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ちょっと知的な雑学&トリビア

砂糖をめぐって

2002年8月12日 【コラム
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 こういうのを詰めが甘いというのだろう。前回、赤ちゃんが太っている背景に脳のエネルギー消費量の大きさがあると書いた。そのため、飢餓に備えて余剰エネルギーを脂肪として蓄えていると続けた。読者の方から指摘をいただいたけれど、こう書くと誤りで、脂肪として蓄えたエネルギーは、脳のためには使えない。
 というのも、脳はいわば偏食家で、エネルギー源とできるのはブドウ糖だけ。そしてブドウ糖は体内での備蓄が効かないのだ。脳が多くを消費するからエネルギーを蓄えるしくみが活発化したとはいえるものの、脂肪が脳のエネルギー源になるわけではない。創刊間もない98年1月のコラムで脳と糖分の関係をまとめていつつ、このていたらく。これからはコーヒーもブラックじゃなく砂糖を入れて脳を働かせるか。反省し訂正する次第です。
 さて、これで終わってはもったいないので、砂糖について調べを進める。金平糖好きの織田信長の逸話は有名だが、砂糖は鑑真が日本に伝えたという説はどうだろう。彼の第1次渡航の積荷に「蔗糖」の名が見えるためだが、ご存知のように航海が成功したのはようやく6度目のこと。そのときの積荷にもあったかどうか。正倉院宝物に含まれているから、奈良時代に伝わっていたのは間違いない。
 当時、砂糖は薬とされていた。それで、砂糖とは直接関係無いけれど、飛鳥京の庭園跡で発見された木簡のことを思い出す。処方箋を記したものとしては最古もの。西州続命湯という漢方の処方が書かれていたといい、遣唐使が最新の医療技術を持ち帰っていた様子がしのばれる。砂糖といい、処方箋といい、1200年以上前からわれわれは自らの健康を思っていたのだ。
 ちなみに、西州続命湯というのは、脳出血などの漢方薬として知られる。ここで話題は再び脳に帰り、末尾が頭につながったところで、丸く、おさめさせてください。

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11 comments to...
“砂糖をめぐって”
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小橋昭彦

砂糖については、「砂糖類ホームページ」「なんでもパクパク辞典」「Sugar in School」などの情報が充実しています。


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小橋昭彦

参考までに98年1月20日付け、『今日の雑学+(プラス)』第8号(!)掲載の「砂糖ふたつ、脳に…」を再録します。当時は文章も短く、シンプルでした。

 もういちど、生物と数字。ごめんなさい、またその方向の記事に出会ってしまったんです。
 昨日、人間の体重大脳比を1.0として馬は、という話をしましたが、じゃあ実際の比率はというと、人間の脳の平均重量は1300グラムだから、2%程度ですね。その脳が必要とする栄養素は、1日500キロカロリー。ということは全身エネルギーの20%を消費していることになり、さすがに多い。ふと、電力をがんがん消費する Pentiumチップを連想したりして。
 ところで脳というのはけっこう偏食家で、栄養素としてはぶどう糖しか受け付けない。脳で燃焼するぶどう糖は1日あたり120グラム。これを安定供給するためには、1デシリットルあたり100ミリグラムの血中ぶどう糖濃度が必要になるのだけれど、これは食事間隔が開くと下がるので、それにつれ脳の働きも鈍くなるとか。寝起きにぼーとしてしまうのは、こういうわけなのかな。
 何かのコマーシャルじゃないけど、朝のコーヒーはブラックじゃなく、シュガーを入れたほうがいいみたいよ。


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たかすきんさく

明治生まれだった亡父は菓子職人。砂糖の味が産地で違うのを舌で識別できたそうです。戦争のために砂糖が統制経済のもとに組み入れられ、絹のハンカチ藤山愛一郎さんの会社が一手にひきうけて、職人の舌も話のたねだけになりました。このごろは三盆白って、ききませんね。


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はぎ

前回に引き続き「脳と砂糖」のお話を読ませてもらい、私ふと思い出したのですが、むかーしテレビで「ジュースや甘いものを多く摂取する現代の子供は、堪えしょうがなくキレやすい」という特集を見た記憶があります。砂糖が少なすぎても、多すぎてもダメなんですね。


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小橋昭彦

>ジュースや甘いものを多く摂取する現代の子供は、
>堪えしょうがなくキレやすい

このあたりについて、2000年6月配信のコラムからご紹介しておきますね。

(前略)
 さらには、糖分のとりすぎが「こころ」に悪影響を与えるのではないか、という指摘は、いまも根強い。
 砂糖を大量にとると低血糖状態になる。血糖値が急にあがるため、インスリンが分泌され、血糖値を下げる方向に働くのだ。低血糖になると短気になり、頭痛や疲労感にもつながる。少年犯罪との関連を指摘する専門家もいる。
(後略)


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菊池 亜紀

砂糖についてですが、折角丸くおさめたところに申し訳ありませんが、ちょっと書かせていただきます。

コーヒーに砂糖をいれて飲むのは一時は頭が働くかもしれません。しかし、砂糖は腸内の悪玉菌の格好の餌。悪玉菌が増えます。腸から栄養を吸収しますので、悪い栄養?まで吸収してしまいます。血液は汚れたまま脳へ。結局、頭はきちんと働かないばかりか、体全体の機能までおかしくなってしまいます。(説明が下手ですみません)

多くの人があなたのメルマガを読んでいると思われます。
読者を不健康にしてしまわないで下さいね。(^^)

いつも楽しく読んでます。ちょっと私には難しいときもありますが、勉強になります。
これからも頑張ってください。

菊池亜紀


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森山

人間の身体は不思議なもので、砂糖を取らずとも脂肪からエネルギーを取り出すための働きがあります
ただ、これは、飢餓状態や血中のブドウ糖を有効に利用できない病気(糖尿病)の場合で、良い状態ではない時です。
このとき、ケトン体と言うものが出ますので、尿を調べるとどういう状況なのかがわかりますが、ともかく脂肪を分解し血糖値を上げる働きを人間は持っていることは確かです。


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西園寺克

砂糖はブドウ糖+果糖からできています。果糖につい
ても、触れないと片手落ちではないでしょうか。
果糖は、蛋白の糖化の作用が強いために、かなり毒性
が強い物質です。
加えて、果糖は尿酸を上げるので、結果的に痛風発作
を誘発します。

取るべきでないと書いたほうが、よいと思います。


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藤井

極端な飢餓状態では、脂肪の代謝産物であるケトン体
は、脳にも利用されるので、脂肪そのものが利用され
るわけではないにしても、脳のエネルギー消費が高い
ために脂肪を蓄積したというのも間違いではないと思
います。
もちろん、そのような状況は身体にとって危機的な状
態であるのは確かですが。


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小橋昭彦

菊池さん、西園さん、ありがとうございます。ただ、「砂糖をとるな」と書くのは極端な気がするのですが、いかがでしょうか。

森山さん、藤井さん、ありがとうございます。なるほど、ケトン体。勉強になります。


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ハマ

昔、夏ばてには甘酒を飲んでいました。
甘酒の季語は夏です。
最近スポーツドリンクがもてはやされていますが
甘酒の成分はブドウ糖、プロテインなどの蛋白やビタミン
ミネラルなどを含んでいて、素晴らしい飲み物だそうです。作り方はいたって簡単
米麹1:炊き立てのご飯3:水7の割合でまぜ、炊飯器の保温で
8010時間かければOK
それを冷やして飲めば最高のドリンクになります。
以上は食の研究家小泉先生の受け売りです。
小生、米麹が手に入らず酒かすで造って試したところ
おいしかったです。
造り方はインターネットで調べればすぐわかります。




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 600万年から700万年前というトゥーマイ猿人化石発見のニュース。人類の祖先としては最古、しかも大地溝帯の形成で草原化したことが二足歩行を生んだという「イーストサイド物語」の舞台とはかけ離れたアフリカ中央部での出土。ヒトはアフリカ各地で誕生していたのだろか。胸躍らせつつ、350立方センチという、トゥーマイ猿人の頭蓋容積に目がとまる。 旧ソ連のグルジア共和国で見つかったホモ・エレクトスの脳の大きさが注目を集めたばかりだ。アフリカから欧州に渡った原人とされるけれど、約600立方センチと従来の原人の3分の2しかない。砂漠をこえてアフリカを出たのは、脳が大きくなり知能が発達したことも要因というのがこれまでの説だったので、見直しが迫られる可能性がある。 現代人の脳の平均的な大きさは1300立方センチあまり。体重に比べての大きさが際立っている。ヒトの赤ん坊が丸々太っているのもこれが理由のひとつで、エネルギー消費量が大きな脳のために、飢餓に備えて余剰エネルギーを脂肪として蓄えるしくみが働いているのだとか。出生時のヒトの脳は、身体が摂取したエネルギーの60%以上を消費する。大人でも、体重の2%くらいしかない脳が、約2割のエネルギーを消費している。 これだけのエネルギーをまかなうには、豊富な栄養資源を摂取しなくてはならない。狩猟能力を持たない初期の人類が確実に資源を手に入れようと考えたなら、森林やサバンナよりも水辺ではないか、と主張するのはトロント大学のカナン教授。じつはトゥーマイ猿人もワニなど水辺に住む動物の化石と一緒に見つかっているのだが、いまのところ、化石になりやすいのが水辺だったからに過ぎないと無視されているようだ。 1.2%の違いしかないヒトとチンパンジーの遺伝子。でも、脳での遺伝子の働き方には大差があるとドイツ・マックスプランク研究所などの研究グループが明らかにしている。トゥーマイ猿人の約350立方センチというのは今のチンパンジーとほぼ同じだが、遺伝子はやはり独特のはたらきをしていたのか。純粋な脳の大きさでいえばクジラの方が大きい事実もある。大きさだけが、すべてではないのだ。

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 このコラムへも、掲示板を通してさまざまなアドバイスをいただける。前回、脳はブドウ糖しかエネルギー源にできないという話題に発展したのも、掲示板がきっかけ。それに対してまた投稿があった。 確かに、脳は平常時にはブドウ糖しかエネルギー源にできないのだけれど、飢餓に陥ってブドウ糖が供給不能になったとき、脂肪を分解したときにできるケトン体という物質を利用するようになるのだ。脂肪がまったく脳の役に立たないわけではなかったのである。一歩ふみこんで調べよとの戒めだろう。 学びつつ書くことを旨とするこのコラムでは、芋づる式に調べを進めたり、違う話題が組み合わさって発想が生まれる瞬間を重視している。今回も、ケトン体からどこに話が広がるかと楽しみつつ裏づけをとった。空腹感とは、胃袋が空の状態というより脳が糖質を欲しがっている状態だ、と知る。身体と脳の、不思議な関係。 そんな朝、新聞の「ひと」欄で鳥取大学の井上貴央教授の紹介に出会ったのだった。約1800年前の、弥生時代後期の脳を発見した人である。鳥取県の青谷上寺地(あおやかみじち)遺跡で見つかった男女3体。国内最古、世界でも有数の古い脳という。彼のひとこととして「脳から弥生の記憶を引き出せないかなあ」とあって、ぶんっと頬をたたかれた気持ちになった。 人類最古のトゥーマイ猿人化石の話からはじまって「出アフリカ」時のヒトの脳、現代人の脳へと話をつなぎつつ、なんだか機能的な、物質的な面にばかり気をとられていた。それはそれで重要なアプローチだとしても、それらの化石が、かつては実際に生きて、この地上にあったという想像力を、いつしか欠いてしまっていた。想像力こそ、脳にできる最高の活動のひとつと信じていたのに。 ちなみに、青谷上寺地遺跡から見つかった弥生人骨は、戦闘のあとが残っていることでも注目を集めた。彼らの記憶を再生したとして、必ずしもすてきな光景とは限らない。しかし、それはそれで、脳重量やケトン体とは別の意味で、われわれにたいせつな何かを教えてくれる。1800年という時間の中で、われわれは何を学んできたか。 本日、終戦記念日。

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