小橋 昭彦 2001年3月28日

 遺伝は何らかの独立した因子で規定されるという概念を確立したのはメンデル。彼の研究は生前ほとんど注目されることはなかった。進化論で知られるダーウィンも同時代の人で、純種同士の受精による繁殖で生まれるのは、完全な融合物ではなく別個の固体の混じりあいではないか、という考えを抱きもしたようだけれど、その答えが書かれているメンデルの論文に気づくことはなかった。
 メンデルの研究が知られるようになったのは20世紀に入ってからで、遺伝子という名前も20世紀の初頭につけられた。その後、遺伝子は染色体の中に含まれているということがわかってきて、染色体を構成するデオキシリボ核酸(DNA)とたんぱく質のうち、DNAがその本体だとわかる。ちなみに、最近よく聞く「ゲノム」という言葉は、生物の持つ遺伝情報全体を意味するもので、ヒトの場合だと23対の染色体におさめられているということになる。
 遺伝子にはたんぱく質の設計図になるエクソンと、途中で削られるイントロンがある。エクソンはヒトゲノム全体の1.5%(朝日2月28日)。残りのほとんどは「がらくたDNA」だという。ただ、がらくただからといって役立たないかというとそういうわけではなく、東京工業大学の岡田典弘教授は「進化の多様性を生み出す原動力のひとつ」と指摘している。
 設計図も、がらくたもあってヒトゲノム。ぼくたちに続く生命40億年の歴史は、効率ばかりじゃ語れない。

1 thought on “がらくたDNA

  1. 遺伝子関連。「日本DNAデータバンク」「国立遺伝学研究所」「ゲノムネットWWWサーバー」などの定番からまずはチェック。がらくたDNAのはたらきについて研究している岡田典弘教授関係では、横浜市の「木原記念財団学術賞」「分子進化学講座」をどうぞ。また、「脊索動物ゲノムの倍数化と多様化の分子機構」も。ほか、「The designer of lives」などもいかがでしょうか。

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