小橋 昭彦 2019年1月16日

オハイオ大学の研究者が、文化を超えて感情を伝える人間の表情は35種類だけという研究結果を発表している。それ以外に特定の文化内でしか伝わらない表情が多くあるということではなく、それでほぼすべてという。

感情と表情については、心理学者のポール・エクマンによる先駆的研究がある。エクマンによると、人間の感情は基本的には6つ。驚き、恐怖、怒り、嫌悪、悲しみ、幸福だ。
そしてそれぞれの代表的な表情を、たとえばこれまで文明との接触がない種族に見せても通じたという。

人間の表情についてはダーウィンも関心を持っていて、社会的役割より生物学的反応が先立っていたと考えていたようだ。
たとえば何かが突然起こったとき人間は目を見開いてことを見定めようとする。これがのちに「驚き」の表情とされるようになった。この仮説はつい数年前、コーネル大学の研究者によって裏付けられている。

冒頭に述べたオハイオ大の研究者らは、31カ国720万枚の顔写真をコンピューターで分類。その結果が、国境を超えて分類された35通りだったという。
面白いことに、そのうち恐怖を示すのは3通り、驚きは4通り、悲しみや怒りは5通りで、嫌悪なんて1通りしかないのに対し、幸福を示す表情は17通りもあったという。

なるほど幸福には、興奮から平安、笑い、共感、満足など、さまざまなパターンがある。悲しみや怒りと違い、その機微は多くの表情によって伝えられてきた。
言い換えれば、それほど多くの幸福を社会の中で見定めてきたのが、今を生きる人類ということだ。どうも最近、それをあまりに単純化してしまっている気がしないでもない。

1 thought on “しあわせの表情

  1. オハイオ大学の研究は『The 17 different ways your face conveys happiness』をどうぞ。

    エクマンについては『5つの基本感情とは?ダライ・ラマとポール・エクマンの感情地図』が分かりやすい読み物になっています。小論『表情とコミュニケーション』も参考になります。

    また、コーネル大学の研究は、『Eye expressions offer a glimpse into the evolution of emotion』で紹介されています。

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