小橋 昭彦 2002年11月14日

 日本人の平均寿命は伸びている。それでつい勘違いしがちなのだけれど、最大寿命については、伸びているわけではない。これまでもっとも長生きしたのは1997年に122歳で亡くなったフランス人女性。人間の最大寿命はほぼそんなところだ。
 これは種によって決まっていて、ゾウなら70年程度、ハツカネズミは3年。さて、問題は何が最大寿命を決めているのかだ。それがわかれば、老化防止も夢ではない。東京都老人総合研究所の白澤卓二研究室長によると、たとえば骨の成長に要する期間の6倍という説があったという。骨の成長を身長の伸びと考えれば、人間の場合は20歳前後で成長が止まるから、その6倍で120歳。犬なら2年半だから6倍して15年。偶然にももっともらしい数字になるのだけれど、科学的には証明されずに終わった。
 生殖可能な時期が終了してから子どもを育てるのに必要な期間を加えたもの、という説もある。50歳で閉経ならそれに20年を加えて70歳。人間だけは法則を逸脱したと説明できるにしても、さすがに現代の長寿社会では通用しにくい。
 哺乳類ならどんな動物でも一生の間に心臓が20億回うち、5億回の呼吸をするという。活性酸素が老化に関係しているのは事実だから、呼吸と寿命の関係もあるのかもしれない。また、カロリー制限をしたマウスは寿命が延びるという実験結果もある。もっとも、だからといって人間が1日の摂取量を30%も落として数年間続けるとなれば、別の意味で健康を害しそうな気がしないでもない。
 老化と寿命の研究には、寿命がわずか3週間しかない線虫が役立っている。おかげで遺伝子研究も進んでいて、いくつかの遺伝子が老化に関係していることがわかってきた。ダーウィンを信じるなら、人間も線虫のような原始的な生命から進化したわけで、その間のどこかで3週間と120年の違いが生まれたわけだ。それはどこだったのか。まあ、あまり難しく考えないで生きるのが長寿のコツなのかもしれない。

2 thoughts on “最大寿命

  1. 小橋様

    早速、返信有難うございます。1000回のご配信のなかに、すでに取り上げられていたとは流石だなと、あらためて感心しました。早速ご紹介いただいた書物を当たってみたいと思います。
    丁度1年前、小橋様の配信の中にあるように「哺乳類の一生の間の脈拍数や呼吸数は一定している」ことに驚いています。先日、標高405千メートルのチベット高原を車で走行してきました。その時に脈拍や呼吸は平常より多くなっていました。地元の人たちの寿命が短いと聞いております。厳しい環境、食生活などの条件が考えられますが、そのなかに脈拍数や呼吸数が関係していないかと思ったりします。
    先ずは、お礼まで。

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