがよくわからない。大地の下で何かが動いて地震が起こるという伝承は、世界でもさまざまなバリエーションがある。それが蛇だったり亀だったり魚だったり、はたまた柱だったり交わる男女の神だったりする。仏教系の流れでは、世界の中心たる須弥山(しゅみせん)を巨魚が載せているという伝承もあるので、その影響もあるだろうか。
 鹿島神宮には、地震を起こさないようにナマズをおさえている、要石(かなめいし)がある。じつはこれ、江戸時代までは龍をおさえていると伝わっていた。もともとは龍で、それが江戸時代に諧謔かあるいは地震のときナマズが動いたという身近な目撃例が重なったかでナマズになったのか。
 もちろん、現代ではナマズが原因とは信じられていない。新しいキーワードとして注目されているのは「アスペリティ」。地震の原因は大地をのせたプレートとプレートがずれることと言われるが、このプレートの境界で、ずれずにくっついている部分をいう。これがたまりにたまって、最終的に一気にずれることで大きな地震となるのだと。
 アスペリティ周辺では、地震波を出さないようなゆっくりした断層の動きがあると考えられていて、ゆっくり地震とも呼ばれる。観測技術の向上で、このわずかな揺れも観測できるようになった。それを通してアスペリティの規模を知れば、地震の理解に役立つと期待されている。
 95年1月17日、あの朝の記憶は今も新しい。なまずからアスペリティへ。研究が進む一方で、われわれ一人ひとりの自覚も欠かせない。

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6 comments to...
“ゆっくり地震”
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小橋昭彦

地震については「日本地震学会」「地震のページ」などをご参考に。アスペリティとゆっくり地震については「アスペリティって何?」「「ゆっくり地震」に注目!」「ゆっくり地震」などをどうぞ。民俗的には、鹿島神宮「要石」そして「地震はなにがおこすのか?ー日本人の地震観の変遷ー」「日本の歴史と神話・伝説」などをご参照ください。


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片田敬二郎

ゆっくり地震 [2002.12.05] 拝読しました。

関連する、私の体験です。ナマズには、かなわないの
ですが・・・。
————–
95年1月17日の前夜、駐車場から車をスタートさせよう
として、車の窓から月を見たら、月がゆがんで見えま
した。車から降りて、そのゆがんだ月を眺めていまし
た。

翌朝、あの関西大震災でした。
駐車場の位置は、被害が大きかった兵庫県宝塚市で
す。

地球内部からの、何かが噴出して、見るものをゆがま
せたのでしょうか。


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かとう

小橋様
いつも楽しく拝読させていただいております。

今日は、ふと気になった字の使い方があるのですが、

「仏教系の流れでは、世界の中心たる須弥山(しゅみせん)を巨魚が載せているという伝承もあるので、その影響もあるだろうか。」

ここで、載せている、というのは、乗せている、という字とはまた使い方が異なりますね。文章を載せる、といった使い方以外で、ちょっとまた意味が違ってくるのでしょうか。

またささいなことですみません。内容については、本当にいつも新しい視点や切り口から、ちょうどよい長さの文章によくまとめておいでなので、朝、目を通して楽しんだり、妻に意見を求めたりと、非常にうれしく活用させていただいています。

以上です。


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中井

江戸期には浮世絵で鯰(なまず)絵というのが流行っ
たそうです。
鯰絵の実際はこんなやつ。
http://www.isics.u-tokyo.ac.jp/db/contents/
index.28.html
また10年ほど前に、せりか書房から「鯰絵ー民俗的想
像力の世界」という本が出て話題になっていました。
読んでないんですが。どうも絶版のようです。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/
4796701168/ref%3Dsr%5Faps%5Fb%5F1/250-3117862-
2589820

あと、琵琶湖のある大津市と鯰の関係は深いようで、
琵琶湖博物館でも鯰と鯰絵の特別展が開催されていま
した。


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小橋昭彦

かとうさん、ありがとうございます。すみません、ご指摘の箇所は誤変換です。訂正いたします。

片田さん、ありがとうございます。いわゆる地震の前兆現象の研究も進んでいますね。下敷きをこすると静電気がおきますが、大地もこすれたら影響があるのではとか、科学的に説明する方向も進んでいるようです。

中井さん、ありがとうございます。護符なのかな、と思って百科事典を見ましたが、なんというか、うさばらし(天地一新=世直し)的な願いを込めたものでもあるようですね。


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こま

仲井さんの大津絵で思い出したのですが、
大津絵に登場するキャラクターを
日本舞踊にした作品群があります。
その中に「瓢箪鯰」といって
ナマズの着ぐるみを着て踊るものがあります。
大津絵自体がマンガチックで滑稽な味がありますが、
「瓢箪鯰」もとてもおもしろかったです。

須弥山の下を鯰や亀などが支えている構図は
世界の神話に共通に見られる「宇宙樹(世界樹)」の
構図です。
詳しくは杉浦康平さんの『日本のかたちアジアのカタチ』三省堂、『イメージの博物誌15生命の樹』平凡社、
エリアーデ『中心のシンボリズム』などによく書かれています。
宇宙観の話題になりますね。
もっとも、現代の地球物理学も宇宙観を語るものですから。




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 物理学的に時間に「流れ」がないとすれば、時間旅行も可能なはず。もちろん心理面からみるなら、あなたの得意げな話を相手がつまらなそうに聞いていたとして、1時間後「あ、一瞬だったね」とあなたが思ったなら、相手にとっての永遠の未来にあなたは一瞬で到達したと言えなくはない。 ただ未来へのタイムトラベルなら、そんな辛い思いをしなくても、物理的に可能だ。相対性理論によれば、速度のはやい、あるいは強い重力場の中では、通常より時間はゆっくり進む。だから、たとえば日本から台湾まで飛行機で往復する。所要時間はおよそ8時間。これでおおむねあなたは10ナノ秒未来の日本に帰ってくることになる。ナノ。ナノテクノロジーで最近一般的になった単位だけど、つまり10億分の1秒。パソコンのプロセッサーでさえ、ひとつの命令を終えられない時間だから、ちょっと気づかないか。 未来へ行ったと実感するには、やはり光速に近い速度で移動する必要がある。ただ、いまの人類の技術では難しい。おそらく、これまで人類でもっとも未来へタイムトラベルをしたのは、「ミール」に2年以上も滞在した旧ソ連の宇宙飛行士だろう。それでも、1秒も未来へ行っていない。時速3万キロ近い宇宙ステーションで旅してさえ、一生かけてようやく1秒未来へ旅する計算だ。 過去への旅はどうだろう。理論的には不可能ではない。相対論を研究するキップ・ソーン教授は、宇宙の異なる2点間をつなぐ時空のトンネル、ワームホールを利用した方法を提案している。もちろん、それを作るには超文明といっていい技術が必要だし、仮に完成したとしても、過去にさかのぼって親を殺すとどうなるのか、に代表される因果のパラドックスが残る。そのため、実際にはできないとする説もある。 なんだか机上の空論ばかりを並べている気がしてきた。ふと思う。仮に、いまここにタイムマシンがあったとして、ぼくはどの時間に向かうだろう。そして、あなたは。

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