小橋 昭彦 2001年4月10日

 きなくさい、という。類焼にあったときのあの匂いはまさに字義どおりだったと思い出す。ともあれ、きなくさい奴といった表現を生むほど、危険を察知するのに、嗅覚は人間にとって重要な情報源だったわけだ。
 危険を察知するだけではない、健康を保つのにも鼻は役立っている。ほ乳動物は一般に鼻呼吸をするが、人間は発声のために気管が口につながっており、その結果、口呼吸が可能になっている。鼻から吸った空気は、鼻腔を通る間に加湿、浄化されて送り込まれるのに対し、口呼吸は有害物質がろ過されないまま体に取り込まれてしまう(日経3月17日)。鼻呼吸をすすめる東京大学の西原克成講師によれば、花粉症やアトピー性皮膚炎、ぜんそくなどの患者にも効果があるとか。
 人間の五感の中で嗅覚はもっとも退化しているともいう。にもかかわらず、無臭化をはかったり、あるいはあえて快適な匂いだけにしようとしたり、匂い関連の商品は絶えることがない。
 まあ、それもいいんだけど、もう少し自然の香りをかぎつつ、日々意識して鼻呼吸してみる。危険への対応力向上になるし、健康にもいい。自分がこんなに役立っていると知ったら、鼻のやつ、ちょっとは高くなるだろうか。

2 thoughts on “鼻呼吸

  1. 今日の没ネタ。大正天皇の「遠眼鏡」、読み上げ前に上下を確認しただけと女官証言(朝日3月14日)。

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