小橋 昭彦 2002年8月15日

 このコラムへも、掲示板を通してさまざまなアドバイスをいただける。前回、脳はブドウ糖しかエネルギー源にできないという話題に発展したのも、掲示板がきっかけ。それに対してまた投稿があった。
 確かに、脳は平常時にはブドウ糖しかエネルギー源にできないのだけれど、飢餓に陥ってブドウ糖が供給不能になったとき、脂肪を分解したときにできるケトン体という物質を利用するようになるのだ。脂肪がまったく脳の役に立たないわけではなかったのである。一歩ふみこんで調べよとの戒めだろう。
 学びつつ書くことを旨とするこのコラムでは、芋づる式に調べを進めたり、違う話題が組み合わさって発想が生まれる瞬間を重視している。今回も、ケトン体からどこに話が広がるかと楽しみつつ裏づけをとった。空腹感とは、胃袋が空の状態というより脳が糖質を欲しがっている状態だ、と知る。身体と脳の、不思議な関係。
 そんな朝、新聞の「ひと」欄で鳥取大学の井上貴央教授の紹介に出会ったのだった。約1800年前の、弥生時代後期の脳を発見した人である。鳥取県の青谷上寺地(あおやかみじち)遺跡で見つかった男女3体。国内最古、世界でも有数の古い脳という。彼のひとこととして「脳から弥生の記憶を引き出せないかなあ」とあって、ぶんっと頬をたたかれた気持ちになった。
 人類最古のトゥーマイ猿人化石の話からはじまって「出アフリカ」時のヒトの脳、現代人の脳へと話をつなぎつつ、なんだか機能的な、物質的な面にばかり気をとられていた。それはそれで重要なアプローチだとしても、それらの化石が、かつては実際に生きて、この地上にあったという想像力を、いつしか欠いてしまっていた。想像力こそ、脳にできる最高の活動のひとつと信じていたのに。
 ちなみに、青谷上寺地遺跡から見つかった弥生人骨は、戦闘のあとが残っていることでも注目を集めた。彼らの記憶を再生したとして、必ずしもすてきな光景とは限らない。しかし、それはそれで、脳重量やケトン体とは別の意味で、われわれにたいせつな何かを教えてくれる。1800年という時間の中で、われわれは何を学んできたか。
 本日、終戦記念日。

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4 thoughts on “弥生の脳から1800年

  1. 脳と糖質の話は、ダイエットを気にしている方、糖尿病の方など、健康に気遣っている方にとって特に関心の高い話題でしょうね。「発掘!あるある大事典 第134回『間食』」をご参考に。「青谷上寺地遺跡」から発掘された弥生の脳については井上教授によるコラム「青谷の骨の物語」もぜひお読みください。コラムが含まれている新日本海新聞社の特集「青谷上寺地遺跡」も充実。

  2. 確かに人間の脳の精神的な働きを素人なりに考えてみる必要を常日頃感じている。
    私自身、時々脳をリフレッシュするために、通常見ている景色を見るとき、わざと、自分がここに初めて来たという感覚に自分自身を陥らせて、資格からどういうイメージを受け取るかというトレーニングをしている。
    見慣れた景色から、なぜか新しい情報が得られ、リフレッシュされます。一度おためしあれ

  3. >空腹感とは、胃袋が空の状態というより脳が糖質を欲しがっている状態

    ふと思ったのですが、お腹が空いている時にチョコレートなどを食べると、空腹感をあまり感じなくなりますよね。
    実際はほんの少ししか、お腹は満たされていないのに。

    これがまさにその状態なんでしょうか?
    不思議ですね、人間って。

  4. こんばんは。いつも楽しくメルマガを拝見させて頂いております。ありがとうございます。

    今回のお話の”ケトン体”が脳のエネルギーになることをはじめて知り、たいへんおどろきました。
    といいますのも、脳のエネルギー=ブドウ糖と思い込んで
    いたからです。

    今私が実行しているダイエットの副産物として”ケトン体”が大量に作り出され、排泄されているから・・・。
    ”抵糖質&低インシュリンダイエット”と呼ばれている方法です。
    間単に言いますと、”主食(麺類・ご飯・パン・芋類・糖類)”以外の食べ物で食事をするダイエットです。

    主食となる食べ物には、エネルギーに早く変わる”ブドウ糖”でできているそうです。

    体の素となる、肉・魚などの、”タンパク質”と野菜類
    中心の食事をすることで、人間の体は慢性的なエネルギー
    不足状態になります。
    そのような状態になると、体は体脂肪から足りないエネルギーをおぎなうようになります。
    体脂肪が分解されて、エネルギーになる時にケトン体ができるのです。
    またケトン体が血液中に集まると、尿と一緒に排泄されます。
    余分なものは、体の中から出すように出来ているのです。
    このため、食事以外に1.5リットルの水分を補わねばなりませんが・・・。

    食べ物もいろいろありますが、何事も程々・・ですね。
    なんとも、まとまりのない”ケトン体”のお話になってしまいました。すみません。
    それでは、失礼いたします。

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