動物の値段
近所のホームセンターが改装して、ペット売場もある大きな店になった。買いものついでに、ほかでは見ることのない、ペット売場をのぞく。「わんちゃんや、ねんねしてるね」。子どもは喜んでケースの前にしゃがみこんでいる。そのケースに値札が貼られているのを、彼は知らない。
動物にいのちだけではなく値段もあるのだというこの事実は、いつもぼくをとまどわせる。その値段は、愛情の価格なのか、単なる商品価格なのか。この価格あるゆえに、動物を愛する人への流通が促進されると考えると有益なのだけれど、密猟を生んでいるならかなしい。この「ずれ」の感覚はなんなのだろう。
宮崎市にある自然動物園を市が買収することになり、動物一体一体につけられた価格が公開された。もっとも高いのはオランウータンで、11歳メスの価格が500万円。ワシントン条約で国際的な商取引が規制されており、入手は困難。それゆえの高値だとか。子どもたちの人気者、マサイキリンは9歳メスが220万円。ライオンは、オス、メスとも8万円。百獣の王かたなしだけれど、繁殖しやすいし、えさ代がかかるから安くなるという。
値段をつけられる動物ってどんな気持ちなのだろうと、自分に値段がつくことを想像する。これは奴隷の売買と同じなのかと寒くなり、それから、いや違う、プロ・スポーツ選手の移籍金か、と思いなおす。チームを活性化し、観客に夢を与えてくれるなら、高額の移籍金も納得できる。
これは、動物ではなく、夢の値段なのか。
“動物の値段”